第353話

 青さんから電話で報告を聞いた。内容は水路の件と春さんの件についてだ。青さんは報告し終わると珍しくすぐに電話を切った。早く私に春さんへ電話しろという事だろうか。

 仕方ない。お昼に電話するか。でもまずは前置きで『守り人』達と会話してもらおう。『守り人』達のワンクッションで春さんの怒りを抑えてもらわないと。


 ベリーさんが今日も『守り人』達のイラストを描きたいらしい。順番でベリーさんの仕事部屋へ移動する。タワシは最後だ。この子は私と一緒じゃないと大人しくならないからね。


 そうこうしているとお昼前になった。今日はベリーさんがお昼ご飯を作ってくれる。ベリーさんは料理が上手だから安心して任せられる。私は春さんに連絡するために廊下へ移動した。


「春さんに電話したい子いる?今日はかけるだけじゃなくて少しだけ話をしても良いよ」


 おそらくこの場にいる『守り人』達全員が返事をした。まぁそうなるよね。どうするかな~。


「次の電話当番はあたしだった!あたしがしたい!」


 トウキが主張する。そうか。今日はトウキの番だったのか。


「分かった。ならトウキにしてもらおう。みんなにも次の機会にお願いするからね」


 みんながっかりしてる。ごめんね。私の言い方が悪かったよ。


「ならトウキ。お願いね」


「まかせて!電話をかけるわよ!・・・。もしもし?━━ですが、━━さんのお宅ですか?」


 トウキの電話対応がどんどん流暢になっている。他の人の電話を観察しているのかな?少なくとも私が教えてはいないもんね。


「春さんこんにちは!何で電話してきたのかって?・・・。ヤヌシが電話をかけていいって言ったから!」


 良いよトウキ。その調子!春さんと楽しく会話するんだ!


 トウキは春さんとしばらく会話した後、私に電話を代わると言い出した。もう少し話をしてても良いよ?


「はい。代わりました」


「何でそんなに元気がないのよ」


「こんにちは春さん」


「こんにちは。何か言う事はある?」


「今回の件に関して私は悪くないと思います」


「他には?」


 他に?いやないです。


「以上ですけど。何か他にありますか?」


「ないわね」


「何で聞いたんですか?」


「もしも余罪があったら自分で白状すると思って」


 実は手水舎の中心に陸地を作ってネコが契約する育樹を植えますとはまだ言えない。別に問題ないとは思うけど伝えてなかったら何か言われそうな気がする。


「ないですよ。それに緊急性がないと思ったから春さんへ連絡しなかっただけですし」


「緊急性はあるでしょ!テディベアなのよ?見たいじゃない!」


「春さん。コタツは人見知りが激しいから無理ですよ。タワシみたいに好奇心旺盛じゃないですし」


「青ちゃんから聞いているわ。珍しくあの子がやらかしたのも。とても反省していたから許してあげてね」


「別に怒ってませんよ。それにミカンちゃんやUさんに比べれば可愛いものです」


 今まであの二人の『守り人』達にやってきたことを考えると青さんがやったことは大したことではない。


「そ、そう。あの子達は何をしたのかしら。聞くのが怖いわ。それでベリーさんに対しても人見知りしてるの?」


「しましたよ。でも克服しました」


「早いわね。何かしたの?」


「特別なことをしたってわけじゃないですよ?コタツははちみつが好きみたいなので、ベリーさんにお願いしてコタツの夕食にはちみつをかけてもらいました」


「それだけ?」


「その時にはちみつをご飯にかけたのがベリーさんだと教えてあげたんです。ベリーさんがコタツに手を振るとコタツも手を振り返ししました。それ以降はもう普通にしてますよ。触ったりするのは無理ですけど」


「参考にさせてもらいましょう」


 参考にしても同じようになるとは限りませんよ?でも思ったよりも怒ってないな。何か失言する前にこのまま電話を切ってしまおう。


「こちらもお昼ご飯が始まりそうなんで電話を切りますね。休憩中にすみませんでした」


「今日はお休みだから別に良いのよ。どうせ暇だったし。それにまだご飯じゃないでしょ?」


「え?」


「『守り人』達が騒いでないじゃない。電話越しでも聞こえるんだからね」


 『守り人』達はご飯になると賑やかになる。だけどそこまではっきりとは分からないはず。


「そこまではっきりと電話越しで聞こえるんですか?確かに『守り人』達は落ち着いてますけど」


「分かるわけないでしょ。カマかけただけ。ヤヌシちゃん。簡単すぎるわよ」


 そんなことを言われても。


「余計なことをしなければこのまま電話を切ろうと思ったのに」


 それからベリーさんがご飯が出来たと呼びに来るまで説教が続いた。私は春さんのいう事に対して「はい」としか言わなかった。定期的に「話をちゃんと聞いているのか」と聞かれたが全く聞いてない。だって同じことをずっと言い続けてるんだもの。


「大丈夫ですか?ヤヌシ」


「大丈夫です。ちょっと幻聴が聞こえるだけです」


 春さんの声が聞こえる。まだ私は怒られ続けるの?


「ヤヌシ、これ美味しい!!」


「よかったねタワシ。確かにこの料理は美味しいね」


 ベリーさんが作ってくれたのはチーズマカロニだった。あとは冷凍パンを解凍して完成!とても美味しい。ネコ達にご飯をあげて気分転換をしよう。

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