概要
大国の狭間に存在する砂漠の皇国、アル・カマル。その第二皇子ルシュディアークは、義姉のイブティサームを殺した咎で皇位を剥奪されてしまう。処刑を待つ身だった彼に訪れたのは、兄、イダーフの使い。
曰く、「隣国、アル・リド王国へ向かい、同盟を申し出よ」
戦争を繰り返す隣国、アル・リド王国に向かえと命じたイダーフの真意は、国の存亡を賭けたものだった。ルシュディアークはアル・リド王国国王ガリエヌスへの親書を片手に旅立つ。
皇子から一転、罪人として国から追われる身となった彼に降りかかる数奇な運命がいま、始まろうとしている。
※注:群像劇・暴力・残酷描写有り
●登場人物
ルシュディアーク:主人公。権力を剥奪されたアル・カマル皇国第二皇子。
ウィゼル:白い竜を駆る荷
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!隼が飛び砂塵舞う世界で。全てをなくした皇子は、彷徨いながら成長する。
かつて世界に災厄をもたらした恐るべき古代兵器『鉄女神(マルドゥーク)』。それを擁するアル・カマル皇国では、皇位継承争いが起きていた。第一皇子イダーフに対し、異母弟ルシュディアークを推す皇女イブティサーム。ところが、イブティサームは殺害され、ルシュディアークは「魔族」になって義姉を殺したという罪を着せられてしまう。
冤罪の訴えも虚しく処刑されることになったルシュディアークのもとに、イダーフの使者が訪れる。アル・カマルの鉄女神を狙う二大国の一方に、同盟を申し出よと言うのだ。国を追われた皇子は、故国を戦乱に陥れる陰謀に巻き込まれるーー。
西アジア(アラビア)風の世界で繰り広げられる物語です。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!いつだって冒険は、ゼロから始まる
"児童文学とSFを掛け合わせた小説"と聞いてました。実際に読んでみて一言言わせていただくなら、"丹念に熟成された深い味わいのある物語"です。
主人公のルークの、何者でも無くなったところから冒険が始まり、戦いや仲間、敵との邂逅の中で"自らの存在"や"何と戦っていくべきか"について考えていく、成長していくという積み重ねの面白さが感じられました。
葛藤、成長の過程、旅の中で触れていく史跡や歴史、神話といった文化的なものを所々に取り入れているためか、読んでいくうちに"自分もこの世界を冒険している"そんな気分になります。
その"読むという冒険"の中で、歴史は人の思いがぶつかり合って紡がれていく…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ファンタジーの中に、息づく人びとの暮らし。
ファンタジーの中に、息づく人びとの暮らし。
ルークの旅路の中で、目に触れる景色、出会う人びと。
何気ない一コマにも、その土地で、国で、生きる人の息吹を感じます。
作られた物語よりも、まるで旅の記録、国の歴史や、情勢を見るようで。
拝読していると、垣間見えるのは、広大な国土の様子と共に、
そこに住む、一人一人の存在です。
国を描きながらも、細部にまで隙のない描写は、住む人間の存在さえも、描き出し、
読む者を惹き込みます*
ルークとイスマイーラの緊迫した会話に、息を飲みます。
誇りと怨み。 戦いに向かうとは、どういうことか。
イスマイーラの想いは、過酷な中を生きた者の、ある種、…続きを読む