第360話
今日はミカンちゃん達がやって来る日。あれから特に変わったこともなく日々が過ぎていった。コタツは相変わらずだし、砂岩の検証を行いたくてもヤスリがいるため検証ができない。
久しぶりにゆっくりした日々だった気がする。こういう日が続けばいいんだけどね。
朝ご飯を食べて少しするとミカンちゃん達がやってきた。どうやら今日はミカンちゃんが運転しているらしい。もう問題なく運転できるよってアピールしてるのかな?
ミカンちゃんに車を買ってあげるとここへ来る機会が増えるのだろうか。私は別に構わないけど『守り人』達はどうなんだろう。昔よりは苦手意識はなくなったと思うけど。
玄関に出てミカンちゃん達を待っていると仕事部屋からベリーさんもやってきた。ベリーさんは『守り人』達をモデルにして描いたイラストをSNSに投稿したらしい。かなり評判がいいとのこと。どんなイラストを投稿したのか気になる。
バタンと音が聞こえた。ドアが閉まる音だろう。どうやら到着したみたいだ。コタツが私の左腕に強く抱き着いた。ミカンちゃんにも人見知りを発動したな。
「おはようヤヌシ君。みんなもこんにちは」
ミカンちゃんの声はいつもの声量よりかなり抑えられている。コタツのためか。
「ミカンちゃんおはよう。どうしたの?いつもの勢いがないじゃないか」
「コタツちゃんに嫌われたくないからね~。今日は大人しくしておく」
本当?話半分で聞いておこう。
「ヤヌシ君。私も来たわよ」
「おはようUさん!今日はUさんが保護者だったんだね」
「ヤヌシさん、私もいます。お邪魔しますね!」
「青さんも?おはようございます!みんな来たんですね!コタツも人気だな~」
「コタツちゃんだけじゃないわ。みんなと遊びたいのよ。みんな、おはよう!」
『守り人』達が三人に挨拶をしている。コタツは左腕に抱き着いたままだ。
「とりあえず中に入ろうか。何か運ぶものはある?」
「昼食の材料ぐらいだから別に良いわよ。そうそう。ベリー。これ、イスの上に置くクッションよ。座りっぱなしはキツイでしょ?」
「※※※!」
「ありがとうって言ってるわ~」
「ごめんねUさん。私が気づくべきだったよ」
「気にしないで。長時間、木のイスに座るのはきついからね」
ありがとう。全く気が付かなかった。ごめんねベリーさん。
「ベリーは椅子にクッションを置いてくるって~」
「じゃあ私達は中に入ろうか」
家の中に入りミカンちゃん達にコーヒーを準備する。準備はオモチにお願いした。まだお昼ご飯の支度には早いしね。
席に座るとミカンちゃんが話を切り出した。
「ヤヌシ君。言われた通りメッシュさんのぬいぐるみを作ってきたよ。コタツちゃんに渡したいんだけど・・・。私じゃ無理だよね?」
「ん~。どうだろう。コタツ、ミカンちゃんが君のためにぬいぐるみを準備してくれたよ。ミカンちゃん。ぬいぐるみを出してみて」
ミカンちゃんがテーブルにぬいぐるみを出したみたいだ。トウキが反応する。
「良いな~。あたしも欲しい!」
「トウキちゃんには今度作ってあげるからね。コタツちゃん、どうかな~?」
コタツが少し動きた気がした。チラ見でもしたのかな?
「オモチ、どんな感じ?」
「興味があるみたいよ。ちらちら見てる」
少しコタツの抱き着く力が弱くなった気がする。もう少しかな?
「メッシュ。いつもみたいに小さくなってくれない?」
「今か?必要ないだろ」
「良いから!上手くいけば今日で抱っこ卒業だよ!」
「・・・。分かった」
メッシュが小さくなるとコタツがメッシュを抱っこした。完全に私の手から離れた。
「ミカンちゃん。もう一度声をかけてあげて。上手くいけば取りに行くからさ」
誰かが席から立ち上がる。そして動画を撮り始めたみたいだ。Uさんだろう。やるならコタツが怯えないように注意してね。
「コタツちゃん。このぬいぐるみいらない?あなたのために作ってきたの!この子で遊んでほしいな」
「コタツ!あなたにあげるって!いらないの?いらないならあたしが貰うわよ」
トウキがコタツに声をかける。トウキとしてはコタツがいらないのなら自分が貰うつもりなんだろう。トウキはぬいぐるみ大好きだもんね。
コタツが私の膝の上で足踏みしている。どうするべきか悩んでいるのかな?
「コタツ。ミカンちゃんが君のために作ってくれたんだ。何を悩んでいるか分からないけど貰って良いんだよ。ミカンちゃん。コタツに手を振ってみて」
「え?こうかな?・・・。振り返してくれた!」
コタツにとって手を振りあう行為が仲良くなる第一歩なんだと私は思う。
コタツの足踏みが止まった。止まったと思ったら私の膝の上からいなくなった。メッシュは私の膝の上にいるみたい。
「ヤヌシ君。コタツちゃんがテーブルの上に登ってきたよ。私を見つめてるんだけど・・・。ど、どうればいいの?」
「落ち着いてミカンちゃん。ぬいぐるみを渡せばいいんだよ」
「でもずっと目の前に出しているんだけど取ってくれないの。この場合の対処法は?」
「しっかりとコタツに渡してあげて。コタツに当たるぐらいまでぬいぐるみを近づけて良いから」
「う、うん。分かった。・・・。取ってくれた~」
ミカンちゃんが小声で喜んでいる。大声を出さなかったのは偉いよ!
すぐにコタツが私の膝の上に帰ってきた。そのまま座ったみたいだね。どうやらぬいぐるみを抱っこしているらしい。
やったねメッシュ!たぶんこれで抱き枕卒業だよ!これで私も小言を言われなくて済む。ミカンちゃんに感謝しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます