第6話 罰ゲーム?

「優が寝てるのを先生が見て、クラス委員をやりたくない人は手を挙げろって言ったんだよ。そうしたらみんな手を挙げちゃって……」


あの教師め……

まだ教卓の後ろにいる担当教師を恨めしそうに見ると目が合った。

教師はにっこり微笑み黒板に


『寝ているのが悪い』


と書き込んだ。

ド正論すぎてなにも言い返せない。


「でも良かったじゃねぇか、クラス委員って名前の割にほとんどなにもしなくて良いんだぜ。イベントごとに補佐みたいなことしなきゃいけないけどな、体育祭の時は頼んだぜエビデン」


想像よりも出番が無さそうで助かった。

意外と当たりの委員なのでは無いだろうか。


「なんで恋がクラス委員の仕事内容知ってるの?」


「先生がエビデンと高憧にクラス委員が決まった後に笑いながらクラス委員は各イベントの補佐するだけで、楽なんだけどなって言ってた」


……先生!

今度は羨望せんぼうの眼差しを向ける。


『いいってことよ』


と教師は書いて教室から出ていった。

あの人エスパーなんじゃないだろうか。

人の気持ち分かりすぎでしょ。


「そろそろ帰ろ優、お腹空いちゃった」


お腹空いちゃったって明日香さん、あなた結構食べてなかった?

時刻は12時過ぎ、クラスには僕ら4人しか残っていたなかった。


「そうだな俺らも帰ろうぜ舞。エビデンと高憧もまた来週な」


こくりと頷く弦本さん


「うん。じゃあね恋、弦本さん」


2人と分かれて、帰る準備を整える。

準備を終え、それじゃあ帰ろっかと言い教室を出ようとすると明日香に袖を引っ張られた。


「どうしたの?」


「今、優には言いたいことが2つあります」


ちょっと怒ってる?

何かしただろうか。


「1つ、優と一緒に本当は文化祭委員したかったなということ」


これに関しては申し訳ないことをした。

明日香もやりたい委員があっただろうに僕に合わせてクラス委員に立候補してくれたのだろう。


「本当にごめん。俺が寝ていたせいで好きな委員会選べなくて」


「寝ちゃったのは仕方ないし、色んなイベントに優と一緒に関われるのはむしろ良かったんだけどね。なにか埋め合わせしてほしいなって、例えば……この後私の家まで送るとか」


「言われなくても送るつもりだったよ?明日香傘持ってきて無かったし」


……ずるいなぁ

明日香が小声でなにか言ったようだが聞き取れなかった。

気持ち顔も少し赤みがかったような。


「じゃあ2つ目、彼女の目の前で他の女の子ジロジロ見ないで欲しいなぁって、舞ちゃんかわいかったし仕方ないけどさ」


あれ?これもしかして嫉妬……なにこの子めちゃくちゃかわいいんですけど。


「別にかわいかったから見てた訳じゃないんだけど……見たことない人だなぁって思って」


「でもかわいかったんでしょ」


「かわいかったけど……」


「けど?」


明日香さん、そんなに威圧感出さないでよ。


「俺は明日香が一番かわいいと思ってるから」


「……そっか、でも私の目の前で他の子をかわいいって思ったのは事実だから罰ゲームね。内容は後で、とりあえず帰ろっか」


そりゃあないっすよ明日香さん。

名前呼びの罰ゲーム、昨日受けたばっかなんですが……

また恥ずかしい系なのかと不安がってる僕を尻目に明日香は上機嫌で教室を出た。


外はどんよりとした灰色の雲が太陽を覆っており、未だに雨が降り続いていた。

というよりも朝より雨の勢いは増していた。


学校玄関を出て、さあ傘を差そうとしたとき

ちょっと待ってと明日香に止められた。


「お父さんが迎えに来るみたい。優と話ながらゆっくり帰りたかったんだけどな」


「そっか、じゃあ俺は歩いて帰るよ。また来……」


また来週まで言おうとして、ちょっと待ったと明日香にさえぎられる。


「優、罰ゲームここで使うね。今日は私の家にお泊まりです。一緒にご飯食べて、一緒にお喋りしながら寝ようね。なんだったらお風呂も一緒に入ろっか」


え?これ罰ゲームでいいの、むしろご褒美なんじゃ……


「ちなみに家族にも言ってあるから。お父さんなんて優が泊まるって聞いたら仕事早退して迎えにも来てくれることになったんだよ」


あ、これ罰ゲームだ。

間違いなく罰ゲームだこれ。


「い、一回家に帰って準備とかしないとほら寝間着とか」


「大丈夫、優の背丈せたけ私とほぼ一緒だし、私のスウェット貸してあげる。お客さん用にアメニティ類のストックもあるから心配しなくても平気平気」


全然平気じゃない、主に心が準備不足だよ。

娘が連れてきた初対面の男が一緒にお風呂入って、一緒に寝たら確実にお父さんに殺されるでしょ。


「明日香、ちなみにお父さんどんな人」


「え、あんな感じの人」


明日香は校門の方に指を指してそう言う。


校門には一台の黒塗りの高級車が止まっていて、目線を移したタイミングで男性が降りてきた。


スキンヘッドに黒いサングラス、そして筋骨隆々きんこつりゅうりゅうたくましい身体。


見たら分かる、あっち系の人だこれ……


「お疲れ様明日香……君が有村君だね。後ろに乗ってくれるかな」


「は、はい、ありがとうございます。」


母さん、もしかしたら僕もそっちに行くかもしれません……

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