第129話
キッチンでお昼ご飯の準備を一緒にしないか青さんを誘ってみると青さんが何故か驚いている。もしかして料理が苦手なのかな?
「青さん。ジャガイモをアルミホイルで包んだりするぐらいですから安心してください」
「本当ですか?私、料理が苦手で・・・」
「大丈夫ですよ。少なくとも私よりは出来ると思いますから!」
私は明るく振舞うがもしかしたら逆効果かも。
「私についてきてください」
私は青さんと共にキッチンへ移動する。家の中に入った瞬間にミカンちゃんの声が聞こえた。
「なんでタワシちゃんはこっちに来てくれないの~?」
ミカンちゃんが大きな声でタワシに呼び掛けている。私は興奮気味なミカンちゃんに話しかける。
「ミカンちゃん。言っておくけどタワシはもう私達の言葉を理解しているからね」
「え?」
「ほらね、言ったじゃないの。だからタワシちゃんが嫌がっているのよ」
「ん~!」
何か泣きそうになってない?しょうがないなぁ。
「はぁ、ミカンちゃん。普通に話しかけてごらんよ。すぐには無理でも少しずつ触らせてくれるから」
「・・・。はい」
「━━さん、声の大きさとトーンを少し下げるだけでも効果があると思いますよ。動物は声が大きいと攻撃的に感じると聞いたことがあります」
「そうなんですか?」
青さんがミカンちゃんにアドバイスをしている。でも動物なのかな?
「えぇ。私は猫を飼っていますが、お世話になっている獣医の先生が言ってましたよ」
「なるほど。気を付けてみます」
「ヤヌシ君達はどうしたの?」
「こっちを手伝おうかと思って」
「じゃあジャガイモをアルミで包んでくれる?」
「うん。私もそのつもりだよ。青さんも一緒にやりましょう」
「分かりました」
「そうだ。トウキ~」
私はすぐ横にいるくらいのつもりでトウキを呼ぶ。
「ヤヌシ君。そんな声の大きさでトウキちゃんに聞こえるの?」
ミカンちゃんが疑問に思っている。恐らくトウキは今、縁側にいるがこの声の大きさで大丈夫だろう。
「何~?」
トウキが私の右足にしがみついてきた。ミカンちゃんが「あれで聞こえるんだ」と小声で言っている。
「ジャガイモをアルミホイルで包むけどやるでしょ?」
「やる!!」
トウキもこの作業好きだもんね
「あれからマリモの椅子はどうなったの?」
「袋から出してあげたから後は自分で好きなようにやっているわよ」
「ならそっとしておこうか」
「さっきの声の大きさで良いなら私の声は確かに大きいかも」
ミカンちゃんがまた小声でつぶやいている。私は少し落ち着いて話すだけで仲良くなれると思うんだけどな。
「トウキちゃんもやるんですか?」
青さんが驚いている。普通は大きなカワウソが一緒に作業するとは思わないよね。
「そうですよ。私よりたぶん上手いですから」
「そうよ!あたしは上手くできるわ!」
「し、失礼しました」
「さてと・・・。ヤヌシちょっと体をよじ登るわよ」
「ん?良いよ」
トウキが私の体をよじ登ってテーブルの上に移動したみたいだ。どうするつもりだ?
「よし。これでやりやすいかな?」
どたどたと足音が遠ざかっていく。どうした?
「Uさん、どうしました?あれUさん?」
「お二人は走ってどこかへ行ってしまいましたよ」
「何ででしょうね」
もちろん理由は分かっている。
「トウキちゃんが先程のサイズの半分くらいの大きさになってヤヌシさんの体をよじ登っていきました。その瞬間二人とも目が輝いてましたね」
「どうせすぐに戻ってきますよ。携帯を取りに行っただけでしょうから」
ほら。賑やかな足音が戻ってきた。
「トウキちゃん、本当に大きさを変えれるようになったのね。おめでとう!」
「ありがとう、ヘルパーさん!!ヤヌシのおかげなの!」
「トウキちゃん、おめでとう!でもそのサイズでジャガイモ包めるの?」
ミカンちゃんがトウキに質問している。それは私も気になっている。
「ミカンもありがとう!このサイズになってテーブルの上でジャガイモを転がして包んだ方が早いと思うの!」
「良いじゃないの~。ヤヌシ君、早くアルミホイルを切って!」
Uさんの言葉が強い。そんなに見たいのね。
「はいはい。分かりました」
私はアルミホイルをジャガイモを包める程度の大きさで切っておく。それをトウキが包んでいるみたいだ。定期的にゴロゴロ音がするから転がして包んでいるんだろう。横からカシャカシャ音がしているから写真を撮っているのかな?二人とも相変わらず元気だよね。
「青さんも写真が撮りたかったら撮っても良いですよ?」
「良いんですか?」
「えぇ。トウキから許可も撮ってますので」
「・・・。ではお言葉に甘えて」
青さんも猫を飼っていると言っていたから可愛いものが好きなはずだもんね。
「ヤヌシ、アルミが足りないわよ!」
「ごめんよ。ちょっと待って」
それから出来たジャガイモを所長さんの所に持って行って焼き始めた。お肉や野菜も運びバーベキューの準備は整った。私が知らない間に炊飯器を持ち込んでご飯を炊いていたことには驚いたが、この人数だとご飯はたくさんいるので本当に助かります。
そして私は今、邪魔にならないように縁側の横で座っている。
「じゃあヤヌシ君に挨拶してもらって始めるか」
私がUさんからお茶が入ったコップをもらうと所長が声をかけてきた。
「今回もですか?」
「そりゃそうだよ」
無駄な抵抗はやめよう。
「・・・。では皆さん、たくさん食べて楽しんでください。乾杯~」
「乾杯!!」
砂岩が一番大きな声で乾杯する。早く食べたいもんね。テーブルにはピザやジャガイモのホイル焼き、それにサラダが置いてあるらしい。
「ブラシは何が食べたい?」
「どれが美味しいの?」
「ん~、みんな好みがあるからね。全部少しずつ食べてみればいいよ。今からどんどんお肉も焼いていくしね」
「分かった。じゃあ、あれ取って」
ブラシよ。無茶を言うでない。
「それは私に言っても分からないな~。ちょっと待ってよ。Uさん、申し訳ないんだけど一通りお皿に入れてもらえる?」
「良いわよ~。ブラシちゃんの?」
「そうそう。私もブラシと同じものをお皿にお願いして良い?」
いつもありがとう、Uさん。
「はいはい。━━さんも食べてくださいね」
「は、はい。いただきます」
分かっていたことだが『守り人』達が大量にご飯を食べているらしい。青さんが高いお肉も買って来てくれていたみたいだが不評だった。いつものファミリー用のお手軽なお肉の方が良いらしい。安上りで助かるよ。ブラシもずっと食べ続けているし。
概ね良好でバーベキューは終わった。問題が起きなくてよかった。
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