第115話
キッチンで片づけを行っていると私の背中に軽い衝撃を受けた。なんと砂岩が我が家にやってきた。予定では明後日のバーベキューをやる日に来る予定だったはずなんだけどちょっと早くない?
「砂岩、久しぶり。私は元気だよ。少し来るのが早かったんじゃない?」
「良いじゃないか~。私も最近は頑張ってたんだから!それに君に謝りに来たのさ」
「私に?」
それもあるだろうけど早く来たかっただけでしょ?
「あぁ。本来だったら君はこんな目に合うことはなかったんだ。私達守護者と関わったばっかりに本当に申し訳ない」
「そんなことは言わないでほしい。君達のおかげで止まっていた私の時間は動きだしたんだ。気にしないで良いよ。それに私は怪我とかしてないしね」
「そう言ってくれると助かる。本当に人間は碌な奴がいない」
砂岩、ちょっと私をつかむ力が強くなってますよ。
「で、他の『守り人』達は君がここに来たのを知っているの?」
「・・・。さぁ、リビングへ行こう!久しぶりにコーヒーが飲みたい!!」
どうせすぐにばれるんだよ?ここには上位守護者の先生とオモチがいるんだから。まぁ私は関係ないから良いか。砂岩の分のコーヒーを入れて私はリビングへ戻った。
「な?砂岩様!!何でここに?」
「砂岩様が来るのは明後日では?」
テーブルの上の先生とオモチが驚いている。オモチに至っては話し方すら変わっている。
「謝罪に来たんだって」
「そうだ。何か文句あるのか?」
誰も反論しない。そのパワハラみたいな言い方は好きじゃないな。
「私が心配で来てくれたらしい。どうせ明後日には来たんだ。少し早まっただけだよ。タワシ達もいつも通りにするんだ。良いね?」
無駄だろうけど、一応言っとかないとね。
「わ、わかった」
「おう」
「よし!じゃあ砂岩はコーヒーでも飲んでて。もう少ししたら始まるから」
「何が?」
「この国の役人と所長さんの話し合い」
「へぇ~、面白そうだね。良いタイミングで来たみたいだ」
本当に良いタイミングだよね。もしかして先生から聞いて狙ってきたんじゃない?
「そうですね。確かにタイミングは良かったかもしれません。所長さんは驚くと思いますが」
「砂岩様、さっきまで所長さんはここにいたんですよ。帰り際、私が水を使って途中まで送ってあげたんですよ!」
オモチがアピールしてるな。こういうのを聞いていると『守り人』社会も人間社会と大差ないのかも。
「なるほど。それはよくやったな!水の守護者よ。ヤヌシの守りだけでなくみんなと仲良くやっているみたいだな」
「はい!私はここではオモチと呼ばれています。砂岩様」
「そうか。なら私もそう呼ぶとしよう」
堅苦しいな~。何とかならないものかね。でも守護者の会話に私が口を出すことはしない方が良い。もどかしいな。
「所長さんの所にはどんな人が来るんだろうな~。そういえば砂岩。埋め立て工事中の場所を一つ潰したんだって?」
「そうだ。忠告したのにも関わらず手を出してきたからな。次やってきたらこの島のどこかを沈める。ちゃんと人間がいない時にやったんだ。問題ないだろう」
砂岩様モードで話し始めたね。怒っているのは分かるけど島を沈めるのは良くないと思うよ?
「本当にそんなことできるの?」
「できる」
「そっか。これ以上は何もないことを祈るよ」
「そうだね~。さすがにそこまで馬鹿じゃないと思いたいね」
砂岩に戻ったね。相変わらず切り替えが早いな。
「・・生!先生!聞こえてますか?」
所長さんの声がテーブルの上から聞こえる。いつの間にか木の球をテーブルに置いたみたいだ。
「はい、いますよ。横にヤヌシも居ます」
「私もいるよ」
「砂岩?何でそこにいるのさ。久しぶりだね」
「所長さん、久しぶり~。あいつがどういう対応をするのか興味があってね。急いできたのさ」
それっぽいことを言っているけどさぼって来ただけですよ、所長さん。あいつって首相のことかな?
「なるほどね。━━さん。今、聞こえた声の主が樹の守護者の先生と大地の守護者の砂岩です。そして・・・」
「こんにちは。私が当事者になっている者です。そちらでも私の事は調べているでしょうから説明を省きますね。今はヤヌシを名乗っています。よろしくお願いします」
私達の説明は終わった。相変わらず相手の名前は分からないが今日来ている役人は女性であることが分かった。
「ではもう一度自己紹介させていただきます。私は『守り人』対策課、課長の━━と申します。私のことは青と呼んでください。この名ならヤヌシさんも分かりますかね?」
「はい、分かりますよ。青さん、よろしくお願いします」
「みなさん。よろしくお願いします」
とりあえずこれで紹介は済んだな。すると所長さんが話を切り出した。
「前回、電話で聞いた『守り人』対策課の課長さんは━━さんと伺ってましたが・・・。人事異動でもあったのですか?」
「はい、まずはその件から謝罪をしたいと思います。━━は一部の議員に買収されて
━━さんに連絡をしたみたいなんです。当たり前ですが、━━は処分されました」
名前が分からないから話に置いていかれそうになるな。
「なら課長ではなくもっと上の人が謝罪に来るべきじゃないですか?」
所長さんが青さんに質問している。私ももっと上の役職の人が来ると思っていた。
「申し訳ないのですが『守り人』対策課では課長が一番上なんです。もともとあってないような部署でして。三年前にはちゃんと部長などの役職がありましたが、『守り人』対策課自体の活動が年に数回しかないため縮小されたんです」
なるほど。確かにめったに人前にでないのならお飾りの部署になってしまっても仕方ないのかな。
「本来であれば砂岩様と話をされた━━首相が来ると言っていたのですが、今朝起きた空港予定地消失の件で動けなくなりまして」
「砂岩、何か言うことは?」
「特にない」
この件については私が何を言っても意味がないんだろうな。
「そうか。すみません青さん。話の腰を折っちゃって」
「大丈夫です」
「では、これから国としてはどうするつもりですか?あと昨日の件はどういう対処をするつもりですか?」
所長さんが早口でまくし立てる。所長さんもイラついているな~。みんなどうしてそんなに話し方が変わるんだろうね。
「はい。これからの件ですがヤヌシさんの敷地以外の周りの土地を国有地として扱います。もともと国有地となっている場所もありましたがまとめて国有地になります。これでヤヌシさん以外は住むことはできません」
ありがたい申し出だ。これで誰かに『守り人』達を見られることはほぼないだろう。
「なるほど。ありがたい申し出ですね。とても助かります」
「そうだねヤヌシ君。あの付近の土地を国有地にしてくれるのは助かる。では昨日の件については?」
所長さんはそっちの方が気になっているんでしょ?ちょっと落ち着きましょうよ。
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