第364話
お昼ごはんを食べ終わった。コタツが言葉が分からないのかもしれないという話になってからはベリーさん達は赤子をあやすようにコタツを扱った。
まぁ産まれたてだから間違ってはいないと思うんだけど良い大人が四人がかりでしなくても良いんじゃない?聞いてるこっちはちょっと辛いよ。
先生達もどうすべきか悩んでいるらしい。『守り人』同士で言葉が通じないのは予想外なんだろう。いっそのこと砂岩に話を聞きに行くべきかもしれない。
「メッシュ。ちょっと砂岩の所へ行って聞いてきてくれない?」
「今からか?」
「コタツの事を聞いてみてほしいんだ。もしかしたら今までに似たような『守り人』がいたかもしれないし」
「・・・。まぁ良いだろう。仮に帰って来るのが遅くなってもおやつはくれるよな?」
「もちろん大丈夫だよ。だからお願い」
今日はUさん達がメッシュのために新しいニンジンのおやつを買って来てくれていた。メッシュはずっと楽しみにしていたもんね。無理を言ってごめん。
「分かった。行ってくる」
メッシュが砂岩の住処へ行くとコタツが私の膝の上に帰ってきた。前の時もそうだったがまたメッシュを探しているみたいだ。抱っこしていなくてもメッシュには近くにいてほしいのだろう。私はコタツにミカンちゃんのぬいぐるみを渡す。
「どう?コタツは落ち着いてる?」
「う~ん。微妙?私があげたぬいぐるみを抱っこしているけど、表情が変わらないから良く分からないね」
「コタツに感情はないのかな」
「でもメッシュさんがいなくなったら探しに行くし、ヤヌシ君から離れるとすぐにあなたのもとへ帰って行くから何かしらの感情はあるんじゃない?」
「顔に出ないだけってこと?う~ん。赤ちゃんでも泣いたり笑ったりするのに。コタツの表情を見分けるのは難しすぎるよ」
私達が雑談しているとメッシュが帰ってきた。思った以上に早かったな。
「ヤヌシ帰ったぞ。砂岩様から伝言がある」
「おかえり。砂岩は何て?」
「ちょっと今から来て欲しいって」
「今から?コタツを連れて?」
「そこまでは言われていない。どうやらヤスリ様は自分の住処へ帰ったそうだ」
なるほど。例の検証がしたいのね。私の体にくっついた状態でメッシュの力が使えるかどうかの。
「分かった。ならすぐに済むかな。みんな。ちょっと行ってくるね」
「大丈夫なの?」
「大丈夫だよUさん。いつもの事だし。オモチ、今日はバケツなしで良いね?」
「ヤスリ様がいないのなら良いわよ~」
「先生。いつもどおり留守番をお願いします。ん?ネコ達もここで待ってていいんだよ?」
ネコとせっけんが私の首元にやってきた。ついてくるつもりなんだろう。
「一緒に行くって言い張ってるから連れて行けば~。邪魔はしないだろうし」
「それもそうだね。コタツもおいで。君は私と一緒に行かないとダメだ。他の子達はここで待っててね。じゃあ行ってきます」
「よし、行くぞ!」
メッシュの掛け声ともに私達は砂岩の住処に移動した。
「いらっしゃいヤヌシ!無理を言って悪いね~」
「こんにちは砂岩。別に良いんだけどさ。何でヤスリがいる時に検証をしなかったの?」
「あいつに知られたら面倒なんだよ。どうせ『儂も連れてけ』って言うだけだし~」
「それはブラシも一緒でしょ?」
「そうだけどさ~。それに他のやつに知られるとヤヌシが大変なことになるって目に見えているからね」
「大変なこと?」
例えばどんなことだろう。思いつかないんだけど。
「もし検証が上手くいくとしよう。そしたら君とメッシュが揃えば我々でも守護者のいる場所なら簡単に移動できるようになる。それがどれだけ凄い事か分からないでしょ~?」
一種のタクシーみたいなものか。たまには良いかもしれないけど事あるごとに呼ばれるのは面倒だね。
「出来ればでしょ?私としてはコタツの事を聞きたいんだけど・・・」
「まずは検証をしようよ!上手くいけばヤヌシの家で説明するからさ!」
「良いの?今、我が家にはUさんや青さんもいるよ?」
「ヘルパーさんは良いけど青はな~。赤に報告するだろうし」
「するだろうね。さっきも私が新しい大地の『守り人』と知り合ったと言っただけで赤さんに報告してたし」
「そりゃそうだよ。それだけ大地の守護者は特別って事さ!ヤヌシ。もっと私を敬ってくれても良いんだよ?」
「はいはい。それでどうするの?」
私としてはコタツの事を聞いて帰るつもりだったんだけど。
「つれないな~。ま、いっか。それで話を戻すけど赤なら融通が利くから大丈夫だという事にしようか。もしも情報をばらしたらその時はその時だ」
「赤さんなら大丈夫だよ。少なくともベリーさんの国の人達よりもね」
「そうだね~。じゃあ検証してみようか!」
早くやりたいだけでしょ?でも先生達も一緒に移動出来たんだ。たぶん砂岩も大丈夫だと思うけどな。
「そうだね。コタツ。そのまま首元にくっついているんだよ?砂岩。コタツに気を付けてね」
「任せて。さぁメッシュ!行くぞ!」
「はい!砂岩様!」
二体とも元気だな~。私は砂岩を背負って家に帰った。この検証次第ではUさん達が驚くだろう。それもそれで楽しそうだから良いか。それよりも私はコタツの話がしたいよ。
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