五感を刺激する臨場感!良質な古代ファンタジーの世界がここに。
- ★★★ Excellent!!!
時は古墳時代。
大和朝廷に反旗を翻す高島・高向の若王、雄日子。
聖なる山の民「土雲一族」において「災いの子」と皆に疎まれつつも逞しく生きてきた少女、セイレン。
二人が出会い、強引に主従関係を結ぶ所から物語は動き出します。
彼や脇を固める魅力的な守り人の面々と関わっていく中でヒロインは成長し、やがて雄日子との関係にも変化が・・・。
特筆すべきは作者が綴る五感をフルに活かした臨場感ある文章。
苔むす山々を走り抜け、風を切り軍馬で疾走し、雨に煙る洞窟で夜を明かす。
登場人物と共に、自分もリアルに並走している感覚を覚えます。
大和からの刺客、セイレンのライバルともいうべき媛、それらの登場で
常にハラハラする山場がいくつもあり、大長編ながら全く飽きることがありません。
そして雄日子とセイレン、二人の過去と苦悩が見事にリンクし物語の終盤を支えています。
番外編では、手負いの猫の様だったヒロインがだんだん懐いていく過程も見逃せないポイント!様々な視点からの描写で、この時代の生活様式も垣間見えることができます。
歴史マニアの作者が史実に基づいた観点から鮮やかに綴る、古の時代を駆け抜けた少女の成長記。
上質なハイファンタジーの世界観をぜひ堪能してみては如何でしょうか。