第11話

ヘルパーさんが来てくれた次の日。

朝に冷凍ベリーを出したら素直に食べた。

昨日のやり取りは無駄ではなかったのかもしれない。


そして私は「何か」を「タワシ」と呼ぶことにした。

少し愛着がわいてきたからである。

昔からペットを飼ってみたかったし、イマジナリーフレンドだとしたら誰にも迷惑はかけないだろう。まぁでも名前を呼ぶ機会があるかどうかは分からない。

他の人から見たら変人にしか見えないだろが。


タワシの名前の由来は触り心地がそっくりだから。普通に名前を付けてもどうせ覚えられない。


でも「タワシ」という名前はわかるし聞こえるんだよなぁ~。

未だに私の頭は人の名前がわからないし出てこない。なぜか人の名前だけ!

他人から自分の名前やヘルパーさんの本名を聞いても何を言っているか理解できない。

分かる、分からないの境界線も曖昧だ。


まぁ深く考えないようにしよう。どうせ解決しないし。頭が痛くなるだけだ。

テーブルから縁側に移動して昨日の道具を片づける。


肩にはいつも通り、タワシがのっている。

私は倉庫と縁側を何往復もする。

普通なら一度で終わるかもしれないが、私は片手は壁を触って移動することが基本だ。そのため片手で持てる範囲で荷物を持って移動する。

ゆっくりとやっていこう。


すべての片づけが終わりお腹が空いたのでキッチンへ移動してお昼ご飯の準備を行う。

すると12時の時報が鳴る。ちょうど良いタイミングだ。

今日は冷凍の和風パスタと昨日買って来てもらった千切りキャベツを食べよう。


ご飯を食べる。肩のタワシは静かにしている。

お昼には今のところ冷凍フルーツを求めてこないんだよなぁ。

どうしてだろう。気になる。やっぱりお腹がまだ空いてないからかな?


食後にコーヒーを飲んでいるときに少し思いついたことがある。

やってみようか悩む。少し面白そうだけど、下手をしたら面倒なことになる。


考えた結果、どうせ暇だからやってみるかという結論に至った。


私が考えたこと。

それはおやつにバターケーキを作ることだ。

今のところ、タワシは冷凍フルーツ以外に興味がない。


であれば甘いものに対してはどういう反応をするのか気になった。

でもこれはかなり危険なことだと思う。タワシが気に入ってしまったら作ってほしいとせがまれること間違いない。


頭では分かってはいるがいつも午後は暇なんです。やることがない。

そして私もバターケーキが食べたい。


個人的にはタワシはバターケーキを食べないような気がしている。

私がコーヒーと一緒におかしを食べていても反応しないから。


どうせやることもないから作ってみようかバターケーキ。


レシピは簡単。

バター、砂糖、小麦粉を同じ分量使う。

今日は全部100gずつ使ってみよう。

あとは卵を2つぐらいかな~

ベーキングパウダーはなしで。


このレシピは簡単で覚えやすい。

そして高カロリー。


まずはどうやって私がグラムを計るのか。

福祉用具には重量を読み上げてくれる電子秤があるが、金額が高い。

地方自治体の給付制度を使っても高いものは高い。


そこまでして計量器でグラムを量りたいか?

他の人は知らないが、私はそうでもない。

そもそも計量器なんて使う機会が限られている。


話がそれたが、どうやってレシピの分量を量るのか。

バターは簡単。最近は〇gごとに分かれている商品が多い。私は20gごとに分かれているものを購入している。

溶かす必要があるので、ほかの材料を量っている間に常温で置いておけばそれなりに溶けるだろう。


砂糖は計量スプーンで量る。上白糖は大匙1で約10g。(ヘルパーさん調べ)

小麦粉も砂糖と同じ。だが小麦粉は大匙1で約9g


これで分量は量ることができる。きっちりではないが・・・

お菓子はきっちり量って作らないといけないと小学校の家庭科の先生は言っていた。

でも食べるのは私。作るのも私。


これで十分だと思う。正直もう目分量と同じようなものだ。

私が良いと言っているのだから問題ない。

ごめんなさい、ヘルパーさん。ちゃんと調べてくれたのに申し訳ない。


小麦粉もそのまま使う。(ふるいにかけるとかもしない)


どんぶりに材料を全て入れて混ぜる。

舐めると甘くておいしい。


これを私が愛用しているホットサンドメーカーに流し入れる。

あとはIHコンロで焼く。


甘い匂いが部屋に漂う。

美味しそうだ。

肩にいるタワシに変化はない。やっぱり興味はないみたいだ。


タワシ、本当に要らないのか?

私は久しぶりにバターケーキが食べれると思うとうれしい。


さて少し焦げたようなにおいがしてきた。

ホットサンドメーカーを使う料理は焼き具合が分からないのか問題だな。

今度時間を計りながら作ってベストなタイミングを決めよう。


ホットサンドメーカーをIHコンロから離す。

キッチンへホットサンドメーカーを持っていき冷ましている間にお皿の準備を行う。

あと食事用の耐熱手袋も。


まだ少し熱いが耐熱用手袋を装着しホットサンドメーカーから取り出してみる

少し焦げ臭いが軽く手袋で触った感じは良い感じだと思う。

タワシの分はどうしようか?

一応タワシ用にいつもの食器に移しておいてやるか。食べるかどうかは別として。


ケーキを小さめにちぎってタワシの食器に入れた。

残りは私のだ!予定よりも結構大きいな。CDの入れ物くらいの大きさはありそう。


テーブルにケーキが入った皿と容器を持っていく。

テーブルに置くとタワシは肩から降りて行った。冷凍フルーツがもらえると思ったのかもしれない。


さて、どうなるか見ものだな。

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