第45話
我が家に「大地の守護者」がやってきた。タワシにお願いして先生を呼びに行ってもらったが、それにしても『守り人』って滅多に出てこないんじゃないの?
リビングには私とトウキ、そして大地の守護者がいる。大地の守護者は私の背中で何をしているのだろうか・・・。
「別に呼ばなくてもよかったのに~」
「いや、念のためさ。それに明日の打ち合わせもしたいしね」
「打ち合わせ?何かするの?」
どうなんだろう。言ってもいいものなんだろうか・・・。場合によっては怒るのではないだろうか。
「大丈夫だよ。今日は君を害するつもりはないから~」
私が沈黙していると「大地の守護者」が何もしない宣言をしてきた。今日はか・・。やっぱり人間は嫌いなんだな。
「説明するのは良いけど、約束してほしい。タワシやトウキ、あと先生にも何もしないと」
「なんでそんなことを言うのか分からないけど、約束するよ~」
私はこの間の事をかいつまんで話した。そして明日になったら地面に埋まっている「あの子」を掘り起こすつもりの事も。
「そんなことがね。よく無事だったね~」
「タワシ達が頑張ってくれたんです」
私はトウキを触る。トウキは私の指をつかんでくる。
「そうか、人間を守ったのか。珍しい」
急に声のトーンが下がった。大丈夫か?何とかトウキだけでも逃がさないと。
「まだ付き合いは短いけど私はこの子達の事を家族だと思っているよ。大事な家族だ」
トウキが私の足に強く抱き着いてくる。トウキもそう思っていてくれると嬉しいな。大地の守護者は何も言ってこない。
「人間がみんな君みたいならいいのにね。本当に」
「私は目が悪いからね。それも大きいかもしれない。見た目で判断しないから」
「なるほどね~。確かにそれはあるかもね。人間は私達を見ると逃げるからね」
「こんなに可愛いのに」
私はトウキを触る。
「守護対象の人間は11人いるけど、私達を可愛いというのは君が初めてだよ~。そもそもこうやって話すことがないし」
「じゃあ11人の守護対象はどういう基準で選んでいるの?」
「そうだね~。この星にとって利益になる可能性がある人たちだよ」
「星にとって利益になる?というと科学者とかかな?」
「科学者が何か分からないけど、違うよ~。今はまだちょっと言えないかな。君の場合は理由がはっきりしているんだけどね~」
「私の場合は?なんだろう?」
「主に私達「守護者」と人間の共存。ここが守護対象になればかなり現実的な話になる。理由はそれだけじゃないんだけど、私はそれが可能かどうかも見定めるために来たんだよ」
「共存か。てっきり人間との橋渡し役を期待されているのかと思っていたよ」
「それもあるけど、私達からしたら人間が滅んでも問題はないからね。だからといって別に滅べと思っているわけではないよ。残された時間の中で新しい可能性を見つけたいんだよ~」
「先生からすぐに地球が滅びるわけではないと言っていたけれど、やっぱり数百年後には滅んでしまうの?」
「良くて200年くらいじゃないかな~?人間にとっては「まだ200年ある」かもしれないけど、私達にとっては「あと200年しかない」んだよ」
出来れば聞きたくなかったな。どうすれば回避できるんだろう。
「でも、どうすればいいの?」
「ん~。それは私達も良く分かってないんだ・・・。いろいろ考えているけど、どうやっても結末が変わらないんだよね~」
私はその頃には「死んでいるから関係ない」とは言いたくない。出来ることはちゃんとやってから死ぬべきだ。
チャイムが鳴った。そういえばタワシが先生を迎えに行っていたのを忘れていた。 話の内容が重すぎる。
私は玄関に移動するがちょっと背中が重い。
「ねぇ、大地の守護者さん。できればもう少し軽くなってくれない?」
「ごめん、重かった?これぐらいで良いかな~?」
本当に背負っているのか分からないぐらい軽くなった。相変わらず『守り人』は出鱈目だな。
「ありがとう。楽になったよ」
玄関で外に声をかける。
「どなたですか?」
「おはようございます。樹の守護者こと先生です」
私はドアを開ける。すると勢いよくタワシが肩に乗ってきた。
「おはようございます。タワシから何があったか聞いていますか?」
「ぼんやりとですね。伝令役としてタワシをもうちょっと訓練すべきですね」
タワシ、いい機会だと思ってお願いしたんだけど・・・。頑張ろうな。
「そうですか。でも見たらわかりますよね」
「えぇ、では失礼して。お邪魔します。そしてお久しぶりです。大地様。お元気そうで何よりです」
「久しぶりだな。樹の守護者よ。いや、ここでは先生と呼ぼう。お前がこの地域の担当だったんだな」
「はい。この島は私を含め樹の守護者五体でまとめています」
「そうか、いつもご苦労。お前達からの報告で上がっていた、守護対象を確認していた」
「ありがとうございます。まさか大地様が直接来られるとは思っていませんでした」
「最近は馬鹿なことをする人間が減ったから暇でね。そっちもだろう?」
「はい、本当にいい事です」
「それにしても、まさか本当に人間が我々を仲間として生活しているとは思わなった」
「先日も身を挺してこの子達を守ろうとしました」
「何の話だ?先程の話では聞いてないな」
私、蚊帳の外なんだけども。リビングで座りたい。
「とりあえずリビングで座りませんか?飲み物を入れましょう」
「では私はココアでお願いします。大地様は我々の飲み物を見てから決めてください」
私の肩が叩かれる。思ったよりも大きい手だな。
「さっきヤヌシが飲んでいたもの?」
急に話し方を戻さないでほしい。切り替えが早いな。
「あれとは違うよ。でもどちらでも良いからね」
私はそういってキッチンに移動した。体に3体の守護者をくっつけて。
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