第60話
所長さん達や砂岩達が帰ってから四日経過した。あれから特に変わった事はない。今度ヘルパーさんが来た時に頼む予定の消耗品をボイスレコーダーに録音したりタワシ達とコミュニケーションを図っていた。
タワシ達の学習能力はとても高い。ひらがなを教えてみるとすぐ覚えていた。私は紙に一文字ずつひらがなを書いていると書く行為が懐かしく感じた。日常生活で文字を書くことなんてここ数年なかったからな~。だがさすがに漢字は教えることが出来ない。
ミカンちゃん達が次に来た時にお願いしようかな。特にトウキは興味津々だった。知識欲というのかな?勉強するのが楽しいのかもしれない。
朝食後に私はリビングでコーヒー飲んでいた。いつもなら一人でコーヒーを飲んでいた。だがマリモが来てからタワシ達にもココアを出すようにした。思ったよりも『守り人』達が喜んでくれて私も嬉しい。
さて今週のヘルパーさんの日の昼食は何を食べようか。今までなら昼食のメニューは一人で考える所だが今はみんなで話す?ことが出来る。
「みんな。明後日ヘルパーさんが来るんだけどお昼ご飯に何か食べたいものはある?」
「この前食べた茶色いやつ!」
トウキが一番に言ってくる。
「茶色いやつ?あぁ、ジャガイモの事か。あれなら良いよ!マリモとタワシは?」
「俺も茶色いやつが欲しいな。あとケーキ!」
「タワシも茶色いやつだって!あとはヤヌシが作る食べ物が少し欲しいって!私も少し欲しいかも・・・」
タワシに通訳してもらいタワシの希望も聞いた後にトウキが少し控えめ自分も欲しいと言ってくる。別に恥ずかしい事じゃないよ。
「分かった。じゃがいもを買って来てもらう物に追加しておこう。マリモ、どんなケーキが良いとかある?」
「色々食べてみたいな!」
「ならヘルパーさんが来る日のたびに一種類ずつ頼もうか。いつかお気に入りが見つかるさ」
「ケーキはあたし達も食べていいの?」
「ああ、良いよ。もちろんさ。みんなで食べよう!」
タワシが肩の上で喜びトウキも力強く足に抱き着いている。でもタワシが私の作る料理を希望するとは思わなかった。素人料理だが頑張ろう。
「そういえば明日にでもバターケーキを作ろうと思うんだけど良いかな?遅くなってごめんね。本当はもっと早く作りたかったんだけど砂岩が来たりして忙しかったから・・・」
「本当に?やった~!タワシ、明日バターケーキ作ってくれるって!」
「バターケーキってなんだ?」
私はマリモに説明してあげる。
「そうか俺のせいか」
「もう気にしなくても良いよ。こうやって一緒に居てくれるわけだし」
「ヤヌシ、先生も一緒に食べるんだよね?あたしが先生に伝えとこうか?」
「そうだね。お願いしてもいい?」
「いいわよ!任せなさい!」
「タワシ、痛いからいい加減落ち着いて!うれしいのは分かったから」
タワシが私の頬を高速で触っているのかな?やすりをかけられているみたいだ。頬が削れる・・・。
「じゃあ今日のうちにバターケーキの準備だけしておこうかな。どうせなら外で作ってしまおう。そっちの方がピクニックっぽいしね!」
「ピクニックって何?」
「ん~。家の中じゃなくて外に出て自然の多い所で料理を食べることかな?」
説明が難しいな。何となくで大丈夫か。
「いつもの場所じゃなくて外で食べると嬉しいの?」
「あぁ、そうだね。風を感じながら食事をするのは嬉しいよ」
私はホットサンドメーカーを準備しておこう。キッチンへ移動してホットサンドメーカーを探す。
「ヤヌシ、何してるの?」
トウキが興味津々で声をかけてくる。
「バターケーキを作るために使う道具を探しているんだよ」
「そうなの!どんな奴なの?」
「ちょっと待ってよ。え~っと・・・。これかな?」
私は両手で料理器具を触りまくる。といってもホットサンドメーカーがある場所には三つしか調理器具が入っていない。
普通のホットサンドメーカーにステンレス版ホットサンドメーカー、あとたい焼き器。昔は定期的に使ってた器具だ。私は普通のホットサンドメーカーを取り出す。
「トウキ、これだよ。これで焼くんだ」
「へぇ~。これで作るんだ。明日が楽しみ!」
「ヤヌシ。そっちの二つは何なんだ?」
マリモの質問を聞いて私は残り二つの調理器具を持つ上げる。
「こっちは主に鶏肉を焼くのに使って、こっちはたい焼きってお菓子を作るのに使うんだ」
「たい焼き?」
「そう、たい焼き。そうだな・・・。これはさすがに目が悪い状態だとちょっと難しいからミカンちゃん達が遊びに来た時に作ってみよう」
「ミカンちゃん?」
「あいつか~。マリモ、覚悟しなさい」
「何を?」
「ヘルパーがいるでしょう?あれの同類。というか上位版」
ヘルパーさんの上位版ってトウキも言い方が酷いな。
「なんてこった」
「悪い子じゃないんだよ。ただ君達が可愛いから暴走するんだ」
「それってただの危ない人じゃない?」
正論パンチはやめてください。
「否定はしないよ」
「俺、その日だけ何処かに行ってようかな」
「ダメよ!今度はあなたの番なんだから!ちゃんと経験しなさい」
私にとっての春さんだな。過剰に構われると嫌になるよね!
「私に言ってくれれば止めるからね。あまり嫌いにならないであげて。本当は良い人だから」
「「分かった」」
声の張りがない。そんなに落ち込まなくても・・・。あ、そうだ。今週のヘルパーさんの日はあれを作ろう。私の中で昼食の献立が決まった瞬間だった。
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