第254話

 簡単なコンソメスープを作り私はリビングへ戻った。赤さんはまだ気絶中。青さんはタワシ達と遊んでいる。


「ヤヌシさん。何か手伝う事はありますか?」


 ヘルパーさんがリビングへやってきた。もしかして掃除が終わったのかな?


「今の所は大丈夫ですよ。ヘルパーさんの方はもしかして終わりましたか?」


「そうです。オモチさんが掃除をしてくれているので家はとても綺麗ですよ。なので掃除は簡単に済ませました。何か他にやることはありますか?」


「ご飯が炊けたら手伝ってもらいたいですが今は特にやってほしい事はないですね。こういう場合はどうすればいいですか?」


「私も経験がないので何とも言えませんが・・・。あれ?赤さんはまた発作ですか?」


「えぇ。気にしないでください」


 些細なことです。もうすぐ復旧しますよ。


「Uさん。ヘルパーとしての仕事はここまでで良いんじゃないですか?」


「そういうわけにはいかないわ。仕事ですもの」


「でもやることがないじゃないですか。所長さんに連絡して指示を仰ぎましょう。問題なければここで終了で良いと思いますよ」


「・・・。そうね。電話してみる」


 正直、ヘルパーさんに『守り人』達の事はお願いしづらい。以前から私はヘルパーさんの仕事中に『守り人』達に関することをお願いしている。だがお願いしている事はすべて契約外。つまりUさんの厚意に甘えているだけ。


 仕事が終わってしまえば友人としてお願いすることが出来るからね。まぁそれでもUさんに甘えている事には変わらないんだけども・・・。そう考えると私は最低だな。


「確認しました。やることがないなら業務終了で良いそうです」


「良かった。ならここからは友人のUさんという事で」


「そうね。なら私もご飯が炊けるまで青ちゃんと一緒に遊んでいようかしら」


「赤さんが起きたらタワシ達を見せないようにね」


「わかった~」


 Uさんがテーブルの方へ移動した。私も後を追う。赤さんはほったらかしだが仕方ない。少しして赤さんが起きたため全員でご飯が炊けるのを待った。


 ご飯が炊けるとみんなが一斉に動きだす。オモチに袋に入ったハンバーグを温めてもらい、Uさんには目玉焼きを焼いてもらった。私はスープを温める。

 仕事が終わったのでUさんにもお昼ご飯を食べてもらうつもりだ。


 目玉焼きを焼いているUさんに『守り人』達が集まっていた。Uさんもご機嫌で目玉焼きを焼いている。すると『守り人』のみんながUさんに質問を始めた。目玉焼きを焼いているだけなのによくそんなに目玉焼きについて質問が出てくるね。Uさんも困っているじゃないか。


 赤さんと青さんはリビングで料理が出来るのを待っていた。赤さんに今の光景を見せるわけにはいかない。私には現状がどうなっているのか良く分からないがまた発作が起きてしまうのは避けたい。リスクの回避ってやつだね。


 時折リビングの方からメッシュと青さんの話し声が聞こえる。メッシュはこちらに参加せずに青さんの膝の上にいる。ちなみにメッシュは赤さんの膝の上を拒否した。赤さんは落ち込んでいたがあまり気にしないでほしい。


「はい、みんな!ご飯を食べるよ。良い?ゆっくり食べるんだよ」


 私は『守り人』達に念を押す。ハンバーグも一人六個までと伝えているし『守り人』達もいつも通り小さくなっているはずだ。これでゆっくり食べてくれるよね?


「いただきます」と私が言うとみんなが一斉に食べだした。いつも思うけど話しながら食べようよ!


「聞いてはいましたが今日は大丈夫そうですね。良かった」


 赤さんには申し訳ないが後ろを向いてご飯を食べてもらってる。テーブルの上を直視すると確実に発作が出るため仕方ない。青さんは縁側で食べればいいと言っていたがさすがに可愛そうだったので止めておいた。

 赤さんはみんながハンバーグを食べていることを知って安心している。前回の失敗がそうとう堪えていたんですね。私も少し食べたがとても美味しい。


「このハンバーグはとても美味しいですね。さっき袋の上から触らせてもらいましたがハンバーグ一個の大きさがとても大きいですし。赤さんの事だから有名なお店で買ってきたんじゃないですか?」


「そんなことはありません。駅前にあった洋食屋さんのやつですよ。前回の帰りに寄って食べたんですけどね。とても美味しかったから次にここへ来る時は持って来ようと思っていたんです!!」


 前回の帰り道にもう次の事を考えていたなんて。でもこのハンバーグはとても美味しい。


「もしかした━━━のハンバーグですか?」


「そうだったかな?ちょっと名前が出てこないですね。袋を見れば分かりますよ」


「━さん。そのお店で会ってますよ」


「超人気店じゃないですか!そりゃ美味しいはずですね。ヤヌシ君、もっと味わった方が良いわよ。そのハンバーグ一つでスーパーのお弁当四つは買えるわ」


「高!そんなに有名なの?」


「常に行列ができている洋食店よ。赤さんが並んだんですか?」


「私が並べるわけないじゃないですか。一応、これでも首相ですよ?秘書にお願いしました」


 赤さんって秘書がいたんだ。どんな人なんだろう。


「ヤヌシ!おかわり~」


「タワシ。ゆっくり食べなさいって言ったでしょ?」


「分かってるけど美味しいんだもん!」


「はいはい。次からは目玉焼きなしだからね」


「分かってるよ~。あれも美味しかったのに・・・」


 そんなに悲しまないでよ。仕方ないじゃないか。私はあまり卵は食べないんだから。一人暮らしだと賞味期限までに卵を消費するのが大変なんだよ?


「ヤヌシ君。私がやるわよ。オモチさん、ハンバーグを温めてもらって良い?」


「良いわよ~」


 これからどんどんハンバーグ丼のおかわりが始まるんだろうな。

 それにしてもみんな。私が作ったコンソメスープも飲んでね!誰も感想を言わないから美味しいか不安になるよ。

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