第74話 挙動不審

そんなやり取りをしていると花火会場である河川敷に着いた。


「うわぁ、屋台がいっぱいだね。見て見て、 優! じゃがバターのバターつけ放題だって!」


りんご飴とかベビーカステラとかじゃなくじゃがバターのバターつけ放題に目をキラッキラッに輝かせてはしゃぐあたり、明日香って感じがする。

そういうところも好きなんだけどね。


「はいはい、後でちゃんと付き合うから、今はとりあえず場所取りしようか」


「わかった!」


なんかテンション変じゃない?

元気があることに越した事はないけど……。


坂の部分の空いてるスペースを探し、ブルーシートを敷く。


「ごめん。ちょっとちっちゃかったかも……狭かったらごめんね」


まぁ、わざと少し小さいブルーシート持ってきたんですけどね!

少し密着してるくらいの方が恋も福も成功率高くなるかなと思って。


「大丈夫大丈夫。弟達も来てるはずだから、いざとなったら、私はそっち行くよ」


笑顔で西堀さんが答える。

ごめん、福。

完全に裏目に出たかもしれない。

チラッと福の方を見ると、何やらいつになく真剣?

というか険しいといった方が良いだろうか、そんな顔をしてるように見えた。


「福田君? おーい」


どうやら西堀さんも気づいたらしく、福の目の前で縦に手を振る。


「……っあ、西堀さん。虫除け使う?」


「お、気が利くねぇ。ありがとう使わせて貰うよ」


「うん。みんなも使ってね」


……すごく気が利く。

杞憂だったかな?

福はちゃんとしてればモテるはずなんだからその調子……と言いたいけれど、なんかいつもと違う気がする。

緊張してるとかとは少し違う感じ。

なんなんだろう――。


「よし、場所取り出来たな。じゃあ、各々屋台とかトイレとか順番に済ませようぜ。俺と舞は後で良いから、4人で行ってこいよ」


俺と福だけに分かるようウインクして、恋はそう言う。

変に気を回しちゃって。

まぁ、明日香もさっきからお腹なりっぱなしで我慢できなさそうだし、お言葉に甘えて、屋台行かせて貰おうかな。


「よし、じゃあ、行こ……」


明日香に行こうかと言いかけたところで後ろから手を引っ張られる。

……福?


「アリソン。この後、俺らって二人一組になるんだよね」


なんだ様子がおかしいのはやっぱ緊張してるだけか。


「そうだよ。どうしたの。リラックスリラックス。福なら……無くは無いと思うよ」


「励ますのか現実に戻すのかどっちかにして欲しい……」


ごめん。

希望ばかり見させても良くないと思って……。

ここでワンチャンあるで!

とか言っても面白がってるだけにしか聞こえないだろうし、これから勝負に出る、福に失礼かと思ったんだけど。


「まぁ、いいや。この後さ、もしも何かあったら、すぐに連絡して」


「もしもって」


「誰かがはぐれたとか、そういう感じ」


なんでこんな事言うんだろうか。

緊張しすぎておかしくなっちゃった?

でも、本人はすごく真面目な表情をしている。


「分かったよ。何かあったら連絡する。だから福は俺達の事を気にせず頑張れ」


「おう、ありがとう」


福は今日一良い笑顔を見せる。

……普通にしてれば絶対彼女出来そうなのに。

その顔は西堀さんに見せた方が絶対良いよ。


「ゆーう! つけ放題!」


「はいはい、今行くよ」


「ほらほら、福田君もあんまりカップルの邪魔しないの」


西堀さんに引っ張られる、福。

あれ?

西堀さんと福、本当にありえるんじゃ……。

福も突然の事で「えっ?え?へ?」と連発している。

キョドりすぎだよ……福……。

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