鉄の翼 渇きの国と鉄女神
早瀬史啓
第一章 鳥の影 陰謀の城
記憶の中の炎
炎が、部屋を支配していた。よく
その中心で、何かが踊っていた。
煮えるような
それは
赤い光の粒を炎と一緒に体中に纏わりつかせ、死の舞踏でも舞っているかのように手足を苦し気にばたつかせて悲鳴を上げている。
(死ぬのか、俺もイブティサームも)
そう思ったとたん、がくがくと足が
浅く呼吸するたびに頭の
けれど、不思議なことに炎がルシュディアークに
一体どういうわけかと首を傾げた
イブティサームの周囲で舞っている火の粉が、自分の全身にまとわりついていたからだ。
(違う、火の粉じゃない)
恐る恐る、指先で光に触れた。部屋を覆う、肌を刺すような熱気よりも冷たいただの光。
腕にまとわりついている光を払い落とす様に撫でると、払い落とされたはずの光が腕に舞い戻ってくる。不思議なことに光を払い落とした一瞬の間だけ、炎の熱さを感じた。
(これは、まさか)
ルシュディアークは赤い光の意味を、拒絶と共に理解してしまった。
※
ルシュディアークの目前に暗闇があった。
天地も左右も分からず
あの夢の日から
(俺は殺してなんかいない)
多分きっと。いや、どうなのだろう。
炎に飲まれたイブティサームの姿は覚えているのに、そうなる前の記憶が
(あの日は大事な話があるからと、イブティサームに呼び出されたんだった。部屋に行くと
覚えていないのがもどかしい。必死で思い起こそうにも記憶がぼやけて記憶の欠片さえも思い出せない。唯一はっきりと分かっているのは、先刻まで見ていた夢の光景だけ。
(あの時のことを思い出せれば、こんな部屋から抜け出せるのに)
(もう一度、寝なおそうか)
こんな気分では眠れるかどうかは分からないけれど。
再び
そっと耳を澄ませると、何者かの話す声がした。
声色からして女ではない。男だ。二人いる。後ろ暗い話でもしているのか、扉越しに
嫌な予感がルシュディアークの胸を覆った。
(まさか、俺の裁きが決まったのか?)
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