第347話

 無事にお昼ご飯が完成し食事をする準備が始まる。今日の食事当番はフウセン。といってもカレーだからそこまでやることはない。でもフウセンなら安心して任せられるよ。


「ヤヌシ~。コタツの分はどうするの?食べないなら僕が食べてあげようか?」


「タワシ・・・。大丈夫だよ。たぶんコタツは食べるから」


「そうなの~?分かった!」


 やれやれ。優しさなのか食い意地が張っているのか。優しさだと信じたい。


「みんな!食器を持って青さんの所に並んでください!」


 返事する『守り人』達。ご飯が絡んでいると声が大きいね。リビングにいても声が聞こえるよ。コタツが怯えているから声を抑えようか。


 オモチが私に話しかけてきた。


「ヤヌシさん。━━ちゃんのご飯を持ってきましょうか?って青が言ってるわ~」


 青さんは『守り人』達のご飯をついでいるためキッチンから離れられない。だからオモチに伝言を頼んだのか。オモチには本当に助けられている。


「まずはネコ達の分をお願いして良いかなって伝えてくれない?」


 ネコ達は体が小さいので二体で一食分あれば十分だ。でもコタツはそうはいかないだろう。体の大きさを考えたら一食で足りるのかどうか不安だ。

 といってもまずはコタツが昼食を食べるのかどうかなのだけど。まぁさっきのココアの飲みっぷりを考えるとカレーも食べてくれるだろう。


「分かりましたって~」


「ありがとうオモチ。ベリー、君もご飯を取りに行くと良いよ」


「『守り人』達がこっちへ戻ってきたら取りに行くわって言ってる~」


「そっか。子供優先だよね。コタツ。今から少し賑やかになるけど大丈夫だからね」


 背中を触りながら話しかける。また私の腕を強く抱きしめようものなら本当に腕が折れてしまう。


「ヤヌシ。あなたの腕を私の水で保護しましょうか?それならあなたが傷つくことはないわ~」


「いや良いよ。コタツが嫌がるかもしれないし。これで落ち着いているんだ。このままにしておこう」


 本当に落ち着いているかどうかは分からないけど。


「必要ならいつでも言ってね」


「ありがとうオモチ」


「ヤヌシ~。ご飯貰ってきた!」


 タワシがテーブルの上にご飯を持ってキッチンから戻ってきたみたいだ。カレーの良い匂いがする。


「みんなの準備が終わるまで待つんだよタワシ。そうだ!悪いけどネコ達のご飯をもらって来てくれない?」


「任せて!行ってくる~!」


 よろしくね。本当は私が取りに行きたいけど・・・。片手しか使えないと何かを持って移動するのはかなり難しいんだよね。どこかにぶつかってご飯を床にこぼす未来しか見えない。


「ヤヌシ。あなたはどうするの?ってベリーが言ってるわよ~」


「どうするって?」


「あなた自身はご飯をいつ食べるのだって~?」


「この子達を食べさせた後だよ。幸いにも今日のお昼ご飯は温め直せば美味しくいただけるからね」


「子育てって大変ね~」


 それはオモチの言葉かな?ベリーさん?どっちでもいいや。


「ヤヌシ!ヘルパーさんがこっちにやって来るわよ~!」


「掃除が終わったんだね。教えてくれてありがとうオモチ」


「足止めはしなくていいのよね~?」


「もう大丈夫だよ。コタツを紹介しよう」


 足音が近づいてくる。Uさんはどういう反応をするだろう。


「ヤヌシさん。掃除が終わりましたよ」


「ありがとうございます。この後は『守り人』達の面倒を見てください。話し方も直して良いよ」


「そう?ありがとう。それでそのぬいぐるみについて説明してくれる?あなた、そんな趣味なかったでしょ?」


「良いよ。そのまえに約束して。じゃないと私は病院に行く必要が出てくるから」


「意味が分からないんだけど。ベリー、何?こっちへ来いって?」


 さん付けやめたんだね。ベリーさんがコタツの事を説明してくれているみたいだ。


「・・・。なるほど。分かったわ。その子には極力触れないようにするわね」


「どうしたの?いつもなら発狂するじゃない」


「否定できないけどね。でもその子、怯えてるじゃない。さすがにその姿を見たら触りたいとは言えないわよ」


「ベリーさんは『抱っこしたい』って言ったよ?」


「ベリー・・・。ヤヌシ君。コタツちゃんの事を考えたら少し私達と離れた方が良いのかも。折り畳みの机を出すから私達はそっちでお昼ご飯を食べるわ」


「なら私がそっちへ移動するよ。私とネコ達。あとコタツね」


「なんでそうなるのよ。あなたがここで良いでしょ?」


「いや『守り人』達の様子を見てほしいし。それに折り畳みの机は小さいから私一人の方が良いよ」


 三人であの小さなテーブルを囲むのは厳しいよ。


「確かに小さいけど無理じゃなないのに」


「良いんだよ。Uさん悪いけど、私が床に座ったらその前にテーブルを出してくれない?」


「分かったわ」


 私は席を立ってテーブルから少し離れた場所で床に座った。Uさんがテーブルを出してくれる。コタツが震えている。少しだけ我慢してほしい。オモチが注意してくれたおかげで今回はそこまで強く抱きしめられなかった。


「ヤヌシ!カレー持ってきたよ!ここで良いの?」


「ありがとうタワシ。ここで良いんだ」


「ヤヌシはここで食べるの?なら僕もこっちで食べる!」


 タワシに続いてみんながこっちにやってきた。何のために私がこっちに来てるか分かってる?


「みんな。悪いけど今日のお昼はいつものテーブルで食べてね。夕食は私もいつものテーブルで食べるからさ」


『守り人』達はしぶしぶいつものテーブルへ戻っていった。一緒に食べたいと言ってくれるのは嬉しいけど今はコタツをどうにかしないとね。

 その前にネコ達にご飯をあげないと。カレーの良い匂いがする。私も早くご飯が食べたいよ。

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