第92話 金色の槍
メイスとラディッツオが、ほぼ同時にこちらに気づき、減速する。ララの姿が見えないので問答無用とはいかないよな。
「感謝するぜ兄ちゃんよ、退屈なパーティーを面白くしてくれて。こっからも俺を楽しませてくれるんだろう?」
ラディッツオが口角を上げ、槍を構える。その槍は、金色の輝きを放っている。
「殺すなよラディッツオ、その男には聞かねばならんことが山ほどある。
この手際、それなりに作戦は練ってあるようだ。
婚約者の姿が見えないが、連れ去りと運びで役割分担、当然の複数犯か。
やはり、屋敷の警備は残しておかねばなるまい。こちらが陽動のケースがある」
「しかし、まあ当主の面目も丸潰れだなぁ。メイスの旦那の忠告通りにフロアに俺達を配置してれば、こんなことにはならなかったものを」
「今さらそんな話をしても始まらん。この場は任せた、私は婚約者を追う」
二人の会話が終わり、飛び立とうとするメイス。
行かせるかっ。
「
先程の大盾はそのままに、右手にはリボルバーから杖へと装備を替えて範囲攻撃魔法を放つ。
王都に着いてから装備もグレードアップさせたが、中でも大枚を叩いて手に入れたのが、この大盾と杖だ。
今の会話の間に後方には他の近衛兵達もやってきている。ここまで魔法は敢えて使っていない。これが決まれば一気に楽になるっ、という所で
「上だっ!範囲魔法がくるぞっ!!」
荒いラディッツオの声が響き渡る。
「なっ、
驚きながらも同じ魔法で相殺するメイス。しかし元々上空にいるメイスでは、俺の範囲攻撃魔法は五割程度しか相殺できていない。
メイスは無傷だが、残りの雷がラディッツオと後方の近衛兵を襲う。
「ウラァァッッ!!」
持っている槍で雷をはたき落とすラディッツオ。……嘘でしょ。
とんでもない離れ業だが、可能としているのはその金色の槍だ。
―オリハルコンの槍。
地底古代文明ダンジョンでこの槍を手に入れたラディッツオは、無敵と思われていた巨大ミスリルゴーレムの腕を砕いたのだ。
近衛兵達もメイスが半分ほど相殺しているので直撃したのは10名ほどか、残り20名ほどはまだ健在だ。
「ハッ、そんな大盾持ち出しておいてテメェ、魔法使いだったとは面白いハッタリだ。
だがそれならこれで終わりだっ!」
一気に俺へと肉薄するラディッツオ、穂先が消えるほどの突きだが何とか大盾で防ぐ。
「ナニィッ、俺の槍を魔法使い風情が防ぐだとッ」
こちらも無策じゃないさ。この大盾はAランクの中でも最上級の魔物であるタートルエンペラーの甲羅から作られた最高級品で、お値段金貨130枚の代物だ。
それでも正面から受ければオリハルコンの槍に砕かれるが、盾術もlv8まで上げておいたので甲羅の面を滑らせて、受けきって見せた。
武器、ステータス、実戦経験、そしてセンス。
すべてこちらを上回る相手に半端な手段は通用しないだろうと、剣は諦め大盾で守りを固めつつ、魔法で攻撃する戦法を考えてスキルも準備していた。
と、いっても今のはこちらを殺す気がない一撃だ。ラディッツオも敵の正体がわからず、ひとまず距離をとる。
開幕は一進一退の攻防となったが、奴らの狙いはあくまでララの奪還だ。
メイスも一瞬の思案の後、次の指示を出す。
―戦いは続いていく。
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