第292話

「みなさん、おはようございます」


「おはようございます。お休みの所すみません」


「大丈夫ですよ。ベリーさんも災難でしたね」


 青さんがやってきた。今日はベリーさんを買い物に連れて行ってくれる。支払いは砂岩持ちだ。休みの日なのにすみません。


「『━━』と会えたので大丈夫ですよだって~」


 普通は知らない男の家に泊まるのは怖いと思うんだけど・・・。


「青さん。先程ベリーさんにホテルへ泊まるように勧めたんですけど拒否されました」


「理由を聞きましたか?」


「せっけんと離れたくないのと自然の多いこの場所が良いそうです」


「自然の多い方が良い?落ち着くって事ですかね?」


「おそらく。ベリーさんに直接聞いてみてください」


 青さんがベリーさんと話を始めた。オモチが通訳してくれる。私は今のうちに買い物用のカードを取りに行こう。


「ねぇヤヌシ。ベリーはここで生活するの?」


 寝室に移動していると右足に抱き着いているトウキが話しかけてきた。


「どうだろうね。青さん次第かな。私としては街の方へ移動してほしいんだけどね」


「何で?」


「ここはお客さんを泊めるような場所じゃないんだよ。一日なら問題ないけど」


「でもそれだとせっけんが悲しむわ。ここじゃダメなの?」


「人間はね。基本的に家族以外の男女が一つ屋根の下で暮らすことはないんだよ」


「そうなの?」


「そうだよ。とはいえメッシュと砂岩からお願されているからね。あまりベリーさんと離れない方が良いのかもしれないんだよね。どうしたもんかな~」


「そうだぞ。ベリーとあまり離れるな」


「メッシュ。何でさっき言わなかったの?」


「お前の事だから文句を言っても受け入れると思っていたからな」


 文句を言っても?君は私の事をどう見ているの?

 私の首周りでネコ達が動き回っている。これは私に対して言いたいことがあるのだろう。


「ネコ達はどうしたの?」


「ヤヌシがベリーさんをここに泊めないのならずっとこのまま回り続けるって言ってるわ」


「別に良いよ」


「良いの?」


「どうせすぐにネコ達の方が飽きるでしょ?」


 ネコ達の動くスピードが上がる。まだ早くなるのね。それ以上早く動くとバターになっちゃうよ?


 私は寝室で財布から買い物用のカードを取り出して玄関に戻った。まだ青さん達は会話をしているみたいだ。


「青さんどうですか?ベリーさんと会話できてます?」


「はい。オモチさんのおかげで問題なく会話できてます。それよりも首のネコちゃん達どうしたんですか?」


「気にしないでください。ちょっとした遊びですよ」


 説明するのが面倒なのでスルーする。


「ちゃんと説明しなさいよヤヌシ!青さん、これはね。ネコ達が抗議しているの。ヤヌシがベリーさんをここから違う場所へ移動させようとしているから」


「そうなの?あのスピードで目を回さないのかしら。でもヤヌシさん。私も説得しましたがベリーさんはここから移動したくないと譲りませんね」


 どうしよう。思ったよりもベリーさんは頑固らしい。


「ヤヌシさん。あれから砂岩様と話をしてないんですか?」


「してませんね。だって怒っている砂岩に会いたくないですし」


「俺も嫌だ」


 メッシュは怒られたばかりだもんね。気持ちは分かるよ。


「・・・。分かりました。でもどうするんですか?ベリーさんをここで受け入れるんですか?」


 もう考えるのが面倒になってきた。どうせすぐにベリーさんは帰るよね?


「仕方ないですね。どうせすぐに帰ることになるでしょうし」


「良いんですか!?」


 青さん。何か他に選択肢があるのなら教えてください。


「もう良いです。先程も何を言ってもダメでしたし」


「ヤヌシさんの諦めが早すぎますよ」


「時間の無駄な気がして。早く買い物に行かないと時間だけが過ぎていきますよ?」


「※※※ ※※ ※※※※※※!」


 ベリーさんの声が嬉しそうだ。オモチから私が何を言ったのか聞いたのかも。


「ヤヌシさんが良いのなら私は何も言いませんが・・・。それでもう一つ問題がありますよね?」


「まだあります?もうお腹一杯なんですけど」


「このまま私とベリーさんがスーパーへ行った場合。通訳がいなくなるので会話が出来なくなるんですよね。何か良い案はありませんか?」


「それは困りますね。オモチ、前と同じ方法で青さんについて行ってくれない?」


 オモチなら水がある限り一緒について行けるし他の人には見えないからね。


「ヤヌシ、俺が行きたい。俺なら小さくなって青さんの服に隠れることが出来る」


 マリモがついて行きたいと立候補した。私としては問題ないけど他の子達も行きたいと言い出すんじゃないの?


「ならあたしも行きたい!」


「僕も」


 ほらね。『守り人』達が行きたいと言い出した。でもトウキ達は難しいかな。


「今日はあたしが行くからダメよ~。ヤヌシと一緒に外出する時の楽しみに取っておきなさい!先生、青の両腕に腕輪をつけてあげて~」


 オモチの一言で『守り人』達が静かになった。トウキ達には悪いけど今日の買い物はオモチにお願いしよう。買い物の間の通訳をよろしくね。

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