第19話
今日はヘルパーさんが来てくれる日。
昨日はボイスレコーダーに不足品を録音して一日が終わった。
消耗品は特に記録するものはなかった。問題は冷凍品。
消費量が多すぎてヘルパーさんに「いつもと同じでお願いします」とは言えないレベルだった。
特にトウキが来るようになって冷凍フルーツの消費量は3倍はなった。
必要な出費と考えよう。ありがたいことにお金には困ってはいない。
このままでは死ぬまでに貯金は使い切れないだろう。少しぐらい贅沢をしてもいいはずだ。
朝食が終わりお茶を飲みながらヘルパーさんが来るまでトウキとの会話?を行う。
トウキにはヘルパーさんが来ることは伝えてある。
恐らくすべては分かってはいないとは思うが、全く知らないよりかはマシだろう。
今日のお昼はポトフを作ろうと考えている。
お肉以外の食材は朝のうちにIHコンロで軽く煮ておいた。あとはヘルパーさんに何の肉や魚を買って来てもらうか決めるだけ。
ウィンナーか厚切りのバラ肉か・・・
サーモンも捨てがたい。
トウキは少し強めに足を叩いてくる。トウキが怒っている証拠だ。
「ごめん、うわの空だったね。今日のお昼ご飯の事を考えてたんだ。そろそろヘルパーさんが来るから、いつもみたいに大人しくしておいてね」
足が軽く2回叩かれる。
玄関の方から車の音が聞こえる。ヘルパーさんが来たみたいだ。
私は玄関に移動する。肩にタワシをのせ足にはトウキをくっつけた状態で。
鏡をみたらどういう風に見えるのだろう。私にも見えないのだろか?
ここ数年で見えなくて一番悔しいかもしれない。
チャイムが鳴る。私は玄関のドアを開ける。
「おはようございます。ヘルパーさん」
「おはようございます。━━━━さん、今日は~どうですか?」
「・・?今日もダメですね。ありがとうございます。今日もよろしくお願いします」
なぜ「今日は」の後を伸ばしたんだろう?
カチッと音がする。ヘルパーさんがメモ帳にペンで記録する準備を始めたな。
「では、まずボイスレコーダーをいただけますか?それとお肉や魚関係で追加があれば言ってください」
ボイスレコーダーをヘルパーさんに渡した。
「そうだ、冷凍フルーツはいつもの倍は買ってきてほしいんですが大丈夫ですか?持てそうですか?」
「え?えぇ・・大丈夫ですけど。冷凍庫のスペースは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。手で探る感じ半分以上は空いていると思います」
「一週間でそんなに減ったんですね。あまり食べすぎるのも体に良くないですよ」
「えぇ、分かっています。心配してくれてありがとうございます」
心配されてしまった。ヘルパーさんにこんなお願いをすることは今までなかったからだろう。
「あと追加で生のカットフルーツ、種類はスーパーにあるものなら何でも良いです。それと厚切りのバラ肉をお願いします」
「生のカットフルーツもですか?・・・分かりました。あとは厚切りのバラ肉と」
いつもより頼む量が多くてごめんなさい。
ボイスレコーダーに録音されているものを記録した後、ヘルパーさんは車に乗って買い物に出かけていった。
私はトウキを触る。
「静かにしていてくれてありがとう。助かったよ。もちろんタワシもね」
縁側に向かいお昼ご飯を作る場所のの準備をしていく。
折り畳みの椅子にテーブル、焚火台。昨日の時点で縁側に置いておいたから組み立てるだけである。まぁこの組み立てるのが私にとっては一苦労なんだが・・・
準備しておいたポトフと厚切りのバラ肉を焼く鉄板も近くに準備しておく。
焚火台に炭を置いたときに気づいた。足にトウキがくっついていると危ないのではないか。
「トウキ、今から私はお昼ご飯を作るんだけど足にくっついていると危ないと思うんだ。ご飯を作る間だけでも離れていてくれないかな?」
足が軽く2回叩かれる。
「ありがとう」
そういった瞬間だった。トウキは私の左足から体をよじ登り、左手の上腕にしがみついてきたのだ。イメージ的にはコアラみたいになっているのか?
見えないから良く分からない。とても気になるなぁ。
右肩にタワシ、左腕にトウキとテーマパークとかで見かけるような格好になっているのではないか?
小さな子供や女性がやる分にはかわいいとは思うが、男の自分がやってもただの痛いやつだろう。
幸い誰にも見えていないのが救いだ。それにトウキは悪くない。
できれば離れていてほしかった。それにしても、この子達はみんなさみしがり屋なのだろうか?
いつもよりもトウキのしがみつく力が強い。無理してしがみついているのか?
それとも今から起こることを楽しみにしているのだろうか。
タワシは今回は普通に右肩にいる。変わった様子はない。先週見たからだろうな。
焚火台の中で割りばしを削る。なぜか焚火台の方から「カサカサ」擦れたような音が聞こえる。今日はそこまで風は強くないんだけれど・・・
そうこうしているとヘルパーさんが帰ってきた。
私はイスから立ち上がりヘルパーさんを待つ。
遠くで「よいしょ」と聞こえる。今日は多いですもんね。本当に申し訳ない。
「戻りました~ぷっ、これ厚切りのバラ肉です」
「ありがとうございます。火をお願いします」
今の「ぷっ」てもしかして笑った?ヘルパーさんはこの子達を本当は見えてるんじゃないのか?
我ながら変な格好になっているのは理解している。あくまで見えているならだが。
ヘルパーさんが火をつけてくれる。
「できましたよ~枯葉が良く入っているからよく燃えますね」
「枯葉ですか?あぁ、なるほど。ありがとうございます。あとでヘルパーさんにあとで相談したいがあります」
「相談ですか?分かりました」
知らぬ間にタワシ達も手伝ってくれたみたいだ。
そのあと今日の購入金額を聞き、私は昼食の準備を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます