「何か」改め「たわし」目線②

 僕が「こいつ」に触った日、いつもと違ってとても賑やかな一日だった。


 黄色いやつを美味しく食べた後、僕は嬉しくて「こいつ」の顔を触ったんだ。

 触った瞬間、「こいつ」は体をびくっと震わせた。

 いきなり触ったからびっくりしたんだろうか?今考えると体を登るとき以外で「こいつ」を触ったのは初めてかもしれない。


 気が済んだ僕はいつもの場所に移動した。

「こいつ」は座って何か飲んでいる。時々、横からぶつぶつ何か言っている声が聞こえる。

 僕は「こいつ」が何を言っているのか良く分からない。だが、何日か一緒にいて分かったことは普段「こいつ」はぶつぶつ何か言うようなやつではない。

 とても静かなやつだ。


 今日は何かあるのだろうか?

 外から変な音が聞こえる。何だろう。

 僕は警戒するが、「こいつ」は外へ出れる場所に移動しようとする。


 大丈夫?問題ないの?

 僕の心配をよそに音が鳴る。前に何かの気配を感じる。

「こいつ」が入り口を開く。


 入り口には「こいつ」と似たような生き物が立っていた。

 初めてこの場所で「こいつ」以外の生き物を見た。仲間がいたのか?


 目の前にいる生き物と「こいつ」の違うところは頭の毛が長いことだ。

 今日来たやつは「毛長」と呼ぶことにしよう。


「こいつ」と「毛長」が話している。

 すると「毛長」がこっちを見た。僕について何か言ったのかもしれない。


 僕は足を振ってアピールした。この場所は僕の場所だと。

「毛長」は持っていたものを地面に落として固まっていた。

 これでこの場所は僕の場所だと分かってくれたはずだ。


 少し「こいつ」とやり取りをして「毛長」は外に出ていった。

 やり取りの最中に変な音が聞こえた。何の音だったんだろう。よくわからない。 

「こいつ」は「こいつ」で「毛長」がいなくなってから動かない。


 何なんだ一体。

 少ししてから「こいつ」は外へ行って動き回っていた。

 こんなに動き回るのは初めてかもしれない。今から何が起こるんだろうか?

 僕も一緒に「こいつ」の上で動き回っていた。この後がたのしみ!


 すると「毛長」が帰ってきたみたいだ。

 青い箱から出てきた。あれは何なんだろう。

「毛長」は両手に何かを持ってこちらに歩いて来ている。


 すると急に持っていたものを落とした。

 落とす瞬間、「毛長」は飛び跳ねていた。

 足元を見ると昨日僕がやっつけた細いうねうねの頭が落ちていた。


 やっと気づいてくれた。すごいでしょ!僕がやったんだよ?

「こいつ」に言ってやってよ!


「こいつ」が立ち上がって「毛長」と何か話している。

 恐らくうねうねのことを言っているのだろう。


 そのあとは「毛長」が持っていたものを「こいつ」に渡した。

 そして「毛長」が火をつけ始めた。「こいつ」の横顔を見る。とても楽しそうだ。


 何かを焼き始めた。とてもいい匂いだ。僕もよく見えるようにずっと「こいつ」の体を移動していた。


 僕も少し食べてみたいけど、すでに食べ物はもらっているあまり貰いすぎは良くない。

 別にお腹が空いているわけでもないし、黄色いやつほどはそそられない。


「こいつ」が住処の中に入っていく。

 住処の中はとても賑やかだ。「毛長」が何かしている。

 何だあれ?面白そう!


「毛長」の後ろをついてまわる煩い何かの上に乗る。体から風が出ている。

「毛長」が動くとそのあとに煩い何かがついて動く。


 生き物なんだろうか?僕はその上で何回も飛び跳ねた。

「毛長」が僕を見ている。


 何だろう?寒気がする。僕は急いで「こいつ」の肩へ戻った。

「こいつ」はずっと食事をしていた。


「毛長」が帰っていった。最後に僕に手を振っていた。僕も足でふりかえした。

 またね!


 どうやら「こいつ」とは仲間ではないみたいだ。


「毛長」が帰ってすぐに「こいつ」は僕を触ってきた。逃げようと思ったら逃げれたが、いつも食べ物をくれるお礼に僕は逃げなかった。少しぐらいは許してあげよう。


 少しの間触ってから触るのをやめたと思ったら僕を掴もうとしてきた。

 それはさすがに許せない。僕は逃げた。

「こいつ」の手は僕を追ってこなかった。

 何だったんだろう。今まで触ってこなかったのに。


 そのあと「こいつ」は黄色いやつとか黒いやつ、赤いやつ。色んな食べ物を白い箱から取り出した。

 何をするんだろう。おいしそうだな~。僕は気づいたら飛び跳ねていた。

 それをいつも僕たちが食べている場所にならべている。


「こいつ」が何か言っている。相変わらず何を言っているのかわからない。

 だが何か言った後、並べてある食べ物を順番に触りだした。

 何がしたいんだろう。

 ためしに僕は「こいつ」が触っている食べ物の上に乗ってみた。


 するとどんどん手が動いていく。僕も一緒に動く。ちょっと楽しくなってきた。

 黒、緑、黄色、赤、赤黒とどんどん動いていく。少ししてからそれが終わった。

 なんだか良く分からなかったが楽しかった!


 その日の夕方の食べ物も黄色いやつだったんだ。

 とても美味しかった!


 次の日の朝は赤いやつだった。

 そこで気づいた。もしかしたら、昨日の「こいつ」とのやり取りは食べ物の出てくる順番何ではないだろうか?

 僕って頭いい!

 明日の朝に赤黒いやつが出てくるか確認してみよう。


 その日、「こいつ」は何か作っていた。

 美味しそうな匂いだ。昨日作っていたのより美味しそう!

 でも今食べると夕方食べられないと思う。さすがにいつものご飯よりは美味しくないだろうし。


「こいつ」がいつも僕に食べ物をくれる入れ物に何か入れてきた。

 食べていいということだろうか。とても茶色い。

 匂いは美味しそうだが、なぜだろう。食べない方がいい気がする。


 少しだけかじってみた。そのあとのことはあまり覚えていない。

 気づいたら茶色い食べ物は消えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る