第77話 side―「暗殺者」

 ―「暗殺者」という呪われたジョブが、この世界には存在している。


「盗賊」と並び、本来は対魔物戦や、ダンジョン攻略において有能な力を持つジョブなのだが、街中においてはその有能さが危険視され、暗殺者のジョブを持って生まれたというだけで恐れられ、為政者に追放される忌避職。


 それは「変装」や「毒調合」といった早くに覚えるジョブスキルが、『対人間相手』の暗殺でも非常に有能であることを示している。

 だが、すべての暗殺者が追放に甘んじているわけではない。城壁の外の世界は危険で、好んで住む人間などまずいない。


 ここ、王都でも逆に暗殺者の有能さに目をつけ、子飼いとしている組織があった。

 主に王都の大商会の汚れ仕事を引き受ける犯罪組織だが、そこで子飼いにされている者の人生は壮絶を極めていた。


 幼少の頃に親の借金で違法に売られ、その後ジョブが「暗殺者」だとわかると、組織で仕事をこなすエージェントとして育て、鍛え上げられてきた。

 他の生き方を知らず、組織が受けた依頼だけをこなす日々だ。


 それがその者にとっての日常。

 ジョブスキル「変装」で、自身を偽っているときだけが、自分が人間らしくなれていると最近になって気づいてしまったこと以外は、昔から何も変わってなどいない。


 スラムの一角にある組織のアジトで今日もまた新たな仕事を受ける。

 今回の仕事は流れ者の身辺調査。どうも、背後に大きな組織でもついているのか、ここ最近王都であの貴重なスキルブックを何冊も流しているらしい。


 ここ数年は「地底古代文明ダンジョン」に探索に出れるほどのパーティーはなく、出処が不明なため、商会の人間がそのあたり把握しておきたいらしい。 

 その者には何の興味もない話だ。


 死んだ目で仕事の内容を聞いていたかと思えば、スラムを出る頃には通りを歩く全ての男性が振り返えるほどの絶世の美女へと変貌し、そのままある酒場へと向かっていった。


 着いた先にいたのは一見、そんな売人をやるようには見えない白髪交じりの真面目そうな男。



(今回の仕事はチョロそうだな)



 そんな内心を隠して、内勤勤めが似合いそうなその男に近づく。



 ―罠にかかるのは果たしてどちらか。




―――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき


 お読みいただき感謝です(_ _;)


 皆様のおかげで作品フォローがこの度3000人を超えました!!


 初執筆でここまで多くの方に読んでいただけるとは思っておらず嬉しい限りです。


 これからもまだまだ多くの人に読んでいただきたい思いでいますのでもし良かったらまだの方は作品フォローと★★★で作品の宣伝に協力していただけると嬉しいです。


 更新次第ではありますが引き続き作品をお楽しみください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る