第171話

 あれからネコに肉まんを食べさせたが評価はいまいちらしい。一度に食べる量が少ないためパン生地と肉の部分を一緒に食べれないみたいだ。成長したらみんなと一緒に喜んで食べるだろうね。


 縁側の片づけを終わらせて私達はリビングでお茶会をしている。私はネコにココアを飲ませているのだが上手く飲ませることが出来ない。自分で飲もうとしないのでハヤシライスと同じ様にスプーンで飲ませているのだがハヤシライスみたいにとろみがないため飲みづらいみたいだ。


「ネコ・・・。これはちょっと難しいよ。自分で飲むことはできない?」


「そうねぇ。これはちょっと難しいわよね~」


 私の目の前に座っている春さんも見かねて声をかけてくる。


「ヤヌシ。ネコが『ならいらない』って言ってるけどそうする?」


 オモチがネコに通訳してくれるが、どうするって言われてもなぁ・・・。


「自分で飲まないのなら飲まなければいいんですよ」


 先生がちょっとイラついている。まぁ先生は「自分で飲みなさい」って教えるタイプですもんね。


「何か良い方法があればいいんだけどなぁ・・・」


「ちょっと待って!私、良い事を思いついたわ!」


 春さんが急に大きな声を出したので私の体がビクッと反応してしまった。


「━━チーフ、急に大きな声を出さないでくださいよ。みんなが驚くでしょ?」


 私の左横で『守り人』達と一緒に食器を選んでいるUさんが注意をする。


「ごめんね、みんな。でも良い事を思いついたのよ。━━ちゃんに連絡しましょう」


「誰ですか?」


 全く予想がつかない。春さんが話を続ける。


「ヤヌシちゃん、青さんよ!青さんは子猫を育てたことがあるから良い案を知ってるかも」


 なるほど。というか春さんも青さんの事を「ちゃん呼び」してるんですね。女性陣の仲が良さそうで何より。だから青さんが子猫を育てたことを知っているのか。


「なら今晩にでも電話を・・・」


「今かけてみましょう。━━ちゃんも都合が悪かったら出ないわ」


 Uさんの発言に被せるように春さんが提案する。仮に電話に出なくても留守電に入れとけばいいだろうって事ね。


「それもそうですね。ちょっとかけてみましょう」


 Uさんが連絡すると青さんが電話に出たみたいだ。


「こんにちは、━ちゃん。今は仕事中よね?ちょっと質問があるんだけど時間あるかしら」


「・・・。良いの?ありがとう!今ね、━━さん達と一緒なの。スピーカーにしていい?」


 仕事中なのに大丈夫なんだろうか。こちらとしては助かるけど。


「みなさん、こんにちは」


 青さんの声が聞こえる。手早く質問していこう。


「こんにちは、青さん。仕事中にすみません」


「良いんですよ、ヤヌシさん。どうせ暇ですから」


「ごめんね~、━ちゃん。ちょっと困ってて。ヤヌシちゃんの所に新しい『守り人』達が来てるの。それでね・・・」


 春さんがネコ達の説明をした。そしてネコに食べさせる良い方法がないか聞いてくれた。


「そうですね。私が子猫を育てた時はシリンジっていう針のない注射器みたいな器具を使って食べさせてました。ですがこれはヤヌシさんには難しいかもしれません」


「シリンジってやつの中に液体を入れるのがですか?」


「その通りです。ですがオモチちゃんに頼めば大丈夫かもしれません」


「毎回オモチに頼むのも面倒なんですよ。とりあえず自分でやってみますね」


「そうですか・・・。やけどに気をつけてくださいね」


「はい、ありがとうございます」


 何回かチャレンジしてすれば何とかなる気がする。とりあえず、そのシリンジというものを今度買って来てもらおう。


「なら明日シリンジ?を私が買ってくるわ。それでいいでしょ?ヤヌシちゃん」


「良いんですか?」


「もちろん!ついでに犬や猫を見て癒されてくるわ」


「━━チーフ、明日もヤヌシ君の家に来るつもりですか?」


「そうよ。━━に車の運転練習をさせるためにね」


「なるほど。ヤヌシ君、私も来て良い?」


 Uさんも明日は休みなのかな?


「問題ないよ。タワシ達も喜ぶし」


「ヤヌシさん。私も良いでしょうか?」


 青さんも?でも青さんは子猫にご飯をあげたことがある経験者だ。アドバイスをもらえるかも。


「もちろん構いませんよ。でも明日は平日ですよ。仕事は大丈夫ですか?」


「有休をとります。どうせ暇ですから」


 青さんもノート達を見たいんだろう。みんな『守り人』達が大好きだよね。


「なら━ちゃん。明日一緒にペットショップでそのシリンジってやつ選んでくれない?」


「分かりました。ではあとでまた連絡しますね」


「ん~。なら晩ご飯を食べに行きましょうよ!そっち方が良いわ!━ちゃんもどう?」


「良いですね。私も行きます!」


 ネコが一生懸命スプーンですくったココアを飲んでいるみたいだが飲みづらそう。私の左手をネコが時々叩いてくるので文句を言っているのだろう。


「ネコ、今日はココアをあきらめよう。ケーキを食べよう?」


「ん~、納得いってないみたいね。ヤヌシどうする?」


「ネコ、選ぶんだ。このまま大変な思いをしながらココアを飲み続けるか、美味しいケーキを食べるか」


「ケーキにするって~。だけど少し落ち込んでるみたいよ」


 私はスプーンをコップの中に置いてネコを両手で包み遊んであげた。ネコが手の中で抵抗しているが気にしない。ネコがぐったりするまで続けよう。

 やっとケーキを食べることが出来るよ。もうみんな食べ終わってるだろうから手早く済ませよう。

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