謎多き古代史の隙間を埋めるような、意欲的な空想世界

 緻密な歴史考察をした上で、描かれていない、隙間をとてもうまく利用した、創作。

 絶対に現実ではあり得ないと思える事柄が、現実にその時代にありそうな世界観のなかにちりばめられ、ありえると、あり得ないがとてもいいバランスで描かれている。

 一人一人が、立場の違うなかで、おのおのの考え方で、ぶつかり合いながら、時には共感し合い、時にはすれ違いながら生きている、リアリティを感じさせる、表現はすばらしい。

 世界観の描写も、この時代にある風景を想像させる、開拓された場所と、いまだ人の手が届かぬ、未知の地が織り込まれ、空想を膨らませられる表現力。

 歴史小説でも、創作と現実が混じり合う事を考えれば、ファンタジーでありながら、歴史小説の一面も持った作品だといってもいいと思います。

 古代史が好きなのに、あまり詳しくない自分は、この作品で知った歴史背景がたくさんありました。歴史好き、ファンタジー好きは必見だと思います!
 

その他のおすすめレビュー

河依龍摩さんの他のおすすめレビュー7