「この子」ことトウキ目線
最近、ミーちゃんを見かけない。
あたしは心配になって彼が寝床にしている樹の洞を訪れた。
基本的にあたし達はあまり他の仲間に干渉はしない。
だが、あの子はまだ幼く自由奔放だ。あたしは普段から気にかけていた。
緑色だからミーちゃん。本人は嫌がっているが、とても可愛いと思う。
寝床の中には誰もいない。散歩に行っているのかな?
すれ違いになったのかもしれない。
次の日、その次の日も居なかった。
変なことに首を突っ込んでなければいいが・・・
よく見るとあの子の寝床はきれいなままだ。
もしかしたら夜に帰ってきているのかも。
今晩もう一度来てみよう。
夜になり、ミーちゃんの寝床に訪れた。
ミーちゃんが寝ている。
良かった!無事だった。
寝ているところ申し訳ないが叩き起こす。
「ミーちゃん、起きて!どこに行っていたの?」
「誰~?何だ、お姉ちゃんか。どうしたの?」
ミーちゃんはあたしのことをお姉ちゃんと呼んでくれる。
ちょっと下足らずでかわいい。だが、今はそれどころではない。
「どうしたのじゃないよ!ここ最近、どこに行ってたのか聞いてるの!」
「ご飯貰いに行ってた」
はぁ?ご飯ですって?
あんたご飯食べる必要なんてないでしょうが!
そういえばミーちゃんはいつも木の実とかいろいろ食べていたわね。
あたしも一度だけ食べてみたけど美味しくはなかった。
「貰いに行ってたって誰に?」
「知らないやつ」
「あんた何やってんの!先生から変なことに首を突っ込むなって言われてるでしょ!」
「だって美味しそうだったんだもん。それに僕に対して特に何もしてこないし」
「それにしたって・・・ミーちゃん、もう行くのはやめなさい」
横になっていたミーちゃんが飛び上がった。
「いやだよ!今日も美味しいのを食べさせてくれたし、明日も行くの!」
「何かされてからじゃ遅いでしょ?まぁ、あたし達に何かできるとは思わないけど」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。あいつは足が悪いみたいで早く動けないみたいなんだ。あれだけゆっくりなら全然問題ないよ」
「そういう問題じゃないわよ。言うこと聞かないと先生に言いつけるわよ!」
威勢が良かったミーちゃんも元気がなくなる。
「それは卑怯だよ。お姉ちゃん。それに先生はもう気づいていると思うんだ。だって先生だもん。分かってて自由にしてくれてるんだと思う」
「確かに森の中なら先生が知らないことはないかもね。それでもねぇ・・・」
どうやってやめさせるか考えるが、どうやってもご飯をもらいに行きたいらしい。
その小さな体のどこからその食欲が出てくのよ。
「ならお姉ちゃん。明日一緒にご飯貰いに行こうよ!」
「あたしも?えぇ~あたしは別に行きたくない」
「でも美味しい食べ物をくれるし優しいよ。大丈夫だって!」
ミーちゃんに提案されたが、少しも行きたいとは思わない。
だがミーちゃんが心配なのも事実。
「わかったわ。一緒に行きましょう」
「いいの?やったぁ!」
多分だけどミーちゃんは人間の住処に行っているのだろう。確認しなければ。
ミーちゃんの寝床でやり取りをした次の日の朝。
あたしはミーちゃんについてご飯をもらいに行った。
案内された場所は森の中に急に現れた開けた場所であった。だが、それは人間が住んでいると言われる住処にそっくりだった。そしてその中では人間が立って何かしている。
「あれだよ。お姉ちゃん」
「やっぱり!あれって人間じゃないの!ほら帰るわよ!」
「あれが人間なのか~初めて見たからわからなかった。でも大丈夫だって!ゆっくり動いているでしょう?」
「確かにゆっくり動いているわね。あれなら確かにすぐに逃げられるかしら?」
「あの人間にくっついているとご飯をもらえるんだよ!」
「くっつく?」
「そう。僕は頭の付近に乗っかってるの」
「ミーちゃんは小さいからそれでいいけど、あたしはどうしようかしら」
どうしよう。くっつくことは聞いてなかった。人間になんかくっつきたくない。
でもミーちゃんが心配。
仕方ない。足にでもしがみついてみようかしら。
「じゃあ、僕は先に行くね」
「ちょっと待って、ミーちゃん!」
行ってしまった。ご飯が楽しみなのね。そういえばご飯って何を出してくれるのかしら。聞いてなかったわ。
少し怖いけどあたしも行ってみよう。
人間に近づくがあたしに気付いている気配がない。試しに人間の正面に出てみるが反応はなし。これはおかしいわね。
あたしの体はそれなりに大きい。いきなり目の前にいたら驚くはず。
もしかして、足が悪いのではなくて目が見えてないのでは?
ミーちゃんに倣ってあたしは足にしがみついた。
すると人間の動きが止まった。なぜか上を見ている。
いきなり足にしがみついたから驚いたのかしら。
あたしに人間が話しかけてくる。これはあたしを人間の子供か何かと勘違いしてるわね。
でも、あたしは先生みたいに話せないから答えようがない。
でもこれではっきりした。やはりこの人間は目が見えないんだわ。
ミーちゃんが何かわからないから動物だと勘違いしてご飯を上げていたのね。
普通はあたしたちを見ると人間は逃げ出すって先生は言ってたから。
そのあとに人間はあたしにご飯を食べるか聞いてきた。
「うん」って言いたい。もどかしい。
あたしは人間の足を2回軽く叩いた。
まさかそれで通じるとは思わなかったわ。
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