第123話

 お昼ご飯が終わって私は所長さんと一緒に明日の準備を行った。所長さん曰く、あとは炭を入れて火をつければOKいう所まで準備ができたらしい。説教されてテンションが下がっていた砂岩は肉まんを食べることで元気になり所長さんと一緒に準備をしていたみたいだ。準備中はずっと所長さんの背中にくっついていたらしい。


 準備が終わったので私達はリビングでおやつとコーヒーを楽しんでいた。所長さんがハンバーガーと一緒にコンビニスイーツ(シュークリーム)を買って来てくれていたのでみんなが喜んでいる。ちなみに今回のシュークリームはチョコとクリームの二段構造みたいだ。


 最近のコンビニスイーツは凄いね。普通に美味しい。トウキが小さくなってシュークリームを楽しんでいるみたい。体より大きいスイーツって食べ応えが凄そうだな。


 それにしても所長さんって春さん並みに『守り人』と仲が良いよね。明日ミカンちゃんが嫉妬する姿が頭に浮かぶ。そういえば所長さんに言っておくことがある。


「所長さん。明日はミカンちゃんと普通に接してくださいね。これはミカンちゃんにも言っておいてください。出来ないのであれば明日は来ない方が良いですよ」


「分かった。僕は大丈夫だろうけど━━は分からないよ?もしかしたら来ないって言い出すかも」


「大丈夫だと思いますよ。ミカンちゃんは可愛い物を優先するでしょうから。むしろ私は所長さんの方が心配です。明日、この場所で大丈夫だったからと勘違いして家に帰ってからやりすぎる可能性あると思ってるので」


「・・・。私達がここで普通に話すことが出来ると思ってるの?」


「はい。ミカンちゃんは可愛い物のためならやると思います」


「言い切るね。僕は思わないけど」


 家には可愛いものが溢れてるって聞いたことがあったけど、所長さんはミカンちゃんの現状を知らないの?


「所長さんが知らないだけですよ。彼女はこの子達が大好きで何をしているのか」


「どういうこと?聞くのが怖いんだけど。さっきのイエローカードもそうだけど」


 簡単に説明するのならトウキに聞くのが一番だろう。


「そうですね。例えば・・・。トウキ、ミカンちゃんの事はどう思う?」


「え?きらい!!」


「ありがとう。こんな感じですよ」


「いやいやいや、何一つ分からないよ!娘はタワシ達に何をしたの?」


 私はミカンちゃんがしたことを所長さんに簡単に説明した。


「なるほどね。娘が可愛いものが好きなのは知っていたけど、ここまでとは」


「さっき所長さんも言ってたじゃないですか。人形劇みたいだと。可愛いもの好きにとっては・・・」


「なるほどね。続きは言わなくても分かるよ」


「明日は普通に話してくれると思いますよ。だから勘違いしないでくださいね」


「分かった。肝に銘じておこう」


「私はうまくいけば所長さんとミカンちゃんの関係も改善できると思ってますよ。所長さんが張り切りすぎなければ」


 そう。問題は所長さんにあるのだから。ミカンちゃんはそのせいで苦しんでいる。


「僕も気を付けてるんだけどね。テンションが上がっちゃうと何とも言えないんだよ。でも明日は大丈夫かな。青さんもいるし」


 なんで青さんがいれば大丈夫なのか分からないが本人が言うのだから大丈夫なのだろう。そういえば青さんって年上の方なのかな?


「そうですね。そういえば青さんは何歳くらいの人なんですか?」


「そうだね~。たぶん三十前後じゃないかな?何か強そうな感じだよ」


 どんな感じだ?


「なるほど?ありがとうございます。明日は色々とトラブルが起きそうな気がするので所長さんもよろしくお願いします」


「任せてよ!僕にとっても砂岩達は友達だからね」


「呼んだ~?」


 砂岩が私の背中に張り付いてきた。テーブルで小さくなってスイーツとコーヒーを楽しんでいたのにいつの間に・・・。


「僕と砂岩達が友達って話さ!」


「そうだね!所長さんと僕達は友達だよ~。明日も楽しみにしてる!」


「任せといて!さて、そろそろ僕は帰ろうかな?青さんと連絡する前にヘルパーさんと話をしないとね」


「よろしくお願いします。Uさんにも無茶ぶりをして申し訳ないと伝えてください」


 本当にごめんね、Uさん。


「了解!みんな、また明日ね!ヤヌシ君もここでお別れしよう」


「分かりました。ではまた明日!」


 テーブル周りで色々と音がしている。カメラとかを片づけているんだろう。


「所長さん、どうする~?あたしが運んでも良いわよ~?」


「本当に?じゃあお願いしようかな~」


「なら俺も乗ってく!」


「あたしも~!」


 オモチが所長さんを途中まで運んであげるみたいだ。それを聞いたみんなが所長さんの車に乗ると宣言する。『守り人』達は車を満喫しているね。


「なんでみんなついて行くんだ?」


 砂岩が不思議がっている。知らないと分からないよね。


「みんなは車に乗るのが楽しいらしい。砂岩も試しに乗ってくれば?」


「ふ~ん。私もついて行ってみよかな」


 背中から砂岩の重さが消えた。テーブルの上には先生だけかな?


「先生は行かないんですか?」


「私は一度経験したら十分ですね。砂岩様もたぶんそうだと思いますよ」


「そうですね。すぐに帰ってきますよ。オモチの早さなら」


「確かに。明日も楽しみです。最近は毎日が楽しいですよ」


 先生は食べる楽しみが出来て良かったね。私も食べ物を出して喜んでくれるのは嬉しい。


「それは良かったです。そういえば明日は新しい大地の『守り人』が来るって聞きましたが・・・。どんな子ですか?」


「え?」


 もしかして先生は聞いてなかったの?そういえば砂岩が私に言った時に先生はいなかったな。


「ちなみにオモチは知っているよ」


「な、なるほど~。明日も大変そうですね」


「誰が来るのか気になるんですが・・・」


「たぶんですけど、かなり寡黙な大地様だと思いますよ」


「へぇ~。それはあれですか?ここに立候補してた『守り人』かな?」


「その通りです。砂岩様に遊びに行きたいと言ったのでしょう。ここには気軽に来れないようになっていますから」


「え?そうなの?」


「はい。じゃないと砂岩様以外の大地様達が遊びに来ますよ」


 いつの間に我が家は喫茶店化したんだろうか。でも砂岩達も普段は忙しいみたいだからたまには休んでもらおう。どうせ私は暇だしね。

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