第339話

 キッチンで昼食を作っているとベリーさんがやってきたみたいだ。私に何か言っている。


「ヤヌシ。タワシをどうにかしてくれない?あれでは絵が描けないわだって~」


 ベリーさんのもとへタワシ達が行ってからなかなか帰って来ないとは思っていたけど・・・。やっぱりベリーさんの作業が中断していたのか。


「お疲れみたいだねベリー。タワシが何をしたの?」


「私が使っている機材について質問をしてくるんだ。それだけなら良いんだけどポーズをとってもらうようにお願いしてから大人しくしてくれないんだよ。機材の近くに移動したりして絵が描けないって言ってる~。みんなの予想通りね~」


「それで・・・。タワシはどこにいるの?」


「外へ行ったわよ~」


「オモチ。タワシをここへ連れてきて」


「はいは~い!・・・。連れてきたわよ~」


「オモチ!何するの!」


 以前メッシュにしたように水で拘束したのかな?連れてくるのが速い。


「タワシ。私がオモチにお願いしたんだよ。ベリーさんに協力してあげてって言ったじゃないか」


「協力したよ!ね、ベリー!」


「ベリーさんはまだ君の絵を描けてないらしいよ」


「何で!?」


「君が動き回るからだよ。大人しくしてねってベリーさんに言われたでしょ?」


「だから大人しくしてたよ?」


 君の大人しくは動いていると同義なんだよ。やれやれ。


「ベリー。タワシは私が捕まておくよ。それなら描ける?」


「良いの?助かる!だって~」


「良いよ!任せて。タワシが迷惑をかけてごめんね。タワシ。君は後でもう一度だからね」


「ヤヌシも一緒なんでしょ?やる~!!」


 タワシが右肩に登ってくる。そのまま私の頬を掴んですりすりする。それ痛いんだよ?いつも言ってるのに・・・。

 あれ?反対側ですりすりしてる子がいるな。


「ネコ達もタワシのマネをしてるみたいね~。可愛いじゃない。ベリーも良いな~って言ってるわよ」


 代わってあげれるなら代わってあげる・・・。いや私もこの状況を楽しんでいるのか。痛いけど。


「ベリー。続きはお昼ご飯を食べてからにしようよ。もう少しで出来るからさ」


「そうするわだって~」


「オモチ。外の様子は?」


「フウセンが焚火台からジャガイモを取り出しているわよ。もう火を消していいんでしょ?」


「良いよ。フウセンにジャガイモをキッチンへ持ってきてって伝えてくれる?」


「分かったわ~」


 私はベリーさんにお願いして大皿を出してもらった。するとフウセンがジャガイモを持ってやってきた。フウセンがジャガイモを運んでいる姿を見てベリーさんが驚いている。どうやって持ってきたのだろう。


「ベリー。ちょっと味を見てくれない?」


 私は豚丼の具を小皿に入れてベリーさんに渡した。「美味しいけどちょっと薄い」とのこと。もしかしたら口に合わないかと心配したけど必要なかったね。ありがとうめんつゆ!

 少しだけめんつゆを足して完成とした。


「よし!ご飯にするよ~。今日の給食当番はトウキね」


「分かったわ!みんな、自分のお皿の準備をして!」


 トウキはタワシと違っててきぱきとみんなをまとめていく。タワシ。君も次に当番をする時はこんな感じで頑張るんだよ。


 そのままトウキが頑張ってくれたおかげでお昼ご飯は問題なく終わった。ベリーさんはご飯よりもお酒に合いそうと言ってお酒を飲もうとしたけど止めた。少しだけ残してあげるから晩酌で食べなよ。

 絶対にお昼からは飲まさないからね。


 午後からはベリーさんの作業を私も少し手伝った。といっても私は椅子に座っているだけ。タワシを抑えておくのが私の役目だった。ちゃんと大人しくててよ?

 しかし私の心配とは裏腹に右肩に乗るタワシは動き回ることがなかった。できるのなら初めからそうしておくれよ。


 ベリーさんを手伝っていると電話が鳴った。今日の電話当番だったフウセンに電話が置いてある場所へ先にいってもらい相手をしてもらう。私は遅れて廊下へ到着した。


 どうせ知り合いからしか電話はかかってこないしね。


「ヤヌシ!知らない人です。たぶん以前ここに来た人だと思います」


「分かった。代わろう」


 以前我が家に来たオカルト雑誌の人か。今度は電話で連絡してきたか。というかどうやってここの電話番号を?


「代わりました」


「あ、お忙しい所すみません。私━━オカルト雑誌、編集長の━━です。━━さんのお宅に以前お伺いした者だと言えば分かりますかね?」


 前半は何言ってるのか良く分からないが以前ここに来た人だという事は分かった。


「はい。何か用ですか?」


「━━さんがお住いの地域で起きた事についてお聞きしたいのですが・・・。少しだけお時間を頂けませんか?」


 ここで電話を切ってもいいがこれ以上付きまとわれるのは面倒だ。


「少しなら。仕事中なので手短にお願いします」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


 今回のやり取りで終わればいいけど。気づいたら『守り人』達が体にくっついていた。フウセンから話を聞いて心配してくれたんだろう。


 でも今日の電話当番がフウセンで良かった。タワシなら何か余計なことを言っていた可能性もある。こんなことがあると今度から気軽に『守り人』達に電話を取らせられないかもな・・・。


 とりあえずこの電話を早く終わらせよう。

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