第365話
これからメッシュの力で砂岩の住処から我が家へ移動する。
私の体にくっつけば砂岩でもメッシュの力で移動できるのか検証を行うためだ。
「じゃあ行くぞ!」
砂岩の掛け声と共にいつものザリザリ音が聞こえた。周りからUさんや先生。タワシ達の声が聞こえる。
「帰って来れたみたいだね」
「そうだね~。私も一緒だ!これで私も気軽にヤヌシの家に来れるじゃないか~。やったね!」
砂岩は興奮しているみたいだ。でもまずは周りに説明しようよ。
「みんなただいま。砂岩を連れてきたよ」
「連れてきたって・・・。砂岩さんはメッシュさんの力に対応していないんじゃなかったの?」
「実はねミカンちゃん。メッシュの力をいろいろ検証するうちに私の体にくっついた『守り人』はメッシュの力に対応してなくても一緒に移動することが出来るって分かったんだ」
「なんで私達に黙ってたの?」
「いや、わざわざミカンちゃん達に言う必要がないでしょ?緊急性もないし。タイミングが合えばちゃんと伝えてたさ」
「何でいつもそうなの?そもそもヤヌシ君は緊急性がないと報告しないっていう考え方を変えた方が良いよ!」
急にミカンちゃんが怒りだす。そこまで怒られることをしたつもりはないんだけど。
「そうですね。それは私も同意します」
「私も~」
青さんとUさんもミカンちゃんに賛同する。そんなことを言われても。
「ねぇ、私忘れられてない~?」
「ちょっと砂岩さんは黙っててください」
「あ、はい」
砂岩が私の背中から離れていった。オモチにコーヒーを入れろと言っている。君のせいなんだぞ?自分だけコーヒーは飲まさないよ。
「砂岩。なに一人だけコーヒーを飲もうとしてるのさ?これは君のせいでもあるでしょ?君だけコーヒーは飲まさないよ。そもそも君が今日検証したいって言い出したからこうなったんだし」
「確かに今日検証したいと言い出したのは私だ。でもねヤヌシ。君にくっつけばメッシュの力で移動できるのは以前から分かっていたことだろ?君が報告してなかったのが悪いんだよ。矛先を私にずらそうとしても無駄だ。ねぇミカン」
「そうだよ!」
「そういう事。だから私は話が落ち着くまでコーヒーを飲んでおくよ。Uさん。おやつはあるのかな?」
「おやつはもう少し後よ」
「なら仕方ない。コーヒーだけで我慢しておこう」
おやつまで催促するんじゃないよ。早く謝って話を終わらせよう。最近は謝ってばっかりだ。私は早くコタツの話が聞きたいのに。
「ごめんね。次から気を付けるよ」
「って言ったらまた同じことをするってママが言っていたわ」
春さん!余計なことを娘に吹き込まないで!
「ならどうすれば良いの?土下座?」
「タワシちゃん達の前で土下座なんてさせるわけないでしょ!」
ミカンちゃん。それはタワシ達がいなかったら土下座させてたっていう解釈で良いんでしょうか。
「でも報告するようなことではないと思ったんだよ。そこまで重要なことではないでしょ?」
「重要だよ!だってこれなら私の家にみんなで遊びに来れるじゃない!」
「そうですよ。これならみんなで安全に外出することが出来ます!」
「なんだ。そのことか。街へ行くときは一体ずつって言う決まりがあるから無理だよ。ねぇ砂岩」
「え?そうだね。確かに決めたね~。我々守護者が全員で街へ行くと混乱を招くからね。これは譲れないよ」
「だってさ。それで砂岩、コタツの話なんだけど・・・」
「ミカンちゃん。ヤヌシ君が話を逸らそうとしているわよ」
「あとはママにお願いしますよ。ちゃんと言いつけるから。ヤヌシ君にはそれが一番効きますし」
横でいろいろ言っているが無視しよう。後の事は考えない!そもそもそこまで悪い事はしてないし!
「聞いてるよ~。この子が話せない・・・。というか言葉が分からないかもしれないんでしょ?」
「そうそう。一言も話さないんだ。どうすれば良いと思う?」
「本来はあり得ないんだけどね~。我々は相手の頭に直接話しかけるのが普通だ。だから絶対に話は聞こえているはず。確認するにはこれが一番手っ取り早いね」
「これって?」
「ヤヌシ。それにみんな。良いかい?今からやることに驚かないでね~。・・・。さて、守護者よ集まれ」
話し方が砂岩様に変わる。私の首元にいたネコ達もいなくなった。砂岩のもとへ集まって行ったのだろう。コタツは私の首横から動かない。
私は席に座り砂岩がどうするのか見守ることにした。
「やはりダメか。ならこれはどうだ?・・・。本当に反応しないな」
コタツは首横から大きくなって私の膝上に移動してきた。いつの間にかメッシュのぬいぐるみを抱っこしているらしい。
「なら仕方ない。『コタツ来い』」
バキバキと音が聞こえる。コタツが震えて私の左腕に抱き着いてきた。Uさん達も驚いてるし何が起きてるの?
「砂岩!ストップ!」
「ダメか。これ以上やるのなら場所を変えないとヤヌシの家が壊れるな」
「砂岩!中止だ!聞こえてる?」
私は席から立ち上がり砂岩に話しかけた。
「ん?あぁ聞こえてる。分かった。これぐらいにしておこうか~」
「さっきの音は何だったの?家を壊さないでよ!」
明らかに壊れるような音だった。もしかして家が壊れたの?
「ヤヌシ君。テーブルが少し壊れたんだけど・・・。もう先生が直してくれたわ」
「Uさん本当?砂岩やりすぎだよ!何をしたの?」
「私の力を少し使ったんだ。でもこれで分かった。この子は言葉を理解していない。理解していたらさっきの呼びかけは無視できないからね~」
もっと穏便にやろうよ。私は怯えるコタツをあやしながら席に座り直した。
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