第170話
私はネコにご飯をあげようと頑張っていた。春さんの提案でルー多めのハヤシライスをあげたのだがネコが私の左手の中で動き回っている。これはタワシの時と同じ反応なのかな?
「オモチ。ネコはちゃんとご飯を食べたの?」
「そ、そうみたいね~。美味しくてあなたの手の中で激しく動いているわ。ほんと、何してるのこの子」
オモチ、そこまで言わなくても・・・。
「それは良かった。ならもっと食べると良いよ。ネコは自分で食べれるのかな?」
「あなたに食べさせてほしいみたいよ」
「分かった。でも食べさせるのに時間がかかるかもしれないって伝えてね」
「ヤヌシ、そこまで気にしなくても良いわ。適当にスプーンを左手の方に持っていけばネコが食べに行くって言ってる」
そんな適当で良いの?
「試しにやってみるか。これでどう?」
私はこぼれても良いようにハヤシライスの皿の縁に左手を置いた。スプーンでハヤシライスをすくって左手に近づける。すると途中で何かに止められた。ここで止まれという事だろう。
「これネコがやってる?」
「そうよ。ちゃんと自分で止めたでしょ?」
「分かったよ。ならネコが満足するまでご飯をあげよう」
始めはゆっくりと食べていたが徐々にスピードが上がっていった。これはもう自分で食べたほうが良いのでは?オモチに再度聞いてもらったがこの食べ方がいいらしい。ただ甘えているのかもしれない。
バーベキューの机の方から軽い悲鳴とシャッター音が聞こえ、同時に動画を撮影し始めた音が聞こえた。Uさんと春さんのどちらか分からないが毎回良く飽きないよね。
というか私もご飯を食べたいんだけどな。両手がふさがっているせいで何もできない。今日はこの子達の歓迎会だし我慢するとしよう。でも今後もこの食べさせ方が続くのであればやり方を考えなければ。
それからお皿の中のハヤシライスがなくなるまでそれは続いた。食べ終わると春さんが別の料理を持ってきてくれた。いつの間にか中華がゆを作ってくれたみたいだ。他の『守り人』達も食べているみたいだ。本当によく食べるよ。
「ネコ、このあとおやつもあるんだからあまり食べすぎないようにね」
オモチに通訳してもらうと返事が帰ってくる。
「ヤヌシ、ネコはしばらくの間は食べれないから今のうちに食べると言っているわ。思ったより食い意地が張ってるわね~」
「問題ないなら良いけど、明日から罰の終了まで食事の時間を我慢できるのかな?」
「問題ないわよ~。先生いるし」
「そうですよ。問題ありません」
先生が左肩に戻ってきた。食べ終わったんだろうか?
「先生、お帰りなさい。ご飯はどうでした?」
「今日も美味しかったですね!ハヤシライスも美味しかったです!シチューと同じ感じなのに味が全く違うのは凄いですよ」
「まだ他にも味を変えることが出来ますからいずれ作りますね」
「本当ですか?楽しみですね~。あぁ、話がそれてしまいましたがネコの件は大丈夫ですよ。私やオモチが監視していますから問題ありません」
監視しているから問題ないの?
「あなたが心配しているようなことは絶対に起きませんよ。盗み食いはさせませんから」
私はただ我慢できなくなると思っていただけなのだが、先生達は違う心配をしているみたいだ。訂正するのも面倒なのでそのままで良いか。
「分かりました。そこはお任せしますよ。それでバーベキューの机の子達は今どんな感じですか?」
「ヘルパーさん達と一緒にまだご飯を食べてますよ。でももうほとんど残っていませんね」
結構買ったし作ったんだけどな~。さすが『守り人』って感じだ。食べる時は小さくなっているみたいだけど、それでもあれだけ食べれるんだからすごいよ。
「そうですか。楽しんでもらえたのなら良かったですよ。この後はいつも通りリビングへ行ってお茶会をしましょう」
「楽しみですね~。今日はどんなケーキ何でしょう?」
「そろそろ新しいケーキが減ってくるかもしれませんね」
「別に新しくなくても問題ないですよ。美味しいんですから!!」
「あたしも楽しみだわ~。どんなお酒が飲めるのかしら」
そういえばフウセンはお酒を飲むのかな?
「オモチ、フウセンはお酒を飲むの?」
「どうかしら~?たぶん飲むと思うわ」
「少しだけあげてみようかな?炭酸水の方が良いかもしれないね」
「そうね。私が先輩として美味しい飲み方を教えてあげるわ~」
オモチは先輩風を吹かせたいんだろうか。でもその調子で下の子の面倒を見てほしいね。
「ん、なくなったみたいだね。昼食はここまで見たいだよ、ネコ。それとももう一回肉まんにチャレンジしてみる?」
さっきの様子だと食べないだろうけど、まだ机の上に残っているからね。一応聞いてみた。通訳お願いします!
「ヤヌシが食べさせてくれるのかと聞いてますよ?」
「さっきみたいな感じになるけど良いの?」
「良いそうですよ。ネコは食べる楽しみが分かったみたいですね。明日以降の罰は今まで以上にキツく感じるでしょう。ヤヌシの言った通りですね。これなら二度と知らない人について行かないでしょう」
「もうこの子は大丈夫よ~。これだけヤヌシにべったりなんだから」
そうなんだよ。なんだか本当に子育てしてる気分になってるんだよね。『守り人』の赤ちゃんってこれが普通なんだろうか。私はネコを首元にくっつけて肉まんを再度温めるためキッチンへ移動した。
キッチンで肉まんを温めていると春さんがやってきて私の服が汚れていることを教えてもらった。今度からネコの食事が終わった後に口を拭くことを心に誓った。
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