第380話
私達はUさん達がいる仕事部屋へ移動した。裏庭に出るとヤスリが反応する。この場所はやはり自然の力が凄いらしい。先生も同じことを言っていたけど「自然の力」って何なんだろう。聞いても良く分からないと思うから聞かないけど。
「ヤヌシ。ドアの前に着いたわよ~」
「ありがとうオモチ。いつも助かるよ。さてヤスリ準備は良い?」
「儂はミライの本体が見たいだけなんだが」
「頑張ってね」
「儂の話、聞いてる?」
私はドアを右側に動かす。ガラガラとドアが開くとUさんに声をかけられた。
「あれ、どうしたのヤヌシ君。もしかしてもうお昼ご飯?」
「まだだよ。そっちは順調そう?」
「ベリーさんと楽しくイラスト案を相談してるんだよ!このイラストを参考にさせてもらって私もぬいぐるみを作ろうと思うんだ!」
「良いじゃない。その気になればミカンちゃんはぬいぐるみで生計を立てれそうだね」
「え?・・・。ちょっと楽しそうかも。考えたことがなかったな~」
「芸は身を助けるって言うでしょ?それで、ちょっと聞きたいんだけどミライの本体が見える窓ってどこかな?」
「こっちだけど・・・。それよりもその首のマフラーは何?まだマフラーをつける季節じゃないでしょ?」
Uさんにはヤスリがマフラーに見えるのか。それにしても何でヤスリは喋らないんだ?もしかしてUさん達にいたずらを仕掛けようとしてる?
「昔、買ってもらったやつなんだ。懐かしくてつけてるだけだよ」
「・・・。ふ~ん。それで何でミライちゃんをここから見ようとしてるの?直接会いに行けば良いじゃない」
「この場所から綺麗に見えるってミライから聞いたんだよ。実際にどうなのかな~って思って」
「あなた、目が悪いじゃない」
「・・・。もう無理かな。そもそも私が君のいたずらに付き合う必要はないんだよ」
「ヤヌシ君。何を言ってるの?」
「でも付き合ってくれたじゃないか。儂はヤヌシがこういういたずらに付き合ってくれないと思ってたからな」
ヤスリが私の首から離れていった。おそらくだけどミライが見える窓の方へ移動したのだろう。『守り人』達にとってミライは希望の星であり、街ち望んだ成長した育樹だからね。
「わ~!白いキツネが喋ってる!」
「ヤヌシ君!あの子は誰なの?」
「あの子はヤスリ。大地の『守り人』だ。ブラシを迎えに行ったらブラシの住処にいたんだよ。連れて行ってほしいって本人に言われたから連れてきたんだ」
「ブラシさんも来てるんですか?ヤヌシ君の腕にいるの?」
「今は春さんの所にいるよ。コタツと一緒だ」
「ちょっと挨拶してくる!」
ミカンちゃんが仕事部屋から出て行った。どうせ後で会えるのに。ミカンちゃんは爬虫類系が好きだったよね。
「ヤスリは何をしてる?」
「窓からミライちゃんをずっと見てるわ。話しかけれる雰囲気じゃないんだけど」
「仕方ないよ。ミライは『守り人』達にとって待ちに待った存在だ。感動しているのかもね」
「ヤヌシ。あとでイラストを描かせてもらえないか交渉してくれないってベリーが言ってるわよ~」
「良いよ。たぶん大丈夫だと思うけどね」
私はヤスリの邪魔をしないようにUさん達と会話をしていた。かなりUさん達がイラストのアドバイスをしていたらしくベリーさんがとても喜んでいた。
忖度なしでイラストの評価をしてくれるのはとても助かることらしい。
「ヤヌシ。気が済んだ。ありがとう」
「あれがミライだよ。私が定期的に肥料をあげているからかなり大きくなっているらしいね」
「そうね。初めの頃に比べたらかなり大きくなったよね~」
「そうなのか。そういうお前は誰なんだ?」
「私は━━━。ヘルパーさんって呼んでね」
「※※※※ ※※※ ※※※※※!」
「ヘルパーさんとベリーか。儂はヤスリ。大地の守護者だ。よろしくな」
「握手?は、はい。よろしくね?」
律儀に私が言ったことを守ってくれているのか。
「ん?人間はこういう時に握手するんじゃないのか?」
「そうだよヤスリ。だよねUさん」
「そうね!問題ないわ!」
ヤスリと握手できると分かってUさんのテンションが上がってる。
「ヤスリ。後で良いからベリーさんがイラストを描かせてほしいって」
「いらすと?」
「これよヤスリさん。こんな感じ」
「へぇ~。これをベリーが描いたのか。すごいな。儂で良ければ問題ないぞ」
ベリーさんが何を言っているか分からないが喜んでいるのは良く分かる。
「お昼ご飯を食べた後ね。それで良いでしょベリー」
「もちろんだって~」
「そろそろお昼ご飯になるからリビングへ戻りましょうか」
「そうだねUさん。ヤスリもミライを見るのはもう良い?」
「ちょっと待ってくれ!・・・。いいぞ。行こう」
また私の首元から窓へ移動したみたいだ。あとでまた見れるから安心しなよ。
私達は仕事部屋からリビングへ戻った。そういえばUさんに言っておきたいことがあったのを忘れてた。
「Uさん。そういえば春さんが簡単にコタツを抱っこしてたけど、もうUさん達も抱っこできるんじゃないの?」
「・・・。試してくる」
Uさんはキッチンへ向かった。そろそろUさん達もコタツを抱っこできると思うんだけな~。出来なかったらネコを差し出そう。
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