第63話
ヘルパーさんが買い物から帰ってきた。私もヘルパーさんにお願いがあるので家の中へ戻る。冷凍庫の方でカザガサと音がする。ヘルパーさんは冷凍品を片付けているみたいだ。
もうほぼ夏みたいなものだからね。早く冷凍庫に冷凍品を入れたいのだろう。私はヘルパーさん声をかけた。
「お帰りなさい。ヘルパーさん」
「お帰り」
「お、お帰り」
トウキとマリモもヘルパーさんにちゃんと声をかけた。。苦手でもちゃんと声をかけるのは偉いぞ!
「ただいま戻りました。すみません、帰宅の報告もせずに。冷凍品を早く納めないと溶けちゃいそうで」
「良いんですよ。音で分かりますしね。それに冷凍品を優先で大丈夫です」
「もうちょっと待ってくださいね。すぐに整理しますから」
ヘルパーさんが喋り終るとまたガサガサという音が聞こえ始めた。私はリビングで片付け終わるの待っていた。
「お待たせしました!」
ヘルパーさんが戻ってくる。購入金額と電子マネーの残高を聞く。
「いつもありがとうございます。早速ヘルパーさんにお願いがあるのですが、ジャガイモを洗ってアルミホイルで包むのを手伝っていただけませんか?」
「分かりました」
ヘルパーさんは理由を聞かず了承してくれる。業務以外の会話はしないという約束を守ってくれる。
「それが終わったら縁側で火をつけてほしいです」
「今日買ってきたチーズとレトルトのミートソースはどうしますか?」
「そちらは私にください」
私は買って来てもらったすべてのミートソースを両手鍋に入れた。冷凍庫にあった肉団子を取り出して電子レンジで温める。
「じゃがいもは終わりました。次は火をつけてきますね」
「お願いします。マリモ、火の様子をみていてくれるかい?もしも火事になりそうなら風で吹き消してほしい」
「良いのか?分かった!」
マリモが頭から飛び立った。
「行こう、ヘルパーさん。ヘルパーさん?」
マリモが声をかけているが反応がないみたいだ。
「トウキ、どうなってる?」
「マリモがヘルパーさんの肩に乗ったんだけどヘルパーさんが動かなくなっちゃった」
あれだけ可愛いものが好きなのに免疫なさすぎじゃないですか?
「ヘルパーさん!」
私が大きい声を出す。トウキがびっくりして私の足を強く抱きしめる。
「す、すみません。ちょっと今日は仕事であることを忘れかけてます」
「嬉しいのは分かりますがしっかりしてください。あとで少しだけみんなと交流する時間を取りますから」
「いいんですか!?」
「えぇ。でも少しだけですよ!」
「分かりました!マリモちゃん、行きましょう!」
足音が遠ざかっていく。
「ヤヌシ・・・」
「トウキ、心配しなくていいよ。ちゃんと君達が嫌がることはさせないから。私は君達とヘルパーさんが仲良くなってほしいと思っているんだ」
「あたしもヘルパーさんは嫌いじゃないわ。でもあたし達を見る目が怖いの・・・」
「目の悪い私でも怖いと思うぐらいだからしょうがないよ。でも慣れていくから大丈夫さ!」
「それって大丈夫なの?」
私が笑っていると電子レンジの音が鳴った。ミートソースが入った両手鍋の中に温めた肉団子を入れた。買って来てもらったチーズと鍋を持って縁側に移動する。縁側に到着するとパチパチと燃えている音がする。頭の上にマリモが乗っかってきた。
「ヤヌシさん。枯葉のおかげで勢いよく燃えてますがホイル焼きはもう入れて置いても良いですか?」
「お願いします!とても助かります」
ガチャガチャとアルミホイルが擦れるような音がする。美味しく出来れば良いな。
「終わりました。まだ何か手伝うことはありますか?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
ヘルパーさんは掃除をするために家の中に戻っていった。何故かタワシもついて行く。
「トウキとマリモも興味があったら掃除しているヘルパーさんを見に行っても良いんだよ?」
「あたしは前に見たからいいわ!こっちの方が楽しそう」
「俺はヘルパーさんのやることを少しだけ見てくる」
マリモがまた頭から離れて行った。私は焚火台の上に両手鍋を置く。
「ね~、これ美味しいの?」
「私は好きだよ。あとこれをかけるととても美味しくなるんだ!」
私はテーブルの上に置いていたチーズの袋を持ち上げる。
「その黄色いのが?でもヤヌシが美味しいって言うのなら楽しみ!」
「後はスパゲティを準備すれば良いのだけど君達がどれくらい食べるか分からないから様子見だね」
「スパゲティ?」
「あぁ!今日のお昼は『肉団子入りミートスパゲティ&ピザ』さ!」
私が出来そうな簡単な料理で思いついたのが肉団子入りミートスパゲティ。イメージは某有名怪盗アニメの映画で出てくるやつだ。
「あたしには分からないけど楽しみだわ!でも量が多くない?」
「良いんだよ。それにそろそろお呼びしないといけないよね。ねぇ、先生」
「何を言って・・・」
トウキが言いかけた時、私の前方から声が聞こえる。
「やっぱり気づいてました?」
「えぇ。ヘルパーさんが次いつ来るのか聞かれましたからね。来られると思ってましたよ。おはようございます、先生」
「・・・。おはようございます。ヤヌシ、お邪魔します」
「先生!そんな所にいたの?」
「トウキ、出来ればあなたに気づいてほしかったですね。みんなの前に出る機会を伺かがってたんですよ」
「えぇ?そんなの分かりませんよ!」
「マリモは気付いてましたよ。さっきヘルパーさんと一緒に挨拶に来ましたから」
「油断したわ!またマリモに負けるなんて」
「まぁまぁトウキ、良いじゃないか。先生もお昼を食べていかれるでしょう?」
「はい!よろしくお願いします」
「あたし達にヤヌシに迷惑かけないようにって言ったのに・・・」
「何か言いましたか?トウキ」
「いえ、なんでもないです!」
ご近所さんとは仲良くしたいし食事は人数が多い方が楽しいよね!先生が私の左肩の上に乗ってきた。
「もうちょっと待ってくださいね。あとはスパゲティを・・・」
私は電子レンジでスパゲティを調理するために再び家の中に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます