第2話

「何か」が肩に乗った日から3日たった。


 初めは朝食の準備の時だけだったのに、今では一日中ほとんど私の肩に乗っている。

 朝食時は分かるが、日中は肩に乗る必要はないだろう?


 恐らくだが、歩くのが面倒だから私の肩に乗っているのだろう。

 私が拒否しないから好き勝手やっている。本当にむかつく。

 払いのけたいが、何の動物かわからないから手出しできない。


 だが、さすがに風呂に入る時と寝る時は近くにはいない。

 風呂場に行くと肩から降りて逃げていく。

 一日中風呂場にいてやろうか。


 この3日間、「何か」と一緒に過ごして分かったことは以下の3つ。


 ①冷凍ブルーベリーが大好き(冷凍フルーツ系全部かも)

 ②肉や魚、野菜などの食べ物には興味がない?

 ③食べる時以外、日中の生活はとても静かにしている


 以上3つである。


 ①冷凍ブルーベリーが大好き(冷凍フルーツ系全部かも)


「何か」はブルーベリーが大好きみたいだ。

 もしかしたら冷凍フルーツ全般かもしれない。


 初めの日にブルーベリーを食べて以降、私は食事を横取りされないよう食べ物から離れないように心がけた。


 私は弱視なので横から食べ物を取るために乱入されても気がつかない。

 なので取られないようにパンなどの常につかんで食事するもの中心に食べるようにしていた。


 肉がひとかけら取られたとかだったら問題ない。別にそこまで気にしない(嘘)

 だが、「何か」の食べかけを私が食べるわけにはいかない。

 何の菌をもっているか分かったものではない。


 なぜ私がこんなことに気を付ける必要があるのだろうか?全部「何か」のせいだ。


 私は「何か」がブルーベリーを食べて体調を崩せば良かったと思っていたが、今では完全にお気に入りだ。


 私は神を信じてはいないが、「何か」が肩に乗った最初の日の夜以来「何かしらの罰を与えて欲しい」と願い続けている。

 だが都合のいい時だけ神頼みをする私の願いなど受け入れてもらえなかった。


 今考えると「何か」が私の肩に乗り出したのは軽々しく神頼みした私に対して罰が当たったのかもしれない。


「何か」は私が朝食後のデザートでブルーベリーを準備しだすと肩の上で足踏みを始める。


 私も欲しいとアピールしているつもりだろう。

 2日目に無視して自分だけ食べているとブルーベリーの入っている容器の中に入り込んできたみたいだった。


 弱視の私からしたら左手で持っていたブルーベリーの入った容器が急に激しく振動したことになる。

 私はびっくりしてテーブルに持っていたブルーベリーが入っていた容器とスプーンを落としてしまった。


 そこから咀嚼音だけが聞こえた。

 私はため息をつき、落とした容器とスプーンを探した。

 なぜこんなことをしなければならないのか。

 苛立ちが募る。

 今晩もまた神に罰を願おう。


 本当は自分でなんとかしたい。だが上記した通り、何の動物がわからない以上軽々しく触れることは危険すぎる。


 3日目から私と「何か」の2つ分、ブルーベリーが入った容器を準備するようにした。

 すると「何か」は素直にブルーベリーを食べた。

 私の方のブルーベリーには関わってこなかった。

 そして食べ終わると私の肩に居座った。

 本当にいい身分だな。


 ②肉や魚、野菜などの食べ物は興味がない?


 それに関しては本当によかった。

 だか朝食だけでなく夕食にもブルーベリーを求めてくるようになった。

 次にヘルパーさんが来るまでブルーベリーが持つかわからない。

 暴れられても困るので最悪、自分の食べる量を減らそう。


 ③「何か」は食べる時以外は音がしない。


 私の肩に重さがあるから肩に「何か」が存在していると分かる。

 だがそれがないと存在しているかどうかもわからない。

 鳴き声もまだ聞いてない。食べるときも咀嚼音しかしない。


 本当に何の生き物がわからない。

 本命がリス、大穴でイタチってところだろうか。


 でも虫だけは勘弁して欲しい。

 私は田舎住まいの田舎育ちだが、虫は大っ嫌いだ。ちなみに爬虫類も・・・

 小さい頃は両方とも大好きだったのに気づいたら虫も爬虫類もは触れなくなっていた。


 子供の頃は肩に動物を乗せて歩き回りたいと夢見たものだが、こんなに嫌悪感を抱くとは。私が嫌な大人になってしまったからだろうか…


 今の所は大きな被害はないがこれからはどうなるかわからない。

 もしかしたら、すでに家の中ではどこかトラブルが起きているかもしれない。

 私の頭の中は「かもしれない」であふれている。考え出したらきりがない。


 次にヘルパーさんが来るのは3日後。

 3日後か・・・長いなぁ。

 ヘルパーさんが来たら絶対に「何か」を見てもらおう。


 そして可能なら退治してもらいたいがヘルパーさんは女性だ。

 虫や爬虫類でなければ私がやるべきだろう。

 申し訳ないが虫や爬虫類だったらヘルパーさんに頑張ってもらおう。

 情けない男で申し訳ない・・・


 そして今、私は自分の夕食の準備をしながら「何か」からのブルーベリーアピールを肩にしっかり受けていた。

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