第7話 高憧家にて①
く、空気が重い……
車内は一切会話が無く、控えめな音量のラジオが流れている。
車に乗って5分位しか経ってないのだが体感で15分位経っているような気がする。
車内のルームミラーを見ると明日香のお父さんが映っていた。
明日香のお父さん、思ったイメージと違うというか、一言でいうならいかつい。
時々、明日香の見せる威圧感は恐らくお父さん譲りなのだろう。
途端に車が減速して、バックし出した。
どうやら明日香の家に着いたようだ。
するとこれまでずっと沈黙していた明日香が堪えきれなくなったように笑い出す。
「お父さんも優も緊張しすぎでしょ。二人ともびくびくしちゃって」
「だって明日香が急に男の子を家に泊めるとか言うから……しかも"あの"有村君だよ。お父さんビックリしちゃって、後なんでサングラス付けてくるようにってメッセージ送ってきたの」
"あの"ってどういうことだろ、というかサングラスはわざと付けさせたな、明日香め……
ていうかお父さんサングラス外すとすごい優しい顔してる。
ムキムキの身体と優しい顔の対比がすごい。
「あの……送ってくださりありがとうございました。自己紹介が遅れてすみません。有村優です。今日はお世話になります」
「いいんだよ有村君。娘と娘の恩人を家に連れてきただけだから、僕は
え?それはどう言う──と言いかけた瞬間、車のドアが開き、女の人が明日香に突っ込んできて抱きついた。
「お帰りぃ~明日香、今日は疲れたでしょ。ご飯にする?お風呂にする?それともお・姉・ち・ゃ・ん」
「こら姉、暑苦しいから離れて、優もいるんだからさ」
明日香が必死に遠ざけようとしてるがお姉さんは
茶髪の髪の毛が上の方で編み込まれており、顔のパーツは所々明日香に似ている。
ものすごい美人さんだが……これは重度のシスコンなんだろうなぁ。
「お、君が"あの"優君だね。私は
また"あの"って言われた……
もしかして高憧家では"あの"っていう
「有村優です。よろしくお願いします」
「うん、よろしく。明日香がね、昨日からずっーと家で君の話ばっかりするもんだからお姉ちゃん気になってたんだ」
"あの"ってそういうことか……
昨日、明日香が僕のことを家族に話したから"あの"ってことね。
「まぁ、明日香が君のことを楽しそうに話すのは結構前からなんだけど、痛い、いひゃい……」
明日香が顔を赤くしながらお姉さんの頬を両手で引っ張り怒りを
前から明日香が言っていたから例のあの人って意味の"あの"なのか。
明日香はどれだけ前から僕のことを喋っているのだろう。
病院で会ったのは5.6回くらいのはず……
助けてくれたって明日香は言ってたけど、そこまでに印象に残りそうなことをした覚えは無いんだけどな……
とりあえず家に入ろっかと明日香のお父さんに促され、車を降り、家に入る。
お邪魔しますと呟き、靴を脱いでいると、ふと視界に写真立てが目に入る。
女の人……
目元に既視感がある。
明日香の目元にそっくりだ。
「それね。私のお母さん。もう亡くなってるんだけどね」
明日香もだったのか……
そういえば僕を慰めてくれた時に喪失感とかすごいでしょとか言ってたけど、あれは自分の体験から出てきた言葉なのか。
「お母さんにお参りさせて貰ってもいい」
うん、と明日香は頷きリビングにある仏壇の前に案内してくれた。
お線香に火を灯し、お鈴を鳴らし、目を閉じ合掌する。
線香の煙が鼻をくすぐる。
「お母さん、私が死んだら出来るだけ家族を見ていたいからリビングに仏壇作ってねっていうからここになったんだ」
「うちの母さんも同じようなこと言ってた。お線香は白檀でお願いねまで言われたよ」
「うちもだよ。もしかしたらうちのお母さんと恵美さん、似た者同士かもね」
にへへと笑いながら明日香はそう言うと、明日香もお鈴を鳴らし合掌する。
「よし、ママに優の紹介も済んだしごはんごははん。お父さん、お昼ごはん大盛りでよろしく」
「はいはい、有村君は量どれくらいにする。オムライスの予定なんだけど」
オムライス!
大好物だ。
母さんによく作ってもらってたな。
「えーと、じゃあ明日香と同じくらいでお願いします」
オムライスならそれなりに量が多くても食べられる自信がある。
「やるねぇ有村君、明日香と同じくらいとなると気合い入れて作らないと」
あれ、僕やっちゃいました?
なんかすごく嫌な予感が……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます