第334話

 先生とスポンジが力を使いベリーさんの仕事部屋を建てる下準備を行った。あとはノートが木の形を変えて完成らしい。木の形を変えるってどうやるんだろう。粘土みたいに柔らかくなるのかな?この目で見てみたかった。目が悪い事が悔やまれる。


「じゃあ始めるよ?ヤヌシ。そのいらすと通りに作ればいいんだね?」


「そうだよノート。あとはベリーさんが君に指示するからそれに従ってほしい」


「分かった!始めるよ!」


 また地面が揺れる。といっても先生とスポンジに比べれば揺れは小さい。


「わぁ~」


「へぇ~」


「※※・・・。※※※~」


「すごい」


 みんな語彙力がなくなってる。ベリーさんは何を言っているか分からないけどそんな気がするよ。誰か説明してくれないかな~。


 すると先生が左肩に戻ってきた。


「ヤヌシ。説明しましょうか?」


「お願いします!みんなそれどころじゃないみたいなので」


「そうみたいですね。やっていることはそこまですごいことではないんですよ?」


 いえ十分すごい事ですから。


「それで今はどうなっているんですか?」


「ノートがイラスト通りに木の形を変えています」


「想像がつかないんですけど。どうやって?」


「樹を薄く延ばし折りたたんでいると言うべきでしょうか。スポンジが成長させた樹を切るわけではありません。すべて使ってベリーの仕事部屋を作るんです」


 さすが木の『守り人』。木を傷つけるわけではないだね。


「説明されても想像つかないな。すぐに仕事部屋は出来るんですか?」


「もう出来ましたよ。ほら」


「ヤヌシ!終わったよ!これでどう?」


「みんな確認して!入り口はどうなってるの?」


「いらすと通りにしてる!ヘルパーさん。別におかしくないよね?」


「そうねノートちゃん。ヤヌシ君。見た目はイラスト通りだけど入り口の造りはヤヌシ君の家を参考にしてるみたい。イラストでは開き戸だけど実際は引き戸になってるわ。それはそこまで問題ないと思う。でもこれって・・・。━━チーフ!これって土足禁止にした方が良いですよね」


「そうね。ノートちゃん。もう少し入り口を改造できる?ヤヌシちゃんの家の入口みたいに少し段差をつけてほしいの」


 靴を脱ぐ場所がないのか。なるほど。海外は靴を脱ぐ文化がないっていうもんね。


「分かった!・・・。これでどう?」


「完璧よ!みんな、中に入りましょう!」


 春さんに言われて私達はノート達が作成した仕事部屋に入った。ベリーさんがノートに細かな変更点を伝えているらしい。


「すごいな~。簡単に小屋ができちゃった」


「そうね。イラスト通りだわ。もう荷物を運んでも良いのかしら」


「ベリーさんに聞いてから今日買ってきた物をこの部屋に入れてしまいましょうか。ベリー!ちょっといい?」


「何?だって~」


「もう荷物を運んでも良いの?」


「良いって~!」


 私達は今日買ってきた物を仕事部屋に移動させた。私が思っていた以上に買い物をしているな。こんなに機材が必要なの?」


「春さん。これって全部ベリーさんが仕事に使うものですか?」


「ほとんどはね。それにしてもこの場所にインターネット回線がつながっているとは思わなかったわ」


「私も昔はパソコンとか使ってましたからね。両親と相談してその時にひいたんですよ。今では無用の長物となってましたけど」


「今からまた役に立ってもらいましょう。━━!パソコンをネットにつなげられる?」


「え?あまり自信ないかも・・・。携帯で調べながらやってみる~」


 ごめん。私は役に立たないからよろしくね。


「そういえば椅子ってあるの?」


 私はふと疑問に思ったことを口にした。するとUさんが返答してくれた。


「あるわよ!ヤヌシ君の家にある椅子と同じ様な感じね。二つだけみたい。まぁ仕事部屋だから別に椅子はそこまで必要ないわよね」


「そうだね。ここに来るのは基本的にベリーさんだけだし。それに・・・。ん?」


「どうしたの?」


「ねぇUさん。パソコンや携帯で動画って見れるよね?」


「見れるわよ」


 まずいな~。たぶんまずい。


「それをさ。『守り人』が見たらどうなると思う?」


「別に問題ないと思うけど?」


 Uさんはまだ問題に気づいてないみたいだ。


「子供用のアニメとかは?」


「・・・。マズいかも」


「パソコンにかじりついて見そうじゃない?」


「そうね。一気見とかしそう。あとおもちゃが欲しいとか言い出しそう」


「だよね~」


 どうしよう。ベリーさんに言う?でもな~。全く見せないのも・・・。


「何をこそこそ話してるの?」


「春さん。あのですね。・・・」


 私は春さんに動画の件を相談した。春さんならどういう判断をするだろう。


「それは確かにまずいわね。でもすごくマズいわけじゃないわ」


「と言いますと?」


「もし興味を持ったら時間を決めてみるようにすればいいのよ。例えばおやつの時間だけとかね」


 なるほど。何で考えつかなかったんだろう。


「さすが━━チーフ!伊達に歳は取ってませんね!」


「━ちゃん。喧嘩売ってるの?」


「いえいえ。褒めてますよ!」


「全く。ヤヌシちゃんは考えすぎよ。でも今のうちに気づいてよかったわね。先生達とも協力してやれば大丈夫だって」


 春さん。私は先生やオモチもハマりそうで怖いんですよ。先生達が今も私達の話を聞いているはずだから言えませんけどね。絶対にこのあと動画について聞いてくるはず。

 問題が解決したと思ったらまた一つ問題が出てきた。どっちかというと動画の方が問題になりそうだな~。

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