第3話
「何か」が私の肩に居座り始めて4日目。
昨日と変わったことはこれといって特にない。
そう変わったことは特にない(ここ大事!)
懲りずに寝る前に神様に祈ってみたが無駄に終わった。
今日も朝になると相変わらずブルーベリーを私の肩でねだってくる。
忌々しい。でも感情を抑えないと。イライラするのは精神衛生上よくない。
何か嫌がらせができないか考えた時にふと思った。
冷凍ブルーベリーではなく冷凍マンゴーを出してみたらどうなるのかと。
思いついたら即実行だ!
私はヘルパーさんにいつも冷凍の果物をいろいろと買ってきてもらっている。
冷凍マンゴー、冷凍メロン、冷凍ベリー、冷凍フルーツミックスなど。
そもそもなぜそんなにいろんな種類の冷凍フルーツを買い込んでいるのか。
理由は簡単。
運動量のかなり少ない私が、お菓子やケーキなんかを食べてたらすぐに太ってしまうからである。
甘いものを食べたくなったときにお菓子やケーキの代用品として食べるようにしている。(全くお菓子を食べないわけではないが)
それにしても最近の冷凍品はいろいろあって本当に助かる。
ヘルパーさんに食べたくなった料理の冷凍品がないか聞いたら大抵の料理は「ありますよ」と言われる。
ありがたいことだ。この引きこもり生活には冷凍品がいないと生きていけない自信がある。
ただ一つだけ問題があった。弱視の私は冷凍品の袋を読めないため何分温めればいいかわからないことだ。
これに関しては冷凍庫の区分けを行うことで解決した。
温める時間ごとに冷凍庫の中を仕切りで分け、仕切りを手で触って何分温めるか分かるようにした。
たまに少し冷たい物や温めすぎな物があるが、どうせ食べるの私だ。
そんなに細かいことは気にしない。
それなりに美味しく食べることができるだけで私の食生活はとても助かっている。
初めは1台しかなかった冷凍庫が今では3台もある。
冷凍庫が3台あれば急遽ヘルパーさんが来れなくなっても、ある程度は何があっても対処ができる。心に余裕もできるというものだ。
さて話が脱線してしまった。
「何か」が冷凍マンゴーを食べるかどうかという話だった。
「何か」が興味本位で食べておなかを壊したりしないだろうか。(第一希望!)
いろいろと試してみるのもいいかもしれない。
多種多様な冷凍フルーツがあるのだから。
心が狭い男だと思われても仕方ないが、そんなことは私は気にしない。
そもそも私が「何か」に冷凍ブルーベリーをあげる必要はないのだ。
私の善意でブルーベリーをあげている。
もらえることが当たり前になるのはよくない!
言い訳はこれくらいにしておこう。
本音はなんとか「何か」を苦しめてやりたい!
この一言に尽きる。
願わくば肩から居なくなってほしい。家から出てってほしい。
そして雄大な森へ帰ってほしい。
1人で妄想しているといつもより気分がいい。
いたずらをしているみたいで少し童心を思い出す。
結果を楽しみにしながら朝食後のデザート準備を行った。
肩の上で「何か」が足踏みを始める
「今のうちだぞ、このやろう」と考えながら冷凍マンゴーの袋から容器に移していく。
テーブルの上に冷凍マンゴーが入った容器を置く。
私はヨーグルトとスプーンを取りにキッチンへ戻る。
そして少しの間テーブルから離れて様子を伺った。
といってもほとんど見えない弱視なので音でだが。
私がキッチンで静かにしていると家の中に静寂が訪れる。
「何か」は様子見をしているのだろうか。
テーブルに冷凍マンゴーを置いてから少しして「ガリ」という音が聞こえる。
恐らくだが一口食べたな。
そこで音は止まった。
恐らく食べたと判断した私はヨーグルトとスプーンを持ってテーブルに戻る。
前回と同じ目にあいたくはないのでしっかりと冷凍マンゴーの入った容器を持って食べ始める。
いつもみたいな軽快な咀嚼音は聞こえない。
「やったか?」とフラグを立てるようなことを内心考えていた。
私が冷凍マンゴーを食べ始めてから少ししてから「何か」の咀嚼音が聞こえ始めた。
いつもみたいに「シャリシャリ」と控えめではなく、
部屋いっぱいに「ガリガリ」と噛む音と「チェチェチェチェ」と舐める?吸ってるような音がかなり激しく響く。
どうやったらそんな爆音が出せる?
「何か」の琴線に触れてしまったのだろうか。
嫌がらせのつもりが「何か」の大好物が今、決まってしまった可能性が高い。
夕食時にいつもの冷凍ブルーベリーを出した。
テーブルに出してから食べるまで少し間があったが、食べ始めた。
今の間は私に対するクレームか?嫌なら食べなくていいんだぞ。
朝の冷凍マンゴーが良かったのかもしれない。
弱視の私には「何か」がどのような表情をして食べているかは分らない。
だからこそ想像が膨らむ。今の間で私を睨んでいるのではないだろうか?
仮にそんなことをしていたのなら相当こいつは賢い。
余計なことはするべきではなかったと寝る前に反省し、今日も懲りずに「何か」に罰を与えてくれと神様に願った。
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