転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し早20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり！

第124話 結界魔法

　全長30mにも及ぶ、もはや蛇と呼んでいいのかすらわからない本物の大怪獣が目の前に現れる。

　俺達も既にSランク冒険者パーティーと呼ぶに相応しい実力をつけたとはいえ、もはやこんな怪物の前では一人の人間として生理的恐怖が襲ってくる。

「シャャャアァァッッ（神の祭壇を襲う不埒者め、食らってやるっっ。）」

「そんなに大事なのか、この祭壇が。それでおまえがそこから出て今度は耐えられるのかな？」

　蛇神の激昂がこちらに向いている間にさらに挑発しつつ、

「土石嵐（サンドストーム）。」

「火炎嵐（ファイヤーストーム）。」

　俺が範囲土魔法を使い、弱まった結界に対してメイスが範囲火魔法を合わせ祭壇を燃やしていく。

　せっかく祭壇から引きずり出したのだから先に戻られると厄介そうな祭壇から潰させてもらおう。

「シャャャアァァッ！（おのれ、神に逆らう人間がっ！）。」

　隙を突かれ、祭壇を燃やされるとさらに怒りに任せこちらに突っ込んでくる。

　いい傾向だ。こいつはかなり強力な攻撃魔法も使える筈だが、怒りでこちらを丸呑みにしようと飛びかかってくる。

　戦いにおいて冷静さがどれだけ大切か敵を見て学んでおこう。

「「防御魔法（プロテクト）」」

　今度はララとそしてユキが防御魔法を重ね掛けをする。今までの戦いの経験からこの僧侶のジョブスキルの有能性を鑑み、MP消費に余裕のあるユキにも覚えさせておいたのだ。

「防御不能剣（アーマーブレイク）！」

「偃月落とし（ハーフショット）！」

　先ほど同じように防御魔法で止めたところで、左右からエレイシアとラディッツオが飛び出し、その大蛇の首を落とそうとジョブスキルを放つ。

　それぞれ剣士レベル5と槍使いレベル4の大技だ。

　互いに呼吸を合わせ、また首を落とすに適切なジョブスキルを選択して放った合わせ技だ。

「チィィィッ、スマン外したっ！」

　決まれば勝ち確っと、いうところで敵も甘くないのかプロテクトに止められたのが二度目だったこともあり、プロテクトにぶつかった瞬間、その反動を使い、蛇の体をくねらせ後方へと回避してくる。

　結果、随分後ろの尾の部分を切り落とす攻撃となった。

「十分だ、火炎嵐（ファイヤーストーム）。」

「よしっ、火炎嵐（ファイヤーストーム）。」

　切られた瞬間を好機と見て今度はメイスが範囲火魔法を蛇神に放つ。これに俺も同じ魔法で合わせて火炙りにする。

「おかしいっ！警戒を怠るなっ！」

　超大型の蛇が焼き焦げる強烈な匂いが立ち込めるが断末魔が聞こえない。皆に警戒を促す中、今度は地響きが鳴り響く。

「クソっ、地中に逃げやがったのかっ、焦げてるのは脱皮した外皮かよっ。」

　ラディッツオが真相に気づいたときには蛇神は地中から舞い戻り脱皮と共に尾も復活していた。

　この巨体でなんつー回復力だよ。

「シャャャアァァ（少し油断していたようですね。では代わりに可愛い信徒たちに戦ってもらいましょう）。」

　おまけに敵に冷静になる時間を与えてしまったようだ。相当上手く運んでいたかのように見えたが、一つのミスでたちまちこちらが追い込まれてしまった。

　これがSランクの魔物の恐ろしさか、、。

　時間を掛けすぎていたようで既に周りは狂信徒たちで囲まれてしまっていた。後は俺達が戦いづらい人間の信徒をけしかけ、後方から強力な攻撃魔法を放つ魂胆か。

「邪神様は魔物たちから我々を守ってきてくださったんだ。敵が人間なら我々が戦うべきだっ！！」

「うォォォーッッッ！！」

　狂信者達が叫び、その後ろに蛇神が下がる直前、

「結界魔法（サークルバリアー）。」

　球体の結界が俺達と蛇神を幽閉し、外の狂信者達と隔絶する。ララによる僧侶レベル7で取得するジョブスキルだ。

　プロテクトよりさらに強固な上、球体で指定範囲内を隔絶するためこれで蛇神にも逃げられないし、狂信者による邪魔も入らない。

　こうなった状況を想定しておいた策だが、当然デメリットもある。

　プロテクトと違い秒数ではなくMPが持つ間は維持できるが、これが切れた時はたちまち大ピンチだ。

　さらにこれで結界維持のため、ララの参戦は不可能となった。

「5分は持たせてみせます。後は頼みます、皆さん。」

　こう宣言し、自ら作成した魔道具袋からマナポーションを取り出しMPの回復を計るララ。

　その表情からは彼女なりの覚悟が見て取れた。

「ああ、任せろっ！」

　自身に気合を入れ直すため力強く応えると蛇神と再び向き合った。

　―さあ、後のない第２ラウンドだ。