第4話
「何か」が肩に乗り始めて5日目。
こいつの中には遠慮という言葉は存在しないのだろう。
野生動物なのだから当然と言えば当然なのだが・・・
朝から肩の上で冷凍フルーツをねだって足踏み?している。振動がすごい。
そんなに元気なら山に帰って走り回って自分でご飯をとってきなさいよ。
寝ぼけた頭で余計なことを考える。
昨晩の願いも神様には伝わらなかった。今日も「何か」は元気いっぱいだ。
神様も私に信仰心がないと分かっているから私の願いは取り扱ってくれないのだろう。今晩はもう願うのはやめよう。
昨日の冷凍マンゴー作戦は失敗した。大失敗だった。
下手をしたら「何か」がこの家に居座る理由を増やしてしまったかもしれない。
そもそも「何か」は冷凍ブルーベリーや冷凍マンゴーが食べれるのなら冷凍フルーツなら何でもいいのだろう。
たぶん・・・
気に入らなくて噛みついてきたり、何かしてきたらその時はその時だ。
今日は朝食後のデザートを冷凍メロンにしてみた。
昨日と同じようにテーブルに冷凍メロンが入った容器を置いて、私はキッチンにヨーグルトとスプーンを取りに行く。
昨日と同じで「何か」が冷凍メロンを食べるまでに間がある。
昨日は「何か」が食べ始めるまで私はキッチンで待っていたが、もうそんなことをするつもりはない。どうせ冷凍メロンを食べるだろうし。
「何か」が食べるかどうかを私は全く気にせずにテーブルに戻り、食べ始める。
私が食べ始めると同時に「何か」も食べ始めた。
まさか私を待っていた?偶然だろう。そんな配慮が出来るならとうの昔にこの家から出て行っている。
昨日のマンゴーよりかは食いつきが悪いと思う。でもブルーベリーと同じくらいのような咀嚼音が聞こえる。
食べたか。まぁ予想通りだな。
食べないという選択肢はないらしい。無理してない?別に無理して食べる必要はないんだよ?
未だ持って「何か」にご飯をやるのは納得できない。
しかし私は少しだけ広い心を持とうと思う(ほんの少しだけ)
どうせ明日には野生に戻るのだから。
自分でも情緒不安定なのはわかっているが、すべて「何か」のせいだ!
「何か」が来てからおかしくなってきている。
「何か」のことを考えるのは一旦やめよう。今日は1週間でもっとも忙しいんだから。
今日やることは明日ヘルパーさんが来た時に買い物で買って来てもらう食材などをボイスレコーダーに録音することだ。
私は弱視でメモを書くことが難しい。(頑張ればできるが労力に見合わない)
そのためボイスレコーダーに声で記録して、そのボイスレコーダーをヘルパーさんに渡すようにしている。
食事が終わり、キッチンへ移動して食器を洗う。
食器を洗っていると「何か」が右足から肩の上に登ってくる。
本当にこいつは何をしたいのだろうか?
今のところ大きな害がないので静観しているが、ずっと肩の上にいられると気が散る。
まぁそれも明日まで。何度でも自分に言い聞かす。
ヘルパーさんが来たら退治してもらおう。
食器が洗い終わりボイスレコーダーを持ってまずは消耗品を納めている押入れに移動する。
何を買ってきてもらうか確認していく。
といってもいつも多めに買って来てもらうのでよっぽどのことがない限り、消耗品に関しては追加購入はない。
特にトイレットペーパーは大量だ。
これ絶対、今年じゃ使い切れないだろ。
手で触って確認するだけでも12ロール入りが6つはあるぞ。
まぁ、あって困るものではないが、いつこんなに購入したんだろう。
トイレットペーパーの件は明日、覚えていたらヘルパーさんに確認してみよう。
消耗品はこれといって買って来てもらうものがなかったので、冷蔵庫へ向かう。
冷蔵品に関しては買って来てもらうものはここ数年変わらないのでボイスレコーダーを使う必要がない。
ヘルパーさんも分っているので最低限の確認だけで済む。
前にも言ったが我が家には冷凍庫が3台ある。
冷凍品中心で生活する私にとっては必需品であったので退院して即購入した。
特にお肉・魚用の冷凍庫は素晴らしい。
お肉・魚用の冷凍庫って何と思うだろう。それは業務用の冷凍ストッカーである。
かなり大きいので何があっても大丈夫だと安心できる。
分かりやすく仕切りで分けられている冷凍庫の中を触って在庫を確認する。
寒いのであまり長居はしたくない。在庫を確認するついでに使用傾向も確認しておこう。使用量は肉が多めで魚が少ない。もっと魚を食べなければ。
不足分をボイスレコーダーへ話しかけ録音していく。
右肩から振動が伝わってくる。寒いのだろうか?
「何か」が震えているように感じる。
肩から降りればいいのに・・・・
残りの2つの冷凍庫も確認する。
分っていたことだが冷凍フルーツの消費が激しい。特にブルーベリー。
冷凍フルーツは高価だから出費は押さえたいんだけどなぁ。
在庫を数えるたびに私のため息は増える一方だった。
少し節約しよう・・・
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