第79話 ブッダ
「いないね、舞ちゃん」
「うん……」
恋と別れた場所から端まで2往復したが弦本さんの姿は無かった。
花火大会の会場でナンパされたら、そのまま花火見る流れになるよね?
それなのに居ないっていうのは……なんか良くない事が起きてる気がする。
ナンパじゃなくて誘拐とか……事件性があるようなやつかもしれない。
すると不意にスマホがバイブしてることに気づく。
福から電話だ。
「もしもし」
「アリソン! やっと出た、何回も連絡してんのに全然出ないから心配したぞ」
全然気づかなかった。
「ごめん。今、ちょっと、その大変なこと起きてて」
「もしかしてマイマイになんかあった?」
急に福の声音が変わった。
っていうかマイマイ?
弦本さんのことかな。
……福が弦本さんの事を呼んだりするの見たこと無かったな。
弦本さんがサッカー部のマネージャーの時そう呼んでたんだろうか……じゃなくて、なんで弦本さんになんかあったって分かるんだ?
そういえば福、分かれる前に変なことを気にしていたような。
あ……なんかあったら連絡しろって言ってたの完全に忘れてた。
「実は弦本さん、トイレに行ったきり戻ってこなくて……明日香が見に行ってくれたんだけど居なかったんだ。それで今探してるんだけど見つからなくて……ごめん! なんかあったら連絡してって言われてたのに忘れてて……」
「……ぶ、だ」
「お釈迦様?」
明日香が福との会話を聞き取ろうと顔を近づけているのに今気づいた。
近い!
かわいい!
いい匂い!
っていうかブッダじゃないと思うよ?
「それ多分、
めっちゃヤンキーの名前(毒島姓の皆さんごめんなさい)。
絶対ゴツくてデカくてイカついし、なんなら坊主(毒島姓の皆さん重ねてお詫び申し上げます)。
先輩ってことはもしかして……。
「その人って中学の時に弦本さんと恋に付きまとってたっていう先輩?」
「そう! この話してたっけ? まぁ、いいや。その毒島先輩が花火大会来てるらしいんだよ。毒島先輩と仲良かったやつが連絡くれてさ」
もしかして、弦本さんが言ってた、中学の時に先輩に加担してたっていう人だろうか。
恋が危ないと思って連絡をしてくれたのなら本当に反省してるのかもしれない。
まぁそれは一旦おいといて……だとしたら弦本さんはその毒島先輩に連れていかれたと?
……やばくね?
「……なんで福はそのこと言わなかったの」
知らせてくれていればある程度、警戒出来ていたはずだ。
恋が弦本さんを1人でトイレに行かせるなんて事は阻止できていたかもしれない。
「言ったらラブちゃん達が楽しめないと思って……」
確かに……。
中学時代に嫌な思いをさせられた先輩が来てるなんて言われたら、楽しめるわけがない。
球技大会の時の恋の顔を見れば、それがどんなに嫌だったのか、伝わってくる。
しかも、今日は告白をすると決めていた日。
言いづらいよな……でも……。
「でも言うべきだったよな。告白はいつでも出来るんだし……俺だって今回は西堀さんに告白出来なかったし」
しなかったんかい……。
まぁ、明日香も失敗すると思うって言ってたしな。
出来なかったって言ってるし、福の事だからなんか察したんだろう。
「とにかく今は弦本さんだよ。どこら辺にその毒島先輩いると思う?」
「……多分、花火会場に居ない。近くにいるとは思うけど人目につかないところだと思う」
「花火会場じゃなくて」
「人目につかないところって」
「「あの公園!!!」」
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