第121話
先程まで録画していた『守り人』達の動画を青さんの携帯に送ってみた。青さんに『守り人』がどんな姿をしているか知ってもらうためだ。どういう反応をするだろうか。
五分くらいは経過したはずだ。所長さんにそろそろ電話を掛けなおしてもらおうかな。
「ヤヌシ君。そろそろ電話するかい?」
所長さんも同じ気持ちみたいだ。
「お願いします」
所長さんに通話をスピーカーにしてもらった。
「はい、『守り人』対策課の━━です」
「どうも、━━です。動画は届きましたか?」
「はい、届きました。とても可愛いらしいですね!!この子達が本当にあの『守り人』なんですか?」
思ったよりも良い印象だな。私も話に参加させてもらおう。
「青さん、ヤヌシです。本来の姿より小さい子もいますが本物の『守り人』ですよ。見た目は可愛いですがとても強い力を持っていますよ」
「そうなんですね。見た目は可愛いのに」
私も可愛いと聞くたびに一度で良いから『守り人』達の姿を見てみたくなる。
「それでどうでしょう。先程お伝えした明日の件ですが青さんが来てくれれば所長さんはバーベキューに参加できるんですよ」
「私個人としては行きたいですが・・・。今、上司と連絡が取れなくて」
「そうですか。上司と言うのは?」
「━━首相です」
直属?首相って簡単に電話に出れるものなの?
「すごいですね!首相の直属って。ドラマみたいだ」
「私からしたらヤヌシさんの方が凄いですよ。『守り人』と共存して信頼されてるなんて」
それはない。どう考えても首相の直属の方が凄いですよ。
「私にとっては家族同然ですからね。それに青さん、私の事は聞いてるでしょ?私は目が悪い。声だけなら人間と大差ないんです」
「そうかもしれませんが・・・。あ、キャッチが入りました。もしかしたら━━首相かもしれません。連絡が取れ次第、こちらから連絡しますね。失礼します」
電話が切れた。思ったよりも青さんのリアクションは良かった。あとは首相しだいか。私が首相なら青さんをここに送り込むけどね。
「どうなるでしょうね~」
「僕なら青さんをここに送り込むよ。情報収集も込みで」
「私も同じ考えですよ。たぶん許可が出ると思います」
「面倒だね~」
砂岩にとっては人間のやりとりなんて全部面倒でしょ?
「そうだ、肉まん!!ごめんよ、みんな。今やるからね」
私は席から立ちあがりキッチンにある冷凍庫へ向かった。足音がついてくる。所長さんも一緒に来たのかな?
「全部出すか~?結構量があるけど・・・」
「多分食べるよ。僕も貰おうかな?ハンバーガーあげちゃったし」
やっぱり所長さんがついてきてたんだね。
「全部チンしてしまいましょうか。また買って来てもらわないと」
「『守り人』達、肉まんが好きなの?」
「そうなんですよ。ジャガイモと同じくらいのリアクションですね」
「へぇ~。それは大好物と言っても問題ないだろう。今回のハンバーガーはどうなんだろう」
そういえば『守り人』達に感想を聞いてなかった。
「聞いてみたら良いですよ。彼らは本音しか言いませんから」
「なるほどね~。じゃあこれは僕が温めておくよ」
「ありがとうございます。私はコーヒーでも入れましょうかね。所長もコーヒーで良いですか?」
「うん、お願い!」
私はそのままみんなの飲み物を入れ始める。一度リビングに戻りオモチに炭酸を飲むか聞いたら要らないと言われた。お酒を楽しんでいるのかな?リビングへ飲み物を持って行くとマリモに声をかけられる。
「ヤヌシ~。この紙を取ってくれ」
「ごめんよ。気が利かなくて」
マリモが器用に私の目の前にハンバーガーを持ってきた。私はマリモのハンバーガーの包装紙を取ってあげる。少し前まで私は先生やタワシに包装紙を取ってもらえば良いんじゃないかと思っていたのだが「先生とタワシが食べそうで怖い」と言ってマリモは頑なに頼まなかった。食べ物が絡むと先生達は信頼されてないみたいだ。
「はい、どうぞ。食べ終わったら言ってね。マリモの分の肉まんを温め始めるから」
「ありがとう!!分かった」
「肉まん楽しみね!タワシ!」
トウキがタワシに話しかけている。みんなテーブルの上にいるのだろう。個人的に今までトウキだけはテーブルの下だったから仲間外れ感があったんだよね。やっぱみんな一緒にテーブルの上で食べるご飯は美味しいよ。
テーブルの上で何かが激しく振動している。所長さんの携帯かな?
「所長さん、たぶん電話ですよ!!」
リビングに足音が近づいてくる。所長さんはゆっくり来ているな。
「はいはい。お、青さんだね。もしもし、━━です」
「『守り人』対策課の━━です。━━さん、今はスピーカーですか?」
「そうですよ。ヤヌシ君も聞こえてます。それに砂岩と先生もですね」
「結果は出たのか?」
「もう砂岩ってば。すみません」
ごめんなさい、青さん。この子せっかちなんです。
「いえ砂岩様の言う通りです。上司というか首相に説明しまして、私も参加させてもらえるのなら参加するようにと言われました。なので明日はよろしくお願いします!」
「本当ですか?良かったです。ね、所長さん」
「そうだね!これで僕も参加できる。少し前から明日のバーベキューを楽しみにしてたからね」
「ふん!当たり前だ。ヤヌシ、もう一つの件を」
「分かってるよ。それでですね、青さん。砂岩が青さんを参加させるにあたってバーベキューで使うお肉や材料をそちら持ちで買って来てほしいと」
「あいつ持ちでだぞ」
「すみません、砂岩様。あいつとは?」
「━━首相ですよ。青さん」
所長さんが教えてあげる。まぁ今までも話に出てたもんね。
「分かりました。伝えておきます」
あれ?思ったよりあっさりしてるな。
「良いんですか?確認しなくても」
私は気になったので青さんに聞いてみた。
「はい。━━首相は私を参加させる事に条件を付けてくる可能性があると言ってましたから」
首相になるような人だと一般人の考えなんて見透かしてくるんだね。
「良いものを準備するように」
「はい、お任せください。砂岩様」
「明日の参加者は人間は私と所長さんに青さん。それに私の友人二人です。『守り人』は七体います」
「なるほど。少々お待ちいただけますか?」
メモでも取るのかな?
「それで問題の食べる量なんですが・・・。今日のお昼は私と所長さん、あと『守り人』七体でハンバーガーを二十四個と大量のポテトを食べてます。そして今からまだ肉まんを食べますので、かなり食べると考えて肉なんかを持ってきていただけると嬉しいです。最後に『守り人』の一人がお酒を好みますのでそれも多めでお願いします」
「え?今日のお昼でそんなに食べてるんですか?」
「はい。ちなみに私と所長さんはハンバーガーを一つとポテトだけですよ。今日は『守り人』達に体を小さくしてもらってこれだけ食べているので本来の姿になったらシャレになりませんよ」
「・・・。分かりました」
青さんが驚愕してる気がする。フォローを入れておこう。
「青さん、足りないからって怒りはしないので大丈夫ですよ」
「本当ですか?」
「私は怒るぞ」
「私もです」
先生、ずっと黙ってたのに。砂岩も調子に乗っているな。
「青さん、大丈夫ですよ。私がいますから。そんなことを言う『守り人』にはあとで後悔してもらいます」
「冗談じゃないですか、ヤヌシ」
「どうした先生?」
「砂岩様、引いた方が・・・。あとで酷い目に遭いますよ」
「ヤヌシに免じて引こうではないか」
あとで説教だな。
「青さん、詳しくは後で所長さんと話してください。食べ物の話に『守り人』を加えると大変な量になりそうなので」
「良いのかい?ヤヌシ君」
「所長さん。Uさんに聞いてみてください。彼女に聞けば大丈夫です」
ごめんね、Uさん。
「なるほどね!分かった。なら青さん、詳しくは夕方に私から電話しますね」
「そ、そうですか。分かりました。私はこれからそちらに向かう準備しますので連絡お待ちしてます」
電話が切れた。すると所長さん席を立ち肉まんを取りに行ってくれたみたいだ。少し前に電子レンジ鳴ってましたもんね。ありがとうございます。
「さて、砂岩と先生。何か言うことはあるかい?」
これからは説教の時間だ。
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