第49話
今日はヘルパーさんと所長さん夫婦が来ている。目的は地下に埋まっている「あの子」を掘り起こすの見届けるため。私一人で掘り起こすのが心配らしい。私はみんなを巻き込みたくないので、まだ納得できていないが・・・。
所長さん夫妻は家の中に入っていった。玄関でヘルパーさんに声をかけられる。
「ヤヌシさん、仕事を始める前に砂岩さんを少しだけ見せてもらえませんか?」
「砂岩、いいかい?」
「良いよ~。変わった人間もいるもんだね」
私の周りで砂をこするような音が聞こえる。多分ヘルパーさんがすり足で移動しているな。
「そういえば、ヘルパーさん。砂岩の見た目はどんな動物に近いですか?」
「そうですね。見た事はあるんですけど、どこでだろう・・・。ただヤヌシさん、爬虫類系ですよ」
そう聞いた瞬間。私の体が硬直した。(ヤヌシは爬虫類嫌い)爬虫類か・・・。考えるな。私は人間の子供を背負っているんだ。自分に言い聞かせる。
「そ、そうですか。ありがとうございます!」
声が上ずってしまった。
「ヤヌシ、どうしたの~」
「何でもないよ、砂岩。気にしないで」
「あ、ごめんなさい。そういえばヤヌシさんは・・・。で、では私はこれから仕事モードに入ります」
仕事モードって何?
「仕事モードって何?」
「え?」
しまった、考えが声に出てしまった。落ち着け、私。
「ヘルパーさん、すみません。聞き流してください」
「ね~ヤヌシ。仕事モードって何?」
砂岩、一旦その話から離れよう。ヘルパーさんが何も言わない。怒っちゃったかな?
「おはようございます。━━━さん、今日はどうですか?」
なるほど、なかったことにするんですね。
「お、おはようございます。ヘルパーさん。ダメ見たいです。今日も色々とよろしくお願いします」
「では、まずボイスレコーダーをいただけますか?それとお肉や魚関係で追加があれば言ってください」
いつものやり取りだが、ヘルパーさんの話すスピードが速い。先程の発言が恥ずかしいのだろう。私はボイスレコーダー渡した。そのあとはいつも通りの流れで買い物お願いした。
今日はお昼にみんなでバーベキューをしようと思っている。ヘルパーさんが買い物に行っている間に所長さんにヘルパーさんも参加できるように交渉する予定だ。
「では私は買い物に行ってきます」
「よろしくお願いします。お気をつけて」
「・・・。ありがとございます」
今の間は何だ・・・。ヘルパーさんが車に乗って行ったみたいだ。砂岩が爬虫類の姿だと聞いてパニックになってしまい、ヘルパーさんを傷つけてしまったかもしれない。
「タワシはヘルパーさんと仲が良いんだね~」
「いきなりどうしたの?」
「いやヘルパーさんが出る前にこっちに手を振ったら、タワシも振り返していたから」
「なるほど、あの間はそういうことか。心配して損した」
「心配?」
「こっちの話。私達も中に入ろう。そうだ、タワシ。先生を呼んできてくれない?」
「ヤヌシ、私はもう来ていますよ」
私の右側から声が聞こえる。
「いつの間に。おはようございます、先生」
「おはようございます。ヤヌシ、大地様。タワシ達もね。ヘルパーさんが出ていくのを邪魔したくなくて隠れてました」
「お気遣いありがとうございます。では中に入りましょう」
私達は玄関から中に入ってリビングに移動する。
「あ、ヤヌシ君。ヘルパー君は行ったかい?」
「はい、買い物に行かれました。奥さんは?」
「掃除してるよ。ヤヌシ君の事だから、みんなでご飯を食べようって言いだすと思ってね。ヘルパーさんも一緒にだろ?」
さすが所長さん、私の考えが良く分かってる。
「はい、ありがとうございます。先生も来られましたよ」
私の左肩にいる先生を紹介する。
「所長さん!お久しぶりです。お元気でしたか?」
「お久しぶりです!約束通りケーキ買ってきましたよ。あとでみんなで食べましょう!」
「ありがとうございます!楽しみですね」
所長さんも先生と良い感じにコミュニケーション取れているんだな。いい事だ。 私がそう思っていると砂岩が耳元でささやく。
「守護者が人間とこんなに仲良くやっているとは意外だったよ」
「言葉が交わせるのなら仲良くなってもおかしくないさ」
「そうかもしれないけど、人間はなぁ・・・」
人間が守護者達に何をしてしまったのか気にはなるが・・・。碌なことはしていないだろう。
「今日までは一緒にいるんだ。私達が人間ってことは忘れて楽しんで欲しいよ」
「私は君を守護対象するか判断しに来たんだけどね。まぁ、ついでに楽しんでいこうか!」
首がしまる!声が出せない・・・。
「大地様!ヤヌシが苦しそうです!」
「ごめん、ヤヌシ。興奮しちゃった!」
「先生、大地様って守護者にも上下関係があるんですか?」
先生は昨日私に教えてくれたことを所長さんにも伝えた。
「そうなんだ。知らなかったよ。ヤヌシ君、僕達この国で『守り人』に一番詳しいかもね!」
「所長さん、そうかもしれませんがここでの事は外で言えないでしょ?」
「そうだよね。本当は国に報告すべきなんだろうけど、報告したら先生や砂岩が嫌いなタイプの人間がわんさか来ると思うよ」
「そうなったら私の出番ですね!樹の守護者として樹に被害が出ないよう対処しなければ。大丈夫ですよ。多少人間が減ってもこの星にはまだ沢山いますから」
先生の発言はちょくちょく物騒なんだよな。先生、人間食べるらしいし・・・。
「そうなるのが嫌だから僕も報告しないんだよ。報告するとしたら『守り人』の先生や砂岩から要請が合った時かな。例えばこの星を救う手立てが見つかって協力する時とかね!」
所長さんは前向きだ。現状でこの星を救う手立てはない。あくまで人間が過剰に資源を取らないように『守り人』が守っている状態である。
「そんなときは来ないよ~。私達もこの星を救う手立ては散々探してるんだから」
「まぁまぁ、砂岩。前向きに考えよう。じゃないと生きていて楽しくないでしょ?」
「ヤヌシは楽観的というか、人間はみんなこうなの?」
「砂岩、違うよ。ヤヌシ君はかなりポジティブなだけ。探したらもっと凄い人がいるよ」
「そうなの?もう少し人間に興味を持つべきなのかな~」
「━ちゃん!ちょっと聞きたいんだけど~」
寝室の方から奥さんが私を呼んでいる。急いで私は寝室に移動した。
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