第148話

 今日は青さんが自称友人を連れてやって来る。春さんも一緒だ。この組み合わせで家に集まって大丈夫なんだろうか。正直に言うと自称友人には来てほしくない。これ以上の面倒事はごめんだ。


 しかし『守り人』達は青さん達がご飯を買って来てくれると聞いてとても喜んでいる。何が食べれるかは不明だけどね。自称友人の目的は君達なんだからもう少し危機感を持ってほしいよ。


 私達は青さん達が来る前に花壇へ水やりをしていた。今のうちに先生を呼んでおこうかな?私は右手の指輪を触りながら先生に連絡をとる。


「先生。聞こえていますか?」


「聞こえていますよ」


 先生の声が聞こえる。ただ声の出所は右手の指輪からではなく左肩の方からだ。青さん達が来る時間には少し早いが私の家に来てくれていたみたいだ。


「あれ?おはようございます、先生。もう来ていたんですね」


「おはようございます。今日は念のため早めに準備していました」


 念のためって何で?


「いつもありがとうございます。青さんの友人が美味しい物を買って来てくれるらしいのでみんなで食べましょう」


「ケーキもありますかね?」


 先生はご飯よりケーキ派ですもんね。


「春さんが一緒に来るので大丈夫だと思いますよ」


「春さんなら安心ですね。でも何を買って来てくれるんでしょうね」


「私も聞いてないんですよ。何か分からないのも楽しいですよ」


 今の所、唯一の楽しみと言っても良いのはお昼ご飯だけである。青さんと春さんだけなら特に問題ないんだけどな~。


「私としてはこの島の代表を見に来たんですけど・・・。そっちがついでになりそうです」


 分かっていたことだけど先生はご飯が絡むと優先順位がおかしくなりつつあるな。


「良いんじゃないですか?ついでで。私もあまり興味がないので」


「珍しいですね。ヤヌシをそういうことを言うなんて」


「先日の件もありますし。青さんの友人がすべて悪いとは言いませんが、私としては情報漏れが起きる時点でありえませんよ」


「思ったよりも怒っていたんですね」


 青さんの友人の出方次第では私は怒る可能性は高い。


「当たり前じゃないですか。私だけならともかく周りの人に危害が行く可能性もあったんですから」


「ヘルパーさんや所長さん達ですか?」


「そうですよ。なぜこんな急に青さんの友人がここに来たいのか知りませんが、青さんがここに来れるようになった時点で友人が来る必要はないと思っているので」


 青さんがいるだけで連絡係としては十分だ。


「なるほど。なら私がここに近づかせないようにしましょうか?」


「先生。実力行使はダメですよ。まだ何もしてませんから」


「では何かしたらヤヌシの敷地外に運びましょう」


 この家で変なことをした場合はお願いしようかな。


「その時はお願いします。先生が最終手段ですね」


「任せてください!」


 先生のやる気がすごいな。青さんの友人はこの国の代表をしているぐらいだ。さすがにそんな事態にはならないだろう。


 先生と話しているとトウキが右足に抱き着いてきた。


「おはようございます、先生!ヤヌシ。ミライがご飯が欲しいって!」


 ご飯って栄養剤の事ね。何故かタワシとトウキはご飯と呼んでいる。間違いではないけどね。


「分かった。すみません、先生。ちょっと行ってきます」


「おはよう、トウキ。分かりました。ミライをよろしくお願いしますね」


 私は一度家の中へ戻って栄養剤と白杖を持って外に出た。外に出るとトウキが白杖を持ってミライの前まで案内してくれた。


「タワシ、おいで~」


 私がタワシを呼ぶとタワシが肩まで登ってきた。そこからはいつもの流れで頭まで私が運ぶ。するとミライの声が私にも聞こえた。


「おはよう、ヤヌシ!今日も肥料をお願いして良い?」


「ミライ、おはよう。もちらん良いよ!今から地面に刺すからね」


 私が地面にペン型の栄養剤を刺すと少し地面が揺れた。ミライが喜んでいるのだろう。


「助かるわ~。最近はタワシも訓練頑張っているみたいだから私の負担も減って楽になったわ」


『守り人』達の訓練か。あれ?そういえば今はいつやっているんだろう?


「それは良かったね。タワシも頑張っているんだね」


「最近は先生が少し厳しいから嫌でも成長してるみたい・・・」


 先生も一緒に話したいからタワシの成長を望んでいるんだろう。


「それでも偉いじゃないか、タワシ。でもいつ訓練をしてるの?日中は私と一緒で夜は見回りでしょ?最近は一緒に寝てるし」


「あたしとマリモとタワシは順番で夜に訓練してるのよ。それにヤヌシは知らないと思うけど、最近はここら辺にいる守護者みんなが訓練を頑張っているのよ!」


 トウキが質問に答えてくれた。タワシ達は順番に訓練してたのか。という事は夜一緒に寝ていると思っていたけど誰かは訓練してたってことだよね。


「なるほど。少し気になったんだけど『ここら辺にいる守護者みんなが訓練を頑張っている』のは何で?当たり前の事じゃないの?」


「そのままの意味よ。あたし達が頑張っているから他のみんなも影響されたみたい。あとみんなも頑張ればここに来れると思っているから・・・」


「ちょっと待って!最後の方が聞き取りづらかったけど、それはどういう事?」


「ヤヌシ、それは・・・」


「ねぇ~。別の話をしない?」


 ミライが私とトウキの話に参加してきた。そうだね。トウキには後で話をしよう。内容はとても気になるけど。


「ごめん、ミライ。ほったらかしにしてたね。ミライにも質問があるんだよ」


「私に何!?」


 ミライが元気に答える。話に参加できなくて寂しかったのね。


「君は前に成長すればご飯を食べることが出来るて言ってたけど、それってどうやったら出来るようになるの?」


「そうね。それに関しては私だけではダメなのよ。タワシも成長してくれないと無理なの」


「え、僕?」


 静かにしていたタワシが急に話を振られたので驚いている。私も驚いた。まさかタワシが必要だとは。という事は?


「もしかしてタワシが成長したらタワシが食べた物の味を共有できるって事?」


「あたり!ヤヌシ、すごいじゃない!」


「僕が食べた物を?どういう事?」


「タワシ、あとで説明してあげるよ。なるほどね~。君とタワシは一心同体みたいだね」


「ミライ、すごいわね!でもタワシの訓練次第なら当分先になりそうかも」


 トウキが少し残念そうに言っている。諦めが早い。


「そんなことないさ。ねぇ、タワシ」


「そうだよ!トウキ。なんでそんなことを言うんだよ」


「なら訓練の日にヤヌシの布団から出てこないのをどうにかしなさいよ」


「タワシ。まさかサボってるの?」


 私はタワシが真面目に訓練していると思っていたがそうではないみたいだ。タワシに対してトウキとミライが圧をかけている。これはタワシが悪い。私は静観しておこう。

 その後はミライの時間制限ギリギリまでタワシが説教されていた。これからも頑張れよ、タワシ!

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