第253話

 配送業者が冷凍品と炊飯器を持ってきてくれた。配送業者が帰った今はヘルパーさんが冷凍品の片づけを行っている。そうだ、みんなを呼ぼう。


「みんな~。もういいよ!」


 私の掛け声と共に『守り人』達が一斉に体にくっつく。ただしタワシとマリモは別行動。ネコはメッシュのお腹だ。小さくて可愛いものを見ると発作が起きてしまう赤さんのための配慮。マリモは天井付近にいるみたいだがタワシは何処にいるのか不明だ。


「みんなお帰り!今日もありがとうね」


「別にいいよ~。それに冷凍品を運んでくる人間にも興味がある!」


「タワシ達は外で配送業者を覗いてたの?」


「うん!何回も往復して荷物をヘルパーさんの場所まで運んでた!なんか大変そうだった」


 君達が食べる物を運んでくれてるんだ。感謝しようね。


「ヘルパーさんが段ボールの中身を確認してたわ!『今日も大量ね』だって~」


「仕事とはいえヘルパーさんには感謝しかないな」


「━さんの仕事は重労働ですもんね。それに夏場は良いですが冬になると冷凍品を片づけるのは辛いですよ」


 業務用の冷凍庫は外にあるしね。冬場はきついだろうな。何か対策を考えよう。


「ヘルパーさんにはあとでお礼を兼ねて『守り人』達と遊んでもらおうかな?どっちにしろヘルパーさんは仕事が終わってもすぐに帰れないしね」


 赤さん達はおやつまでここにいる予定だ。赤さんたっての希望らしい。青さん達は一台の車で来たので自ずとUさんも帰る事が出来ない。Uさんは喜びそうだけど。


「そうですね。━━さんには申し訳ないですが少しだけ付き合っていただきます。所長さんには私が直接お願いしましたし」


「え?赤さんは所長さんと会ったんですか?」


「会ったどころか一緒にお酒を飲みましたよ!昨日は久しぶりに楽しい時間でした」


 感慨深そうな感じで赤さんが言う。もしかして所長さんと意気投合したのかな?


「ヤヌシさんが思っている通りですよ。赤さんは所長さんと楽しそうにお酒を飲んでいましたよ。初対面のはずなんですけどね。あと春さんが激怒していました」


「なるほど?赤さんと所長さんが仲良くなるのは何となく分かるんですが・・・。春さんはなぜ激怒してたんですか?」


 私は青さんから春さんが怒っていた理由を聞いた。さすがは春さん!パソコン片手に赤さんのボディーガードを殴りに行くとは殺る気満々ですね。


 小さい頃にいたずらをして春さんにアイアンクローをやられたのを思い出す。今の時代だと体罰だと言われかねないレベルのパンチを顔に食らったこともあった。あれ?春さんとの思い出は何かしらの痛みを伴っている気がする。


「ヤヌシさん。なんで顔を触っているんですか?」


「気にしないでください青さん。少し昔を思い出していました」


「はい?・・・。分かりました」


 青さんが気を使ってくれたみたいだ。すみません。私が馬鹿な事を考えていると赤さんが話しかけてきた。


「今からお昼ご飯の準備ですか?」


「そうですね。まずは炊飯器を取りに行こうと思います」


「そうですか。なら私が運びましょう。それなら手伝えますから」


 私達は外へ移動した。外ではヘルパーさんが冷凍品を冷凍庫へ入れている最中だった。


「ヤヌシさん、どうかしましたか?」


「炊飯器を取りに来たんですよ。どこにありますか?」


「それならそこにありますよ。運びましょうか?」


「大丈夫ですよ。私が運びますから。━━さんはそのまま仕事をしてください」


「━━さん、ありがとうございます。では炊飯器はお願いしますね」


 リビングへ戻ろうとすると何体かの『守り人』がその場に残った。ヘルパーさんの片づけを見るらしい。仕事の邪魔をしてはいけないと思ったがヘルパーさんの声が嬉しそうだったから放っておいた。


 赤さんに炊飯器を運んでもらいご飯を炊く準備をする。オモチがやりたいと煩かったのでお願いした。オモチはいつもは静かなのに料理になると人?が変わる。もしかして料理人になるつもりなのかな?


 ここまで昼食の準備は順調だ。ハンバーグは温めるだけだし。あとは付け合わせとスープでも作ろうか。


 私が付け合わせを作ろうとすると赤さんから待ったがかかった。目玉焼きを焼いて丼物にしようと提案された。『守り人』達も乗り気だったのでお昼は丼物になった。確かにそっちの方が簡単で良いよね。でも目玉焼きは一人一個までだよ。


「よし!あとはコンソメスープを作りましょう」


「誰が作るんですか?青さんは料理ができませんよ?」


「・・・。タワシちゃん!ここにおいで~」


「は~い!」


「ヤヌシさん。これは放っておいてキッチンへ行きましょう」


 流れるように赤さんを黙らせたな。うん!我関せずで!


「そうですね。さっさと作ってしまいましょう」


「私は何をすれば良いですか?」


「ならネコの相手をしてください。まだ拗ねてますんで」


「それなら任せてください。メッシュさん!ネコちゃんを呼んでください」


「やっとか。ネコ、行ってこい」


 青さんにはリビングでネコとタワシの相手をお願いしておこう。私はキッチンでオモチとスープ作りだ。オモチのおかげで一瞬で終わりそうだけど。ご飯が炊けたらハンバーグを温めよう。美味しいお昼ご飯が食べれそうだ!!

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