第193話
砂岩達から新しい『守り人』を我が家へ連れて行きたいと打診された。問題はその『守り人』が人間嫌いで私に手を出してくる可能性があるらしい。明日はヘルパーさんが来るため私以外にも危険が及ぶ可能性がある。
でもマリモの時みたいに自分一人で決断するようなことはしたくない。私は所長さんに相談するため電話をしようとしたのだが・・・。
「僕が電話したい!!」
「あたしがするの!そもそもタワシは電話できるの?」
「待て!俺も電話してみたいぞ!」
誰が所長さんに電話をかけるかでタワシ達、初期組が電話前で揉めている。トウキがかける姿を見てやってみたくなったのかな?
「はいはい。ちょっと落ち着いて!トウキはこの間電話したでしょ?今回は譲ってあげなよ」
「え~!分かった~」
そんなに落ち込まなくても。またすぐに電話できるさ。
「タワシとマリモで話し合ってね。喧嘩はダメだよ。今回できなくても次回に電話させてあげるから」
タワシ達が話し合いを始めた。ノート達はトウキに電話の事を聞いている。私は早く電話をかけたいんだけど。
「ヤヌシ。今回はタワシだ」
マリモが私の頭の上に移動して結果を告げる。
「分かった。それでタワシは番号を押せるの?」
「タワシ。番号だけはあたしが押すわ。間違えたら大変なことになるから」
「え~!分かったよ。お願い!」
トウキが私の足から離れた。電話番号を押しているみたいだ。
「はい、タワシ!」
「ありがとう!あ、所長さんですか?タワシです!」
これは大丈夫なの?伝わってる?
「あれ?春さんなの?あ、こんにちは!うん、僕は元気だよ!春さんは?」
あれ?春さん、今日も休みなのかな?
「そうでしょ?うん。所長さんはいないの?そうなんだ~。え?そうそう」
タワシは私に代わるつもりがないのかな?仕方ない。
「タワシ、私に代わって」
「そうだった!春さん、じゃあね!」
私は受話器を受け取った。誰が私に受話器を渡してくれたんだろう?まぁ今はいいや。
「こんにちは、春さん。お休みのところすみません」
「ヤヌシちゃん、こんにちは!私は仕事中よ?」
「え?家に誰もいない時は所長さんの携帯に転送されるって聞きましたけど」
「そのとおりよ。でも私が設定を変えたの」
「そうなんですか。所長さんは知っているんですか?」
「いいえ。私が勝手にやったから知らないわ」
何でそんなことを。もしかしてタワシ達と話がしたいから?
「言っておくけどタワシちゃん達と話をしたいからじゃないからね。ちょっと待ってね。五分後に折り返すわ」
「分かりました」
春さんは忙しいみたいだな。でも何で転送先を変えたんだろう。
「もう電話は終わったの?」
「いいや。春さんは今忙しいみたいだよ。五分後に電話をかけ直してくれるんだって」
「なら今度は俺が出る!!」
そんな大声で宣言しなくても。
「マリモが出てもいいよ。でも受話器を持てるの?」
「あたしが持ち上げるから大丈夫よ。さっきも私がヤヌシに受話器を渡したんだから!」
なるほど。木の根を使っているのね。私達は電話の前で春さんからの連絡を待っていた。少しすると電話が鳴りだした。
「マリモいい?受話器を取るわよ。はい!」
「はい、━━です。こんにちは!そう、マリモだ。順番で電話をしているんだ。ヤヌシだろ?うん。ちょっと待ってて。はい、ヤヌシ」
マリモはちゃんと代わってくれたな。さすがだ。
「はい、ヤヌシです。すみません。忙しいのに」
「良いのよ。もう大丈夫よ。今日の仕事は全部終わったから」
「そうなんですか?それで何で春さんの携帯に転送されるようになったんですか?」
「何よ?問題があるの?」
いやいや。別に春さんが嫌なわけじゃないですよ?
「少し気になっただけですよ」
「こうやってタワシちゃん達と話ができるのも嬉しいわ。でも本音はヤヌシちゃんと旦那を連絡が取れる状況にしておくと私に内緒話をする可能性が高いと思ったのよ」
「そんなことは・・・」
「だって現に今も何で電話をしてきたか言わないじゃない。厄介事でしょ?」
否定できない。まずは所長さんに相談したかったのは事実だ。そのあとに春さんやUさんに話をしてもらうつもりだった。でもこの状況はごまかしようがない。正直に伝えよう。
「別に隠すつもりはないですよ。明日の訪問の件です」
「明日?何か不都合があるの?」
私は砂岩からのお願いを春さんに伝えた。ただ今回は前回と違い来るのを拒まないと付け加えた。
「━ちゃんが訪問しても本当に大丈夫なの?」
「一応ブラシに警護してもらうつもりなので大丈夫と思います。絶対ではないですが・・・。それにオモチがやる気なっているので」
「春さん、任せて!」
「電話越しでも良く聞こえたわ。頼もしいわね。私達が行くのは大丈夫なの?」
「できれば人間は私以外であと一人ぐらいの方が良いと思います。相手は人間嫌いですから。本音を言えば私一人で臨みたいですけど前回の件で懲りましたので」
「そうよ!それで良いの。ちょっと待ってね。旦那と━ちゃんと話し合うから。また折り返すわ。また後でね!」
電話が切れた。あとは向こうの判断に任せよう。仮に明日のヘルパーさんの日をスキップしても三日後にはまた来てくれるから問題ないはず。
それから数時間した後に所長さんから電話があった。明日は所長さんが来るらしい。砂岩が喜びそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます