第24話

 私は『守り人』こと「先生」と我が家で交流していた。

 とうとうタワシ達がどんな姿をしているか教えてもらえると思ったのだが、彼らは木以外にはあまり興味がないみたいだ。


 先生は動物の名前を良く知らないらしい。タワシ達を何かの動物に例えてほしかったが答えは得られなかった。正直めちゃくちゃ期待したからショック。


「期待に応えられなくて申し訳ない」


 先生が謝ってくる。本当に良い人?だ。でも先生は全く悪くないんですよ。


「いいんですよ。確かに気になるけどこればっかりはしょうがないですよ」


「他の人間に確認してもらえば分かると思うのですが・・・」


 ちょっと待って。今、聞き捨てならないことを言ったぞ。


「待ってください!他の人にはタワシ達は見えるんですか?」


「えぇ、普通に見えますよ」


「本当にですか?私の知り合いにタワシの事を聞いたら見えないと言っていたのですが・・・」


 トウキが私の足を叩いてくる。


「トウキが今日ここに来た人間の事かと聞いてますよ?」


「そうだよ。トウキ」


 私の足を叩く手が止まる。

 急に部屋の中が静かになる。先生とトウキが話しているのか?


「トウキ曰く、『今日来た人間は私達の事は見えていた。』と言っていますよ。『タワシに手を振っていた』とも言ってます」


 ヘルパーさん、なんで私に嘘をついたんだろう?普通にショックなんだけれども。

 明日で我が家に来た時に直接聞いてみよう。


「そうだったのか。もしかしてトウキが昼に私から離れたのはヘルパーさんが何をしているのか確認しに行っていたの?」


 足が軽く2回叩かれる。「はい」って意味だ。


「掃除を面白がって見に行っているのかと思ってたよ」


「『タワシと一緒にしないで』と怒っています」


 えっ?トウキって意外と短気なの?


「ごめんよ、トウキ」


 そういって私はトウキを触る。

 でもどうしよう。明日、所長さん達が来るのはまずいのかな?


「先生。明日私の知り合いが2人来るのですが、タワシ達が見られても大丈夫なのでしょうか?片方の人にはすでに見られてしまっていますが」


 返事がすぐに返ってこない。

 考えているのだろうか。


「1つ教えてください。ヤヌシさんにとってその人達はどういう人なんですか?」


「それは・・・」


 あの2人がいたから私は今こうやってこの場所で生きていける。感謝しかない。


「今こうやって私一人で生活ができるようになったのは2人のおかげです。私にとっては恩人の2人です」


「そうですか・・・分かりました。本当はあまりこの子達には人間に関わってほしくないのですが」


「・・・私も人間ですが」


「そうですね。でも私から彼らの正体を聞いても対応を変えなかったじゃないですか。本当の仲間だと思ってくれているんでしょう?」


「正体に関しては知らなかっただけなんですが・・・。付き合いはまだ2週間くらいだけど私は家族に近い状態だと思っていますよ。出会った当初はタワシに冷凍フルーツを取られたりしてイライラしましたけど」


「なるほど・・・。タワシ、あとで私のところに来なさい。話があります」


 良い機会だ。ちゃんと説教してもらおう。

 タワシは今どういう顔をしているのだろうか。目が悪いのが悔やまれる。

 いい気味だと思っていると先生が突拍子もない事を言い出した。


「私もその場に同席したいのですが良いですか?」


「その場というと明日の事ですか?別に良いですけど、やっぱりタワシ達が心配ですか?」


「それもありますが、ヤヌシさんは人間が私を見たらどういう反応をするか知っておいたほうが良いと思います。あとは協力者を作っておいた方がいいと思ったので」


 楽しそうな声だ。人を脅かすのが好きなのかな。

 それにしても「協力者」か考えてもいなかった。


「協力者とは具体的にどういう意味なんでしょう」


「単純にヤヌシさんの置かれている状況をちゃんと知っている人がいたほうが良いという話ですよ。信頼できる人が。それに私も知っておいた方が何かと便利かもしれないので」


「なら明日、樹の守護者や『守り人』について改めて説明していただけませんか?今日はもう遅いですし」


 先程18時の時報が鳴った。今日はここまでだろう。


「そうですね。今日はここまでにしましょう」


「明日のお昼過ぎに私の知り合いが来るのですが、二人が来たらトウキに先生の所まで連絡しに行ってもらいましょうか?」


「分かりました。トウキ、お願いしますね」


「先に言っておきますが、明日来る2人のうち1人を少し騒がしいと思うかもしれません。ですが悪い人ではないのでないのでよろしくお願いします」


 私の予想ではヘルパーさんは可愛いもの好きな気がする。

 写真を撮りたいと言い出しても不思議ではない。


「大丈夫ですよ。樹に悪いことをしない限り食べたりはしないので安心してください」


 先生、人を食べるんだ・・・。樹の守護者すごいな。


 そのあと先生は帰っていった。タワシ達も一緒に帰ったようだ。


 私は少し休憩した後にお風呂に入っていた。

 お風呂の中で今日あったことを思い出していた。


 ヘルパーさんが来て買い物と掃除をしてくれたこと。

 トウキ達の仲間である先生が来たこと。

 先生達は樹の守護者、『守り人』であるということ。

 明日は所長さん達と先生を交えて話をすること。


 もう少し小出しできてくれないかなぁ~

 1日に色んなことがありすぎたせいで頭がとても疲れた。


 明日はもっと疲れるだろう。今から気が進まない。

 でも所長さんにも久しぶりに会いたいし、ヘルパーさんにもちゃんとお別れを言いたい。


 私は甘いものが食べたくなったのでお菓子を少し食べた後、眠りについた。

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