読み始めは主人公に幼いという印象を持ち、物語全体も児童文学っぽく感じたのですが、歴史上有名な天皇をモデルに据えた歴史小説だと分かってからぐっと引き込まれました。読み進めていくうち、歴史の流れと数奇な運命の中でけなげに生きる主人公の少女に愛着を感じるようになり、とても面白く読めました!
史実を踏まえた知的で上品な作風でありながら、ダイナミックで自由な展開にわくわくします。
個人的な感想ですが……関西在住なので小説に出てくる地名が身近です。「あの辺りは古代から有名な土地だったんだ!」と歴史を再発見する楽しみもありました。
私もこんな作品が書けたらいいなあ!と思いました。憧れであり励みであり目標です。書いて下さり、本当にありがとうございました!
古代ファンタジーは元々好きなのに、どうしてもっと早く出会って読まなかったのかと自分を叱ってやりたい気分の中、勢いだけですみませんが、レビューを残したいと思います。
まず、勾玉シリーズあたりが好きな私としては、物語の醸し出す雰囲気が最高。練りに練られた重厚な設定、文化、風習。とても芳しい。
何より、魅力的なキャラが多すぎる!
媚びない主人公セイレンは、第一印象こそ粗雑なものの、すぐに何も知らない故の純粋さや、それでいて真実を見極める目を持っている鋭さ、そして努力家の一面。育った境遇を命からがら生き抜いてきた強靭さもさることながら、兄弟格差があったにも関わらずの姉妹愛。この子、いい女になる素質以前に、いい人間なんだ。そう思いました。
もちろん、ヒーローである雄日子のカリスマ性はスマホ画面を通してもビシビシと肌に刺さってくるようなものがあり、それに付き従う守り人勢のカッコいいことといったら! 彼らはよくある異世界ファンタジーに登場する騎士様的でありながら、有能な側近であり、暗部でもある。それぞれに得意の分野があり、それが無くても作り、皆雄日子に忠誠を捧げてまとまっている姿は、本当に惚れ惚れします。尊い。
中でも私が推したいのは、藍十。
だめ、名前をタイプするだけで心が潰れそう。とにかく、この子が良すぎる。最後の方で良きご縁を掴むのは目出度いはずなのに、素直に喜べなかった私を誰か叱ってほしい。でも、彼だからこそ彼女は子を授かったんだろうなとか思うと、勝手に誇らしくなってみたり。
とりあえず、誰か一緒に語って欲しい。
そういう素敵すぎるキャラがいっぱいなのですが、言葉の使い方も好きな作品でした。この時代に合った比喩や言葉が選ばれていて、どれもナチュラルで美しい。ゾワゾワします。やはり、これが時代の匂いが漂ってくる所以なのかも。
個人的には、心理描写、心の機微みたいなのがよく伝わってきて、政局の変化やストーリーだけに頼りすぎない展開が大好物でした。たぶん、邪道だと思うのですが、いつの間にか恋愛ファンタジー的な感じでも読ませてもらっていたと思います。(そういう観点では、雄日子がいじらしくて可愛かった!)
あまりに面白すぎたので、珍しく二周目拝読しようかなと計画中。
最後になりましたが、とっても素敵な物語を世に出してくれて作者様に大感謝。
既にたくさんおられると思いますが、是非とも、さらに読者が増えてほしいなと願ってやまない作品です。
土雲族の中で“災いの子”と呼ばれる娘セイレンは、双子の姉が犯した罪をかぶせられて殺されかけるが、とある国の王たる雄日子の“守り人”となることで生き長らえる。
しかし雄日子は大和朝廷より反逆人と断定されており、その命を狙われていた。
大和朝とまつろわぬ民が混在した日本の古代をモチーフにしているのも目新しくて興味深いのですが、やはり歴史ものには不可欠なもの――しっかり組まれた重厚なストーリーと、それを支える緻密な世界設定を読ませてくれるところが最高ですね。
歴史には改変してはいけない軸がありますから、それに障らず、しかもおもしろいお話を作るというのは非常に難しいものです。
だからこそ、それができている歴史ものには必然性が宿り、語り部たるキャラクターも輝くんです。
物語あり、設定あり、キャラクターあり。三位一体の読み応えを、あなたもその目で味わってくださいませ!
(秋こそガッツリ!長編4選!/文=髙橋 剛)
緻密な歴史考察をした上で、描かれていない、隙間をとてもうまく利用した、創作。
絶対に現実ではあり得ないと思える事柄が、現実にその時代にありそうな世界観のなかにちりばめられ、ありえると、あり得ないがとてもいいバランスで描かれている。
一人一人が、立場の違うなかで、おのおのの考え方で、ぶつかり合いながら、時には共感し合い、時にはすれ違いながら生きている、リアリティを感じさせる、表現はすばらしい。
世界観の描写も、この時代にある風景を想像させる、開拓された場所と、いまだ人の手が届かぬ、未知の地が織り込まれ、空想を膨らませられる表現力。
歴史小説でも、創作と現実が混じり合う事を考えれば、ファンタジーでありながら、歴史小説の一面も持った作品だといってもいいと思います。
古代史が好きなのに、あまり詳しくない自分は、この作品で知った歴史背景がたくさんありました。歴史好き、ファンタジー好きは必見だと思います!
時は古墳時代。
大和朝廷に反旗を翻す高島・高向の若王、雄日子。
聖なる山の民「土雲一族」において「災いの子」と皆に疎まれつつも逞しく生きてきた少女、セイレン。
二人が出会い、強引に主従関係を結ぶ所から物語は動き出します。
彼や脇を固める魅力的な守り人の面々と関わっていく中でヒロインは成長し、やがて雄日子との関係にも変化が・・・。
特筆すべきは作者が綴る五感をフルに活かした臨場感ある文章。
苔むす山々を走り抜け、風を切り軍馬で疾走し、雨に煙る洞窟で夜を明かす。
登場人物と共に、自分もリアルに並走している感覚を覚えます。
大和からの刺客、セイレンのライバルともいうべき媛、それらの登場で
常にハラハラする山場がいくつもあり、大長編ながら全く飽きることがありません。
そして雄日子とセイレン、二人の過去と苦悩が見事にリンクし物語の終盤を支えています。
番外編では、手負いの猫の様だったヒロインがだんだん懐いていく過程も見逃せないポイント!様々な視点からの描写で、この時代の生活様式も垣間見えることができます。
歴史マニアの作者が史実に基づいた観点から鮮やかに綴る、古の時代を駆け抜けた少女の成長記。
上質なハイファンタジーの世界観をぜひ堪能してみては如何でしょうか。
読了。
面白かった!
古代史というのはそれだけで謎だらけ、その謎にファンタジーを絡めて、なんとも読み応えのある物語になっています。
主人公セイレンは、まつろわぬ民、土雲一族の娘。
そのセイレンが知らない、一族の謎。
土蜘蛛一族とのかかわりが明らかになっていく過程は食いついて読みました。
才覚にあふれ、一筋縄ではいかないリーダー、雄日子。
人の上に立つ王として笑みを浮かべ、冷徹に選択する雄日子には不思議な魅力があります。
物語はこの二人を中心にしながら、大和朝廷との対立が描かれていきます。
それぞれの立場や信念、思惑などが物語を立体的にしています。
いつも更新が待ち遠しかった。
古代史好き、ハイファンタジー好きなら楽しめるはず。
お薦めです。
――ここは本当にカクヨムなのか?
なんだ、この圧倒的な面白さは!
冒頭の緊迫する場面から、いきなりジェットコースター感覚。物語世界に突き落とされる醍醐味を久し振りに味わいました。
謎の武具「雲神様の箱」を持つ主人公セイレン。
理不尽な運命に立ち向かう少女の素直な心と凛々しさに胸がときめきます。
もしあなたに、歴史や古代に知識や感心がなくとも、この波瀾万丈の物語「雲神様の箱」は楽しめると思いますが
読み進むうちに古代の魅力の虜となるかも知れません。
軽やかな筆遣いで、風景や人々の暮らしがさりげなくも鮮やかに描き出されます。
古代という史料の乏しい時代を書く為に、どれだけの史料を読み込まれたのかと思うと
作者の古代への愛情を思わずにはいられません。
この名作を、一日も早く書籍にして欲しいです。
その時代、その場所、その人物―歴史上に存在したものは、資料を読み重ね、読みほどいて、輪郭が見えてきます。
その見えてきた輪郭が、物語を求めて、ぽっと光り出すのを、この作者は捉えることができるのでしょう!
光る輪郭に肉を付け、色を塗り、生命を吹き込み、粗野で大胆にして乙女心が垣間見える、とっても魅力的なヒロインと、彼女をとりまくさまざまな立場の人物たちを、作者は導かれるままに生み出していったのだと思います。
読み進めながら、ヒロインが捉える匂いを、音を、吹き抜ける風を、同じように感じました。
極上のファンタジーです!
一章を読み終えたのでレビューを記させていただきました。
続きを読むのが楽しみです!