第229話
メッシュにお使いをお願いした私はキッチンへ移動した。メッシュにお礼としてニンジン料理を食べさせてあげるためである。
「さて。ニンジンで何を作ろうかな?」
「別に作らなくても良いのでは?」
左肩の上にいる先生が発言する。今日も先生はメッシュに対してあたりが強いね。
「そういうわけにはいきませんよ。約束もしましたし。でもどうしよう」
「そのままでいいんじゃない~?」
オモチが提案してくれたが折角なら調理したものを食べさせてあげたい。でも前にマヨネーズをつけてあげたら、いらないって言われたんだよね。メッシュはそのままの味を楽しんでいる気がする。
「ん~。思いつかないな」
「ヤヌシ、ヤヌシ!炒めようよ!」
次はタワシからのまさかの提案。いやこれは・・・。
「タワシ。炒めるってどういう意味か分かってるの?」
「焼くんでしょ?春さんに教えてもらったよ!」
焼くと炒めるは違うと思うんだけど。春さんは何を教えたんだろう。
「なら揚げるは?唐揚げは美味しいよ!ニンジンも揚げたら美味しいんじゃないの?」
あながち間違っていない。でも私に揚げ物は危険すぎる。
「揚げ物はダメだね。危なすぎる。でも炒め物は良いかも。味付けなしで炒めれば甘みが増してメッシュ好みかもしれないな」
「あたしの出番はあるわよね?」
オモチはニンジンを切りたいのだろう。オモチは切るのが大好きだよね。
「あるから安心して。私が切るよりはオモチが切った方が良いからね。頼りにしているよ」
「任せなさい!どういう風に切るの~?」
私は冷蔵庫からニンジンを取り出した。オモチにニンジンを洗ってもらって皮も剝いてもらった。
「これで良いのよね~?」
「そうだよ、ありがとう!次はね。こういう風に切ってほしいんだ」
私はオモチに手本を見せた。今回は少しだけニンジンを千切りする。
「なるほど~。これなら簡単ね。はい、出来たわ~」
十秒もかかってないけど本当に切れたの?私はまな板の上にあったはずのニンジンを探す。触ると確かに千切りになってる。
「ありがとう。次にIHコンロを出そう。調理はメッシュが帰ってきてからだね」
「すぐにやらないの?」
トウキが残念がっている。いや、どうせこの後すぐにやることになるんだよ?
「どうせなら温かい物をメッシュに食べてほしいからね」
「ヤヌシ、あたし達にはないの?」
「ないよ。これはメッシュのお礼だからね」
「え~!!」
トウキだけでなく他の『守り人』達もショックを受けている。何で食べれると思ったの?
「はぁ。仕方ないな。今日だけココアのおかわりを許可しよう。それでいいでしょ?」
「ココアをもう一杯飲んでいいの?やった~!」
思いのほか『守り人』達が喜んでいる。本当にちょろいな。君達の将来が心配になるよ。
「私も良いんですよね?」
先生・・・。
「もちろんですよ。でもみんな喜びすぎじゃないですか?」
「一日二杯しか飲めませんからね。本来の私達の体ならもっとたくさん飲めますから」
本来の先生の体はかなり大きいですもんね。そう考えると一日二杯は少ないく感じるのは分かります。でも制限をつけないと君達は際限なくココアを飲んでいる未来しか見えないんですよ。
「さてIHコンロをリビングへ持って行きましょうか。タワシ、コンセントを後で刺してくれる?」
「任せて!!」
私の中でコンセントはタワシが担当になっている。コミュニケーションが取れなかった頃からお願いしているからね。
私達はリビングへ移動してIHコンロを設置した。あとはメッシュが帰ってくるのを待つだけだ。
「戻ったぞ」
キッチンでみんなのココアの準備をしているとメッシュが帰ってきた。思ったよりも早かったな。というか無理やり私のズボンの中に入ってこないで!くすぐったい!
「何をしているんだ?」
「君にはお礼にニンジン料理を出すだろう?他のみんなはココアにしたんだ」
「他の奴らは何もしてないじゃないか」
「確かにそうだけど・・・。なら、みんなに見られながら自分だけニンジンを食べたいの?」
「・・・。食べずらいな」
「でしょ?ココアくらいならすぐに準備できるからね。ネコは最後になるけど我慢してもらおう」
「ネコは一緒にニンジンを食べると思うぞ。あの白いやつをつけて」
そうなの?というかメッシュはネコに甘いよね。
「良いの?メッシュの食べる分が減るけど」
「それくらい気にしない。ネコの食べる量なんてたかが知れてる」
「ふ~ん。分かった。ならネコの分のココアを準備するのははやめておこう」
「俺に聞くのが遅かったな。ネコはココアも飲む気だ」
「ならネコのニンジンは少なめにしてくれない?他の子も興味があるはずだから」
「分かった」
私が他のみんなにはココアだって宣言したのが不味かったな。ネコも貰えると聞いたのだろう。今更ココアをあげないと言ったらネコは絶対に拗ねる。
「ヤヌシ、あなたは気にしすぎですよ」
「そうですか?」
「そうですよ。私達は本来、食べる必要はないのですから」
「・・・。良いんですか?ココアが飲めなくなりますよ?」
「それは・・・。訂正します。私達にとっては食べ物は楽しむものですね。だからココアをください」
私は笑いながらココアの準備を続けた。この準備が終わったらリビングでニンジンを調理しよう。
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