第255話
怒涛のお昼ご飯が終了した。新しく買った炊飯器で炊いたご飯はすべてなくなった。二十合はあったはずなのに・・・。でもみんなはハンバーグに満足したみたいだ。赤さんも嬉しそうで何より。
私の作ったスープもすべて食べ終わった。ちょっと安心。初めは誰も感想を言ってくれなかったから美味しくないのかと心配したけど、ハンバーグ丼に集中しすぎてスープを忘れていたらしい。みんな、もっと落ち着いてご飯を食べようね。
今はおやつまでの自由時間。Uさんはネコとタワシを連れて縁側に移動した。これなら赤さんも発作を起こさないから安心だね。
青さんはトウキやフウセンと一緒に携帯でガチャガチャの景品を見ている。そして赤さんはと言うと・・・。
「そうだよ。私が住んでいる場所にはもっと美味しい物があるよ」
「そうなんだ!例えば?」
「私の好みだとてんぷらや麻婆豆腐とか色々さ!君達はまだ食べた事がないかも知れないね~。でもヤヌシ君に作ってもらえそうなものもあるんだ」
「本当!?どんなの?」
「例えば今日のお昼みたいな丼物なら何種類か作れるはずだよ」
赤さんがノートとスポンジに丼の説明をしている。何でもご飯の上に乗せれば丼物だという人がいると昔聞いたことがある。変な組み合わせでなければ大概は美味しいもんね。
「ヤヌシ君にあとでお願いしてみなよ。たぶん作ってくれるよ」
「本当?教えてくれてありがとう、赤さん!」
「ありがとう」
「良いんだよ。それよりも君達は他にどんな食べ物が好きなんだい?今度来る時の参考にさせてもらいたいんだ」
赤さんもノート達と仲良くやっているみたいで良かった。意外な組み合わせだけど。赤さんだけ誰とも話せないという最悪の状況だけは回避できた。
「なぁヤヌシ。俺はここにいるからな」
「マリモ!どこにいるの?」
「お前の頭の後ろだ。オモチが水で止まり木を作ってくれた。俺も少しは話がしたい」
「ごめんね。そこなら赤さんに見えないから大丈夫だと思う。今日のお昼ご飯はどうだった?」
「美味しかったぞ!今度はもう少し多く食べたい!」
「君達の食べる量は底なしだね。でも次の時はおかわりの制限をかけよう。でないとマリモは食べるスピードで損しているからさ」
「本当か?助かる!!」
私がしばらくマリモと話をしているとUさんが縁側から戻ってきたみたいで話しかけてきた。
「ヤヌシ君。そろそろおやつにしようと思うんだけど」
「そうだね。あれ?Uさん、ネコとタワシは?」
「縁側でまだ遊んでいると思うわ。布ボールで」
なら良かった。しばらく放っておいても大丈夫だろう。
「おやつなら私も手伝いますよ。これくらいは手伝いたいです」
「青ちゃん良いわよ。キッチンへ行きましょう」
二人がキッチンへ行ったみたいだ。私は行かなくても大丈夫かな?すると今度は赤さんが私に話しかけてきた。
「ヤヌシ君。少し君に伝えておきたい事があります」
「伝えたい事ですか?」
「海外で君と同じように『守り人』とコンタクトを取った人間がいるらしい。その人が君と会うことを望んでいます」
もしかして守護対象の人間かな?砂岩からは何も聞いていないけど。
「それは砂岩から聞いたんですか?」
「いいえ。違います。砂岩様ではありません。君の存在は世界でも有名ですからね」
いつの間にか私は世界進出していたみたいだ。引きこもりなのに・・・。
「情報が漏れたって事ですか?」
「違います。秘密裏に行われた首脳会議で砂岩様が宣言したからです。ここに手を出すのなら人間との協力をやめると。手を出した国を潰すとも言っていました」
自分から暴露したのか。手を出すなと言ったのは前回の事を踏まえてだろう。
「なるほど。でも何でその人は私に会いたがっているんですか?別に私は必要ないでしょう?」
「どうやらその『守り人』と上手くコミュニケーションが取れていないみたいです。コツを教えてほしいのでしょう」
コツなんてないよ。普通に接すればいいはずだ。もしかしてタワシみたいに言葉が話せない子かな?
「ちなみにどこの国ですか?」
「今はまだお教えできません。行ってもらえるのならお教えしますよ」
気になる・・・。でも何処であろうとメッシュの力なら一瞬だ。問題は力を大っぴらに使って良いのか分からない。これも砂岩に確認だな。
「先生達はこの話を知ってますか?」
「私は知りませんね」
「俺もだ」
「あたしも知らない~」
「赤さん。一度砂岩から詳しい話を聞いてみます。その話次第で手伝うか決めますよ」
「よろしくお願いします。考えてもらえるだけでも十分ですよ」
「問題ありませんよ。ただ最近はやることが多くて・・・。どれから手を付けるか考えています」
新しい育樹を植えることや街への外出、そして今回の相談事。この中なら新しい育樹を植えるのを一番最初にすべきだろう。ただミライがあれから何も言ってこない。植える育樹の選別に時間がかかっているみたいだ。
「ヤヌシ。赤さんにハンバーグ美味しかったって言っておいて!」
ミライが私にだけ聞こえるように声をかけてきた。どうやらタワシが私の近くにいるみたいだ。赤さんにそのことを伝えるととても嬉しそうだった。
ミライも自分で言えばいいのに。赤さんが次来る頃にはミライと会話ができるかもしれないね。こればっかりは気長に待つとしよう。
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