第45話 どうして
「うぅ……行ってきます……」
「行ってらっしゃい」
嫌々学校へ向かう明日香を見届け、ショッピングモールへ向かう準備を始める。
明日香には弦本さんとショッピングモールに行くことは言っていない。
ただ友達が困っていそうだから、それに付き合うだけだ。
なにもやましいことは無い。
……無いはずなのだが、どうしても明日香や恋の顔が浮かび、罪悪感に駆られる。
弦本さんにせめて用件くらい聞くべきだった。
用件さえ分かっていれば、明日香にも弦本さんにこういうことを頼まれたから一緒にショッピングモール行ってくると説明ができたのだが、ただ弦本さんと一緒にショッピングモールに行ってくるだと一気に怪しさ満点になってしまう。
彼女がいるのに別の女の子と二人きりで出掛けるって……良くないよね。
明日香が他の男と二人きりでいたら俺も嫌だし……。
帰ったら、ちゃんと明日香に報告しよう。
そう決意し、家を出た。
――時刻は9時半、ショッピングモールに早く着きすぎた。
信号が全部青で駅のホームに着いたと同時に電車が来たから乗っちゃった。
約束の時間は10時だし、弦本さんはまだ来ないだろうと思っていると、
「おはようございます。有村さん」
弦本さんがタイミング良く到着した。
早くないか?
俺が言えたことじゃないけど……。
「おはよ、弦本さん」
「すみません、私がお呼び立てしたのにお待たせさせてしまって……」
「ううん。全然待ってないし、俺が早く来すぎただけだから気にしないで」
「そう言って頂けると助かります。それじゃあ行きましょうか」
にっこりと笑い、歩きだす弦本さん。
とりあえず横に並んで歩いて行く。
「弦本さん。今日は何で俺を呼んだの」
純粋な疑問をぶつけてみた。
一体何の目的があって俺を呼んだのか、ずっと気になって仕方がないし……。
弦本さんは一瞬固まって、頭の上にはてなが浮かんだような表情をする。
そしてハッとしてあわあわし出す。
なにこの生物……かわいいじゃないの。
「私もしかして、言ってませんでした?」
こくりと頷くと、弦本さんがごめんなさいと頭を下げる。
なんかここだけ切る取るとデート始めて1分で振られた男みたいだな……。
ていうか結構、周りの人に見られていた。
慌てて弦本さんに顔を上げるように促す。
「私って本当にダメですね……」
「そんなこと無いよ。誰だってミスすることはあるし、別に迷惑も掛かってないからさ」
「……優しいですね、有村さん。あっくんみたいです」
あっくんねぇ……。
パッと出てくる基準が恋……つまりはそういうことだよね、多分。
でもそんな恋に今日の用事は秘密……あれ、これって、
「弦本さん。もしかして今日の用事って恋に関すること?」
「正解です!よく分かりましたね。実はもうすぐあっくんの誕生日なので今日はプレゼントを買いに来たんです」
やっぱりなぁ……。
でもプレゼント選ぶだけなら、俺要らなくない?
「毎年、プレゼントを渡しているのですがなんていうかその……私、センスが無くて、あっくんがプレゼントを貰って喜んでるの見たこと無くてですね……」
「つまり、恋が喜ぶようなプレゼントを探してほしいと」
「そうです!」
なるほどなるほど……。
だんだん分かってきたけど、まだ疑問がある。
「ちなみになんで俺だったの。福とかの方が恋と付き合い長い気がするし、アドバイスなら西堀さんとかもいるけど」
すると弦本さんは苦笑いを浮かべる。
「福田君には前に頼んだことがあったのですが……その、誕生日前にプレゼントをあっくんにばらしてしまって……」
……福ぅぅぅ。
昔からそんな感じなのか……。
「本当は西堀さんや明日香ちゃんにも来て貰おうと思ったのですが西堀さんは今日予定があるみたいで……明日香ちゃんは補習ですし……」
完全に理解した。
つまり、今日は恋の誕生日プレゼントを買いに来たから恋には秘密。
俺以外にも声をかけたけど、たまたま俺しか予定が空いてなくて二人きりになったと。
よし。
やっとスッキリした。
これなら明日香にも報告しやすいや。
グッバイ罪悪感。
「分かった。じゃあ改めて俺も恋へのプレゼント選び手伝うよ」
「ありがとうございます!」
目的も理由も分かり、早速、恋へのプレゼントを選びを始めようとしたその時、目の前でドサッと何かが落ちる音がした。
何事かと思ってその方向を見ると……右に小学生くらいの男の子と左に中学生くらいの男の子。
そして真ん中に見たことある女の子がいた。
どうやら女の子が荷物を落としたらしい。
「どうしたの姉ちゃん、落としたよ」
「姉貴……?」
どうやら左右にいるのは女の子の弟達のようだ。
すると女の子が口を開く、
「……どうして有村君が弦本さんといるの」
目の前にいた女の子は西堀さんだった。
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