第46話
我が家に「大地の守護者」と先生がやってきた。私達はリビングで飲み物を飲んで談笑している。大地の守護者はブラックコーヒーが好みだった。一応ココアも飲んでもらったが、コーヒーが良い!って言い切られた。
今まで会った『守り人』は甘いものが好きだったので意外だった。もしかしたら樹の守護者が甘いもの好きなだけなのかもしれない。
先生は先日起きた事を詳しく「大地の守護者」に報告した。私がかいつまんで説明していたので改めてちゃんと報告しているみたいだ。大地の守護者は先生が話している間、黙って聞いていた。
時折トウキの抱き着く力が強くなった時があった。あの時を思い出しているのかもしれない。トウキは負けず嫌いな性格みたいだからな~。悔しかったのかも。
私は我関せずと、コーヒーを飲みながらタワシを触っていた。先生が報告し終わったみたいだ。私も「大地の守護者」に聞きたいことがあるので今のうちに聞いておこう。
「大地の守護者さん。今回の件で私が「あの子」にやった仕打ちは何か問題がある?もしかして人知れず始末されちゃったりする?」
「え?別に私が言うことは特にないよ~。ただ、私も明日その子に会っておこうかな~」
「え?何でですか?」
「もしも謝らなかった場合、私が今よりも地下深くに連れて行く。二度と外に出れないだろう。間違いをちゃんと謝ることが出来ないのは人間と同じだ。私はそれが一番許せない」
話し方が急に変わる。
「君には本当に迷惑をかけたね。申し訳ない。大事にならなくてよかった」
「いえ、大地の守護者さんからは謝罪は結構ですよ。謝ってもらうべきは先生と「あの子」ですから。あとは「あの子」が謝ってくれれば終わりです」
私もつられて話し方が変わる。普通にしゃべりたい。
「そうか・・・。いや、そうか~。なら私はこのまま明日までここに居座らしてもらおうかな~」
「えぇ、構ないよ。ただ、明日私の知り合いが3人来るけど大丈夫?」
「そうなの?何で来るの?」
「私が食べる食料品などの買い出しや家の掃除をしに来てくれるんだよ。あと・・・。「あの子」を掘り起こす時の立ち合いかな」
なぜかどんどん声が小さくなってしまった。別に悪い事ではないのに。
「見世物ではないんだよ?」
言葉に圧を感じる。だが、やらかしたのはそっちだ。
「別に見世物のつもりはないよ。純粋に私を心配してくれているの。私は立ち合いを拒否したんだけど、押し切られてしまった感じなんだ」
「先生は何も言わなかったの?」
「私は何か言う資格がありませんから。私の教え方が悪かったせいで今回の事が起きてしまいましたからね。でも被害に遭ったのがヤヌシで良かったと思っています。ヤヌシには悪いですが・・・。そこら辺の人間を攻撃していたら面倒なことになっていましたから」
「そうだな。私は守護対象を見に来ただけだったのにな~。はぁ、コーヒーが美味しい」
話し方をどっちかにしてくれないかなって言ったら怒られるかな?私の中のキャラが固まらない。
「大地の守護者さん、コーヒーのおかわり飲む?」
「いる!」
「先生は?」
「私もいただきます」
タワシ達は言わずもがな。私はキッチンへ移動する。背中には大地の守護者。
「ねぇ、大地の守護者さん。「大地の守護者」って呼ぶのが長いから呼び名をつけてもいい?」
「確かに長いね。良いよ。任せる~」
「じゃあ、少し私の手を触ってくれる?」
「手を?良いけど。こんな感じ~?」
普通に私の手首を握ってくる。私も大地の守護者の手を触る。人間の手みたいな形だな。ん?これって・・・。
「決まったよ。砂岩だね。よろしく!」
「この呼び名にはどういう意味があるの?」
「触った感じが砂みたいにザラザラしていて岩のように固い。砂ような岩で砂岩だよ。大地の守護者なら知ってるでしょ?」
「知ってるけど・・・。まぁいいや~。この家ではそう名乗るよ」
「よろしくね!タワシみたいにテーブルで待っていてくれてもいいんだよ?」
「良いんだよ~。興味があるからね」
「もしかして砂岩って甘いもの苦手?」
「そういうわけではないんだけど、コーヒーの方が美味しい!」
「明日は甘い食べ物を知り合いが買って来てくれるんだけど、砂岩はあまり楽しめないかもね・・・。いや、こっちから連絡すれば」
「どうしたの?」
「いや、こっちの話。砂岩達って私達の文字って読めるの?」
「私は無理かな~。先生にも聞いてみてよ」
「分かった!」
私は飲み物を準備してテーブルとリビングを何回か往復する。
「先生は私達の文字って分かりますか?」
「えぇ、分かりますよ。それがどうかしましたか?」
まさか分かるとは!いけるかな?
「すごいですね!勉強したんですか?」
「いや、暇だったんで樹を使っていろいろと見ていたんですよ。その時に覚えました」
「さすが先生!じゃあ所長さんの本名は覚えていますか?」
「もちろん!おぼえてますよ!」
「ちょっと待っててくださいね」
私は電話がある廊下に移動した。電話の横にあるティッシュ箱ぐらいの大きさの箱から一枚の紙を取り出す。
「あった、あった」
それをもってリビングへ移動した。
「先生、この中に所長さんの名前はありますか?」
「えぇ、ありますよ。これは何ですか?」
「これはですね。私の両親と所長さんが通っていた学校の連絡網ってやつです。
何かあったときにこの順番で連絡していくんですよ」
「へぇ~。人間も良く考えますね。所長さん名前がある下の数字を読み上げればいいんですか?」
「そうです!ゆっくりお願いします」
所長さんが子供の頃から同じ家に住んでいるのは知っている。上手くいけば電話ができるかも・・・。可能性はゼロではない。
私は先生に言われた通りに電話番号を打ち込んでいった。
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