第35話
私が今回の件の解決案を言った瞬間、その場が凍りついた気がした。
「ヤヌシ、あなたがそういうことを言い出すとは思ってもいませんでしたよ」
「そうですか?そこまでキツイお仕置きだと思っていないですが・・・だって守護者は食べる必要もないみたいですし、ただ外で自由に動けないだけですよ?」
「そうかもしれませんが・・・」
「それに痛みも伴いませんしね。外に出たければ謝れば済む話ですよ」
そう、ちゃんと謝ればいい話なのだ。
「どうしますか?それでも謝りませんか?」
反応がないな。考えているのだろうか。そんな難しい話ではないよ。
「謝らないそうです」
「そうですか、残念です。先生、お願いします」
「・・・分かりました」
地面が揺れる。先生が掘り始めたみたいた。私は念のためしゃがんで様子を見守った。少しして揺れが収まった。
「終わりました。これでこの子は出てこれないでしょう。ヤヌシ、この子はずっとこのままにしておくつもりですか?」
「いえ、さすがにそこまで鬼畜なことはするつもりはないですよ。少しの間、反省してもらいましょう。次に掘り返した時、ちゃんと謝ってくれれば私は良いですよ。タワシ達もそれでいい?」
トウキが足を叩いてくる。トウキは良いみたいだ。問題はタワシだ。
「先生、タワシは何て言ってますか?」
「考えてるみたいですね。まぁ時間はあるわけですし、今決めなくてもいいでしょう」
「そうですね。そういえば私の花壇と家庭菜園、あと育樹は無事ですか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。「あの子」も守護者ですからむやみに自然を傷つけることはしません」
やっぱり優しい子だと思うんだよなぁ。今回はしっかりと反省してもらおう。それにしても疲れた。私も横になりたいよ。
「では今日はこれで解散にしましょう。先生、ありがとうございました」
「いえ、元はと言えばこちらの問題ですから。次にお会いするときを楽しみにしてますね」
次か・・・。いつになるのかわからないけれど。
先生に別れを告げて、私は家の中に入り寝室で横になった。今あったことを思い出す。まさかこの場所で誰かに狙らわれるなんて思ってもみなかったな。でも、みんな無事でよかった。
タワシ達も私が横になってすぐにどこかへ行ってしまった。もしかしたら、先生の所へ行ったのかもしれない。私も疲れたので久しぶりに少し昼寝でもしよう。
チャイムの音がする。意識がだんだん戻ってきて目が覚める。チャイムが連呼されている。今何時なんだろう。タワシ達は近くにいないみたいだ。もしかしてもう夜になってしまったんだろうか。
私は寝室から出て玄関の方に移動する。それにしても、チャイム連呼しすぎだろう。何の用なんだろう。先生が心配して様子でも見に来たのだろうか?
「はい、どなたですか?」
「私です!ヘルパーです!」
は?私はドアを勢い良く開ける。
「どうしたんですか?ヘルパーさん。来るのは明後日でしょう?」
「ヤヌシさん。今日は私が来る日ですよ!さっき先生から何があったか聞きました。ずっと起きないから見てほしいと」
今日がヘルパーさんの日だとすると、あれから一日以上寝ていたのか。そうだ、タワシ達はどこだ。
「タワシ、トウキ!」
タワシ達が私の体にくっついてくる。良かった。
「一昨日の事は少しだけ先生に聞きましたが、お腹は大丈夫ですか?見せてください!」
「え?触った感じ大丈夫だから別にいいですよ」
「それだけじゃ分からないでしょう!ヤヌシさんは目が悪いんだから。私が確認してみますよ!」
「でも・・・」
「早く見せてください!ひん剥きますよ!」
仕方なく私は服をめくり、お腹を見せる
「先生から聞いていましたが、赤紫色になってますね。触ったり押して痛みはあるのですか?」
「特に痛みはないですね。見た目は痛そうかもしれませんが、打撲だと思いますよ」
「ん~どうしましょう?私は病院に行くべきだと思いますが」
嫌だ絶対に。
「まだ目が覚めたばかりなので何とも言えないのですが、体調は普通なので様子見が良いです・・・」
何故か小声で言ってしまった。なぜか怒られている気分になる。ヘルパーさんから返答がない。どんな顔をしているんだろうか。
「分かりました。でも何かあったらちゃんと連絡して下さいよ」
「ちゃんと連絡します・・・」
「では改めまして。おはようございます。━━━さん。今日はどうですか?」
「え?は、はい。おはようございます。今日もダメみたいです」
「昨日寝ていたという事は買い物リストは準備できていないですかね?」
「えぇ。完全に寝起きなので。ヘルパーさんのチャイムで目が覚めました」
「鳴らしたかいがありました。大体ヤヌシさんは買うものが一緒ですよね。ちょっとまってください」
バサバサと音がする。多分購入レシートを張り付けている台帳を開いているのだろう。
「先週のレシートを今から読み上げます。要らないものや量を増やしたいものがあれば言ってください」
レシートの内容が1つずつ読み上げれる。私は言われた通りに伝えた。主に冷凍フルーツは増やしてもらった。
「あぁ、あとケーキを何種類かお願いします。それとお弁当を」
「お弁当ですか?どんな奴が良いですか?」
「魚が入ってるやつをお願いします」
「分かりました。ケーキは私が選んでいいのですか?」
「はい。ヘルパーさんのチョイスで3種類くらいお願いします」
「では買い物に行ってきますが、私が帰ってくるまで横になっていてください。絶対に無理はしないでくださいよ!」
「分かってますよ。よろしくお願いします」
ヘルパーさんはいつも通り買い物に出かけて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます