第55話

 やっと始まったバーベキューのお昼ご飯。まだかまだかと待ちかねていた砂岩の食べっぷりが凄いらしい。今日は多めに準備しているから大丈夫だと思うが、そもそも『守り人』の胃袋に限界はあるのだろうか・・・。


 タワシ達と先生はお肉も食べていたが、それよりもジャガイモの食いつきが凄かったみたい。私の食べる分がなくなるかもしれないが、また別の日に食べるとして今日は我慢しよう。


 ちなみに『守り人』全員が私の体から離れている。


「ヤヌシさん、まだ食べれますか?」


「ありがとうございます。もう少しですかね。Uさんもちゃんと食べてくださいね」


「私も食べてますから大丈夫ですよ。でもこんなにおいしい肉ありがとうございます。ミカンちゃんから嫉妬されること間違いないですね」


「ミカンちゃんがいる時にまたやりましょう。私は普段冷凍弁当とかばかりなのでこういった食事には飢えてますから」


「ミカンちゃんが喜びそうですね。それにしても砂岩ちゃんはいつまで食べるんでしょうか。バーベキューコンロの目の前を陣取ってますよ」


「所長さん大丈夫かな?」


「大丈夫です。本人は酒を飲みながらやってますよ。今日は所長とチーフはお休みですからね」


「ね~。まだ駄目なの?」


 少し遠くから砂岩が強請っているみたいだ。


「Uさん。私をバーベキュー台の方まで連れてってくれませんか?」


「良いですよ。手を貸してさい、私の肩をつかんでくださいね」


 私は縁側から少し離れた場所にあるバーベキュー台の方に移動する。


「砂岩、そんなに焦っちゃだめだよ。美味しいものは時間がかかるものなんだよ?」


「ん~。もどかしいな。でもここに来て食べた中でこの食べ物が一番おいしいね」


「どの肉が美味しいとかあるの?」


「どれも美味しいよ!全部好き!」


 所長さんとUさんが僕たちの横で話している。


「いや~、砂岩のプレッシャーが凄いね。でもちゃんと待ってくれるから娘を思い出すよ!最近相手にしてくれないからな~」


「それは所長が悪いんです。━━ちゃんを構いすぎなんですよ」


「分かってるけどね・・・」


 所長さん、過保護だからなぁ。家の方から春さんの声が聞こえる。


「追加のじゃがいもを持ってきたわよ~。これで最後ね」


「じゃあ、春さん。この中に入れちゃって!」


「は~い。ちょっとタワシちゃん!危ないわよ!」


 何が起きてるんだろうか。


「先生、タワシに迷惑をかけないように注意してください」


「えぇ、任せてください」


「あらあら、かなり落ち込んでるわね。先生、なんていったの?」


「簡単ですよ。騒いでいるあなたの分はありませんよって言ったんですよ」


 タワシにクリティカルヒットしたみたいだな。ただ、ちょっときついかな。


「タワシ、私のぶんを一緒に食べよう。これに懲りたらもう少し落ち着くことだ。先生、伝えてください」


「ふふっ。分かりました」


 タワシが私の肩に急いで上がってきたみたいだ。元気で何よりだな。結局『守り人』達は準備したお肉や野菜をすべて食べきった後、デザートまで平らげた。片付けは後にして今はみんなでリビングに移動して休憩している。所長さんはお酒を飲んでいるらしい。


「いや~、ヤヌシ君。定期的にやろう!こんなに楽しいのは久しぶりだ!」


「へぇ、普段の生活は面白くないと?」


「そんなことないよ。━━さん!言葉の綾だってば!」


「お酒はそれで最後ですからね!ごめんね~。ヤヌシ君!こんな人で」


「いえ本当に助かってますから。春さんやUさんもですよ。いつもありがとうございます」


 私は頭を下げる。三人に感謝するのは当然だが、亡くなった両親にも感謝していた。二人の交友関係のおかげで所長さんたちと出会えた。本当に助かっている。


「近いうちに娘が来ると思うけどよろしくね。絶対に迷惑をかけるから」


 宣言しちゃったよ、この人。まぁ良いか。


「構いませんよ。どうせ暇ですから」


「私もたまに来るからね」


 砂岩が私の耳元で話す。いつの間にか全員が私の体に戻っていた。そういえば砂岩は守護対象の件どうするんだろう。


「聞いていいのか分からないけど、守護対象の件はどうするつもりなの?

 」


「あ~。大丈夫だよ。守護対象になると思う。おめでとう!この星で12人目の守護対象だ!」


「おぉ~。おめでとうございます!ヤヌシ。これで何があってもヤヌシは大丈夫ですね!」


「ん?どういうことですか?」


「あれ~?言ってなかったっけ?守護対象は我々上位守護者が守るべき存在として認定したことになるから、たとえ争いになったとしてもこの場所やヤヌシは絶対に死守されるよ」


 上位守護者が死守する?それって人間の兵器じゃ何も傷つけることはできないんじゃ・・・。


「それはすごいねぇ!良かったじゃない。ヤヌシ君!僕も一安心だよ」


 酔っている所長さんはテンション高めだ。でもどの上位守護者が守ってくれるのだろうか。


「何かあったらここに避難しましょうね、━ちゃん!」


「良いんでしょうか?」


「良いの、良いの!ねぇヤヌシちゃん!」


「え?良いですけど・・・。なんか物騒だな~」


「備えあれば憂いなしっていうでしょ?娘にも言っておかなくっちゃ!」


「ん~。君達ぐらいならいいけど、誰もかれもは無理だよ。あくまでヤヌシが守護対象される予定だからね。そこにヤヌシがいないと意味がないんだよ?」


「分かってるわ!砂岩ちゃん!」


「我々は他の人間には言うつもりはないから安心してほしい」


 誰もここには来ないから大丈夫だと思うけどなぁ。だけど今後の事か・・・。


「でも誰がここを守ってくれるの?先生?」


「分からないね~。それは今から話し合うさ。私も立候補しようと思う」


「えっ?大地様がですか?」


「なんだ。問題あるか?」


「いいえ、ありません」


 先生の声がどんどん小さくなっていく。普通に考えてたら先生だと思うんだけど。というか立候補制なのか。


「砂岩、大丈夫なの?大地の守護者って忙しそうだけど」


「大丈夫じゃない?まぁ、楽しみにしといてよ!」


「わかった。楽しみにしとくよ」


「それじゃあ、そろそろ片付けを始めようか!」


 所長さんが一声かけるとみんなが一斉に動き出す。今日は反省するとこもあったが結果的には楽しかった。

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