第331話
あれからすぐにお昼ご飯をみんなで食べ始めた。いつもは食べ始めると静かになる『守り人』達だが今日は違う。まだ食べ始めて五分もたっていないのにとても賑やかに食べている。
いや賑やかというレベルではないな。騒音と言ってもいい。みんなが食べたいピザを主張し合って声を出している。いつもは話し合いができるのに食べる物に関してはみんな我が強すぎるんだよ。
あともう一つ意外だったこと。それは・・・。
「ヘルパーさん!これにあれかけて!!」
「はいはい。マリモちゃん。ちょっと落ち着いて!」
「だって早く食べないとそれがなくなっちゃう!」
ベリーさんが作ったソース?みたいなものは意外にも『守り人』達に好評だった。私もいただいたがピザにかけると良いアクセントになってとても美味しい。ただ辛い。
昨日ベリーさんが作ったパスタが不評だったから『守り人』達には辛い物はダメだと思っていたけど違うみたいだ。
仕方ない。私は一言みんなに告げる。
「みんな。少し落ち着こう。じゃないと一週間おやつ抜きにするよ」
騒音にも近い音が急になくなる。分かっていたけどこの言葉はいつも『守り人』達に効果抜群だ。
「さて春さん。ピザはみんな平等に食べてますか?」
「どうかしら。正直分からないわよ。だってすごいスピードで食べるし」
「ならオモチ。君は見ていたでしょ?そこまで食べないし」
「そうね~。平等とは程遠いわ。ヤヌシも分かって聞いてるんでしょ?」
「そうだね。でも確認は必要だ。はぁ。毎回同じことで注意する私の身になってよ」
「だって美味しいし。みんなが急いで食べるからつられちゃって」
集団心理ってやつかな?そうだとしても・・・。どうすれば良いんだろう。
「ならヤヌシ君!当番を決めれば?」
「当番?」
「そうよ!給食当番!リーダーを決めればいいんじゃない?」
給食当番か。良い案だと思うけど問題はタワシなんだよな~。あの子に任せると大変なことに・・・。いや待てよ。かえって良いかもしれない。
「良いね!その案を採用させてもらおうかな。なら今日の当番はタワシだ。監督は先生でお願いします」
「監督ですか?」
「はい。今回はタワシですが。当番がちゃんとみんな平等に食べれるように指示できているか判断してください。出来ていなかったら注意や説教をしても良いですよ」
「本当ですか!?喜んで監督しましょう!」
先生は最近、私の手前言いたいことを我慢している感じがする。この際だ。好きにしてもらおう。
「僕が給食当番?給食当番って何?」
「みんなが平等に食べれるようにご飯を配ることだよ。分からなくなったら誰かを頼って良いからね」
「・・・。分かった!僕が給食当番!!」
今の感じ・・・。分かっていないな。これも経験だ。頑張ってねタワシ。
「ねぇタワシ。あたし達はどうすれば良いの?」
「え?えぇっとね~。春さん。どうすれば良いと思う?」
「そうね。まずはみんなが今何枚ピザを食べたのか聞くべきだと思うわ」
タワシは春さんに協力を仰ぎながらピザを配りだした。それでいいんだよ。ちょっと先生が残念がっている気がするけど分からない事は周りを頼って勉強すれば良いんだ。
次は自分だけで出来るように頑張ろう。私も手伝うからね。
タワシが仕切りだすと食べるペースやかなり落ちた。というか事あるたびに春さんやUさんなど周りの人に聞いているからスピードが上がらないんだよね。
少しは自分で考えてほしいけど今日は初回だ。それにタワシもかなり若い『守り人』。話している感じだと小学校低学年って感じがする。そう考えるとこれが普通なのかも。
「それにしてもこのソース?は美味しいね。ベリーさんは料理が上手だね」
「そう?ありがとうって言ってるわ~」
「また機会があれば違う料理を作ってくれたら嬉しいな」
「本当に美味しいわよね~。━ちゃんも料理が上手だけどベリーさんも負けず劣らずって感じね」
「Uさんって料理が上手だったんですか?初めて聞きましたけど」
「そうよ~。他の利用者さんには作ってるんだから。ね、━ちゃん!」
「確かに作ってますけど・・・。家庭料理ぐらいしか作れませんよ」
「家庭料理が作れれば十分だよ。ねぇミカンちゃん」
「なんで私に振ったの?」
だって君、料理できないでしょ?多分だけど。
「何となく」
「悪意を感じるな~。私だってご飯を作れるんだから!今度作ってあげるよ!」
「えぇ?そうだね。今度ね」
「露骨に嫌そうな声を出さないでよ!━さんも一緒に作りましょうよ!」
「私?・・・。そうね。作りましょうか!」
「Uさん。別に無理しなくても良いですよ。Uさんは料理が上手いと思ってますから」
「ヤヌシちゃん良いじゃない。二人とも作るって言ってるんだから。この子達も喜ぶわ。それに━━が何を作る気なのか気になるし」
私も気になりますよ。多分食べることになりますから。
「みんな同じ数ずつ食べたね?なら次のピザを食べよう!」
「タワシ。少しペースを落としなさい。マリモが今のペースだと食べるのが大変そうです。それにあなたはもう少し味わって食べるべきですよ。良いですか?そもそもあなたが・・・」
先生がタワシに説教を始めた。いつもの光景だがタワシは学ばないな。
私はネコ達にご飯を食べさせながら仕事部屋の事を考えていた。
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